第17話 夏至前二日~塔の外~

「まぶし」


 暗闇から目が慣れるまでしばらくかかった。


 扉は木の根に隠されるようにあり、カーテンのように垂れ下がっている木の根をよけて外に出ると、土や根が崩れるように落ちてきた。

 

 後ろを振り返ると、思っていた以上に高い塔が建っていた。


 蔦で降りて正解。ここから落ちたら、と思うとぞっとした。


「レイ君……髪、真っ黄色だけど。いつ染めたの?」


 あたしの後からごそごそと木の根の間から出てきたレイを見て、驚いた。


 太陽の光に照らされて、彼の真っ黒な長い髪が金色に変わっている。


 紫だった目も青っぽくなっている。


「あなたも」


「え?」


 自分の髪を確認する。


 真っ黒な黒髪が黄色の髪に変わっている。


 この髪の色とあたしの顔を合わせると、似合わないことこの上ない。


「うわー。似合わないー。これってさっきのぽわぽわのせい?洗って落ちないかなあ」


 泰治には見せられない。彼はこういうの、あまり好きじゃないはず。


「あ、洗っても落ちない。は、早く行くよ。このあたりはちょいちょい人がくるんだ」


 レイは薄汚れた長衣を翻してさっさと先を歩いていく。


 その後を追っかけながら、気になっていた事を聞いた。


「ねえ。レイ。君はもう帰った方がいいんじゃない?」


「な、なんで?」


「いや、家の人が心配するしさ。あのさ、それパジャマでしょ?寝間着でしょ?ちょっとさ、これから街出て」


 一緒に歩くのはさー。


「ち、違う! こ、これは、ね、寝間着じゃない。この国の伝統的な衣装だ。あ、あ、あなたのほうが変な恰好をしている。そんなに、ぴ、ぴったりした服を着るのは……だから、か、勘違いした」


「ぴったりって。ただのジーンズだけど。何を勘違いするの?」


「……だ、だから」


 レイはぐっと言葉につまる。


「だから?」


「な、何でもない! か、か、恰好を何とかするなら、あ、あなたの方だよ! そして、心配するような人は誰もいない!」


 ぷんすか怒って先を行く彼に、置いて行かれないよう、あたしは小走りに走った。

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