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 「遅くなって、ごめんね。ご両親に、怒られないかな」


車を走らせながら、秋乃が訪ねる。


陽がすっかり落ち込み、暗い夜の色を孕んだ空は、溺れそうな程に重くて、思わず、窓を少し下げる。


「暑かった?」


そう言って、秋乃が飲みかけのペットボトルを差し出してくれた。


もう、秋も半ばに差し掛かる季節なのだから、暑いはずなんてないのに、さり気なく、こういった気遣いが出来る彼女を、ああ、やっぱりかっこいいな、と思う。


整っていて、自信に満ち溢れた横顔も、どこか、彼女に似ていて、訳もなく、どきどきする。


秋乃から貰ったペットボトルの中の天然水は、仄かに甘い味が、した。


「いや、ちょっと息苦しかっただけで。ありがとうございます。秋乃、さん」


「ほんとに、あざみちゃんは、可愛くていい子ねぇ。私の若い頃とは、大違い」


「不良、だったんですよね」

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