第8話 競泳しちゃうふたりの子


 女の子というものはわからないもので……。

 僕を獲り合っているはずのムラ村さんと背伸さん。

 二人は気がつくと、大の仲良しになっていた。


「なぜだ……あの二人は恋敵にあたる存在なのに」


 うーむと唸りながら、凸凹コンビの後ろ姿を背後から見つめる。

 チビのムラ村さんに、モデル体型の背伸さん……。

 どちらも捨てがたい。


 落とすなら、どっちだ!?


 そうこうしているうちに、夏に入り、学校でも授業としてプールが始まった。

 しかし、僕は10歳になろうとしているのに、泳げない。

 だから近所の年下の子と一緒に、スイミングスクールへ通うことにした。


 身長は既に中学生ぐらいデカい奴が、幼児たちと一緒に習っているので、かなり目立つ。


「おいゴラァ! 童貞っ! ちゃんと泳げやぁ!」


 なんて、よく怒鳴られていたが、僕はポカーンとしていた。

 正直、クロールぐらいできれば、さっさと辞めようと思っていたからだ。


 通いだして、一か月ぐらい経ったころ。

 僕は少しずつだが、泳げるようになってきた。


 というか、短期間で身長が伸びすぎたせいで、水着はパツパツ。

 元々、子供用のサイズなので、キツくて仕方ない。

 特に股間にゆとりがない。


 ピーッ! と笛が鳴る。


 今日の練習が終わりを迎えたということだ。


 僕はプールサイドを、よたよた歩きだす。鼻をほじりながら。


「あー、疲れた。帰りに本屋で『フーミン』のグラビアでも立ち読みすっか」


 その時だった。


 ガンガンッ! ガンガンッ!


 と、隣りから何かを叩く音が聞こえてくる。


 ふと立ち止まると。

 そこには二人の少女がいた。


 ムラ村さんと背伸さんだ。

 プールサイドの隣りは、ガラス張りのスタジオがある。

 そこで、泳ぐ前にストレッチをするのだ。


 つまり、僕の次の時間に、この二人は泳ぎだすということだ。


 ガラス越しに何かを訴えている。


「や~い! 童貞ってカナヅチだったぎゃん!」

 そう言うのは、胸が全然発育していない、つるぺたのムラ村さん。

「童貞くん。まだ幼児クラスなの~ プフフ~」

 ムラ村さんに反して、こちらはだいぶ発達してらっしゃる。

 膨らみかけの乙ぱいということだ。

 僕と同じで、水着のサイズがあっておらず、胸部が少し苦しそうだ。


 まさか!? この二人……ずっと僕の泳ぐ姿を、見つめていたのか!?

 熱い眼差しで。


 ハッ!? なんてこった!?

 やはり僕は罪深い男だ。


 どちらかを選べないでいることを察した、ムラ村さんと背伸さんは、『二人で共有』することを決断したに違いない!


 小学生にして、ハーレムとはな。

 想像すると、股間に痛みを感じたので、前かがみでそそくさと、去っていった。

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