第298話 もしかして、下ネタ?
「みなさーん。準備が整いましたので、整列をお願いします」
舞台上のスタンドマイクを通して、大会関係者の女性――俺に別個で声をかけてきたボブヘアーの女の子の声が拡散される。
参加者たちがぞろぞろと舞台の前に密集していった。
それを確認した女性は、ごほんと咳払いをした後。
「それではこれより、『勝者はハーレム確定? 美女にあーんなことやこーんなこと、なんでも好きなことができる? ドキドキ、真夏のラッキーボーイ決定戦!』の表彰式、ならびに賞品授与式を行います」
どうやら彼女が司会を務めるようだ。
そういや、そんな長ったらしい大会名だったな。
すっかり忘れていた。
「はじめに、見事この大会の制覇しました石川様への」
「誰が石川様だ! 引きこもり様と……って、なんで今回は言い間違えないんだよ!」
こういう時のお約束だろうが!
そして、俺がツッコんだせいでなんか変な空気になっちゃったじゃないか!
「えー、すみません。石川様は優勝したことでテンションが上がってしまっていたようです。もう一度言いますが、そうやって唾を飛ばしながらオリョウ様にツッコむことは失礼に値します。気をつけてください」
不服そうな顔をした司会者にぴしゃりとたしなめられたけど、彼女の言ったツッコむってさ、ボケに対してツッコむのツッコむだよね。
こんなところで急に下ネタなんてぶっこんでくるはずないもんね。
「では、改めまして、見事この大会を制覇した石川様に、優勝賞品の授与を行いたいと思います。石川様は壇上へどうぞ」
司会の女性に促され、俺は壇上に向かう。
参加者たちの拍手する姿、口笛なんかも聞こえてきて、ちょっとテンションが上がった。
「では、石川様はこちらでお待ちください」
指示された場所に立つ。
ふと床を見ると、右隣の床には複雑な魔方陣が描かれていた。
「まずは、優勝トロフィーの授与からです。授与するのはもちろんこの方!」
司会の女性がそう宣言した瞬間、会場から雷鳴のような拍手が鳴り響く。
指笛、口笛が、暴風雨のように乱舞している。
……あ、あれぇ。
なんでこの大会の優勝者が登壇する時よりもテンション上がってるの?
そりゃあオリョウは絶世の美女なんだろうけど、なんかちょっと悲しいなぁ。
自分の性欲に正直な愚かな男どもを見ていたら、なんかムカついてきたなぁ。
へへん、別にいいもんね。
俺はお前らとは違って、絶世の美女であるオリョウを至近距離で凝視できるもんねー!
遠くからじゃ絶対に見つけられないような位置にあるほくろとか、透けている血管とか見つけてやるもんねー!
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