第37話 シルヴィア
「シルヴィア、遅れてすまなかった」
「いいえ、来てくれて助かった! ミスリルのローブのおかげで軽症だったわ」
「魔法で回復出来たとはいえ、怪我をさせてしまった‥‥‥」
「なぁに? 冒険者だし、怪我もするわ! このくらいなんでもないわよ! って、アウルム? 大丈夫? 顔が真っ青よ!?」
目の前が暗くなって、震えが止まらない。
涙も溢れてきた。
「助けられなかった‥‥‥、助けられなかった‥‥‥」
村が襲われた時の光景がフラッシュバックする。
(父さん‥‥‥母さん‥‥‥今の俺なら助けられただろうに‥‥‥)
ガタガタと震えていたら、急にふっと気持ちが軽くなった。シルヴィアがぎゅっと抱きしめてくれていた。
「アウルム、大丈夫よ。きっと辛いことがあったのよね? 私ね、少しだけどあなたの頭の中を覗けるの。やってみてもいい?」
「‥‥‥うん」
両手を俺の頭につける。
幸せだったあの日までは‥‥‥
野盗達が村を襲って‥‥‥
父さんが逃してくれて‥‥‥
母さんが身を挺して守ってくれて‥‥‥
「うあぁあああああああああっ!!!!!!」
涙が溢れて止まらなくなってしまった。
もう泣かないって決めたのに‥‥‥。
「ごめんなさい、アウルム。辛い過去を見させてもらったわ。本当に辛かったわね。でももう大丈夫、私がいるわ、落ち着くまでたくさん泣きなさい」
抱きしめながらシルヴィアにそう言われた。
俺はその場で意識が遠くなった。
ーーーーーーーーーーーー
「ここは‥‥‥?」
家から村に向かう途中の道だ。
そして一番会いたかったふたりがいた。
「アウルム、強くなったな‥‥‥」
「こんなに背も伸びて、大きくなったわね‥‥‥」
「父さん母さん、ごめん。僕、助けられなかった‥‥‥」
「何を言ってる。お前が無事ならそれで良いんだ」
「私たちはあなたを守れただけで充分なのよ」
「でも‥‥‥」
「お前は優しいな。でも冒険者となったからには優しさだけじゃダメだ。時には冷静に非情な判断をする必要もある」
「そうならないように行動するのが一番大切だけどね。さぁ、アウルム。最期に抱きしめさせてちょうだい」
「最期って‥‥‥」
「そろそろ行かなくてはならない」
「あぁ、私たちのアウルム‥‥‥」
力いっぱい二人に抱きついた。
二人も抱きしめてくれた。
二人は光って空に浮かんでいった。
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泣きながら目が覚めた。夢だったようだ。
シルヴィアがずっと抱きしめてくれていた。
「シルヴィア‥‥‥、ずっとこうしてくれてたの?」
「起きた、アウルム? 今後は私がずっと一緒にいるわ。安心して‥‥‥」
「‥‥‥ありがとう、シルヴィア」
シルヴィア‥‥‥、本当にありがとう。
ずっと一緒に‥‥‥。
「さぁ、そろそろ行きましょう。鉱山の呪いの原因も解決したし、オーガも倒せたし。凱旋ね!」
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