第166話 嫌味と本音の一騎打ち
空気の読めないミライを必死で引き止めていると、俺たちの元にも二人のキャバ嬢がやってきた。
もちろん猫族の女性。
一人は胸元がぱっくりと開いた真っ赤なドレスを着たキアラちゃんで、もう一人は黒のタイトなミニワンピースを着ている大人っぽい雰囲気のリルルちゃんだ。
二人とも、男一人女二人という奇妙な組み合わせの俺たちを見ても、まったく笑顔を崩さない。
すごい。
これがプロか。
「あ、どうぞこちらの男性の隣にお座りください」
マーズがキャバ嬢たちに指示を出して、キアラちゃんを俺の隣に座らせる。
リルルちゃんはマーズの隣に自分から座った。
キアラちゃん、俺、ミライ、マーズ、リルルちゃんの座り順だ。
「マーズさん。余計なことを。来た女の子は絶対に誠道さんの隣には座らせない予定だったのに。ふざけないでください」
「ああっ、こんなひそかに脇腹をつねるなんてぇっ……」
マーズはミライに責められて、完全に興奮している。
「さぁ、誠道くん。どんどん自分を解放させて、はっちゃけていいのよっ! ドンペリもどんどん頼んで私を金銭面から攻めていいのよっ!」
……うん。
わかったから、マーズはこれ以上自分の性癖を解放させるのをやめようか。
「誠道さん。わかっていますよね? あなたは女の子が嫌い。いいですか、女の子がとにかく嫌いなんです。話すのも嫌なんです」
「おい、俺を洗脳しようとするな」
「じゃあ女の子があなたを嫌い。女の子はとにかく誠道さんが嫌い。引きこもりを好きになるわけありませんから、誠道さんと話すのも嫌なんです。だから、誠道さんは女の子と会話してはいけません」
「その洗脳のされ方は予想外だったよ!」
ミライはどうして俺から楽しみを奪おうとするのかな。
ここはキャバクラだよ。
女の子と話せなかったら、キャバクラに来た意味ないよね?
「はじめましてぇ、誠道きゅん。私、キアラって言いますぅ。よろしくお願いしますぅ」
「は、はいぃ」
おっとりとしている口調が特徴のキアラちゃんは、隣に座るなり俺の腕に抱き着いて、大きなおっぱいを押しつけてきた。
柔らかな感触と、体から漂う女の子特有の甘い匂い、ぴょこぴょこ動く猫耳に俺の理性はもう崩壊寸前だ。
キャバクラ最高ぅうう!!
「へっ、私の方がおっぱいは大きいですね。そんなおっぱいしか持っていないのに、よく節操もなく押しつけられますね」
悪態をつくミライはとりあえず無視して、ここはキアラちゃんの接客を堪能しよう。
ミライに暴言を吐かれたのに、笑顔のままのキアラちゃんはプロ中のプロだなぁ。
「うわぁ、誠道さんの腕、すっごく筋肉質ぅ、もしかして、凄腕の冒険者さんですかぁ?」
「ま、まあそんな感じかな」
「へっ、凄腕の冒険者? ここのキャバ嬢は人を見る目もないんですね。誠道さんはただの引きこもりのエロしょうもない人間ですよ」
あれ、ミライはキアラちゃんを敵対視しているはずなのに……なぜか俺が傷つけられてるんだが?
まあいいや。
キャバクラ最高っ!!
「はああんっ、一度に誠道くんにもキアラちゃんにも暴言を吐くなんて、さすがミライさんっ! 素晴らしい才能だわっ! ぜひ私にもそれをっ! プリーズミー!」
あと、ミライに暴言を吐かれているキアラちゃんと俺を羨ましそうに見ているマーズも普通に無視無視。
郷に入っては郷に従えだからね。
「誠道きゅんって、優しそうな雰囲気で、すごく賢そうです。わたしぃ、誠道きゅんに会えて幸せですぅ」
「そ、そうかな? なかなか褒められないから嬉しいよ」
「なかなか言われないってことはお世辞に決まってるじゃないですか。しかも、優しいとか賢そうとか、誉め言葉の語彙力も幼稚園児レベル。本当に呆れました」
「ちっ、さっきからあの女、私をさんざんバカにしやがって」
……あれぇ、キアラちゃん、ゆったりおっとりしたしゃべり方一瞬にして忘れちゃったのかなぁ。
目がものすごく怖いよぉ。
プロ中のプロじゃなかったなぁ。
「私だって、客じゃなかったらこんな男のことなんか褒めるわけないだろっ」
…………あのぉ、その客が目の前にいるんですけどぉ。
ははは、女って怖いね。
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