第122話 ワールドワイドの自惚れ屋でした

「いや〜中々ミサキに会えないからボクの方から来ちゃったよ!こんな事、中々無いんだよ?ミサキだけの特別サービスさ!」

「・・・」


 格好いい外国の人が美咲に近づいてそう言うけど、美咲はイライラした顔をしていた。

 なんだろ?


「この国の教育機関にも興味があったから丁度良かったんだ!それに周りの女の子もプリティ・・・って・・・おお!?」


 外国の人は美咲に近づく途中で美嘉やジェミニ、クォン達に気がついて目を丸くして驚きの声をあげた。


「ビューティフル!グレイト!これは凄い!キミたちもみんなミサキに負けてない!これは今日のパーティに是非招待しないとね!あ、衣装が心配かな?安心して!ボクが全て揃えてあげるから!よし、そうと決まれば全員早退しなよ!ティーチャー?この子達、みんな早退するからあと、よろしく!じゃあ、行こう?」


 ・・・何言ってるのこの人?

 美嘉達はあからさまに不機嫌になってる。

 

「デビット・ケーシー。」

「?何かなミサキ?というか、フルネームなんて他人行儀じゃないか!ボクとキミの仲だろう?普通にファーストネームで呼んでくれても良い「貴方が」・・・?」


 外国の人の言葉を遮るように美咲が話し始めると、外国の人は不思議そうに首をかしげた。


「貴方が、勝手気ままに振る舞うのは構いません。貴方にはそれだけの力があるのですから。正確には、貴方の親が、ですが。しかし、私がいないところでして下さい。私の前で無礼な振る舞いは断じて許しません。それと、私の名前を呼び捨てにする許可など一切出していません。即刻やめて下さい。」

「・・・何を怒ってるんだよミサ・・・」

「やめろと言っているのです!」


 美咲が怒鳴った。

 珍しい。

 というか、始めてかもしれない。

 

 外国の人も呆気に取られている。


「それと、彼女達・・・私の友人にも同じことです。貴方のせいで、皆さんは大変不快な思いをされています。その軽薄で薄っぺらい態度を改めなさい。」

「・・・嫉妬してるのかい?だけど、美しい女性を気にかけてあげるのは、このボクの義務なんだよ?だから・・・」

「いい加減にしなさい!!この際言っておきますが、あなたなどにまったく興味などありません!!そもそも、私には相手がおります!あなたなんかよりもずっと素敵な相手が!身の程をわきまえなさい!!」

「っ!?」

「・・・『周防』のご令嬢。坊ちゃまを侮辱するのであれば、このワタシこそが貴方に身の程を・・・」

「動くな。」

「!?」


 外国の女の人が一歩美咲の方に歩き出そうとした時だった。

 美玲が素早く立ち上がり、その女性の後方から腕を突きつけている。


「轟!」

「控えろ。この方は『周防』の次期頭首となられる方だ。貴様ごときが物を申していい相手ではない。」

「・・・くっ!!」


 すぐに離脱しようとした外国の女性の腕を、ひねり上げて動けなくする美玲。

 男の人の方は未だに呆けている。


「そ、そんな馬鹿な!このボクだぞ!?ね、ねぇキミ達!キミ達からも何かミサキに言ってやって・・・」

「目障りだからさっさと消えてくれる?」

「まったくね。不快だわ。」

「本当ですね。礼儀も弁えないとは・・・」

「ああ、そうだな。しょせんボンボンか。」

「あ〜・・・またこういう馬鹿?お呼びじゃないんだけど?」

「馬鹿どもはどこからでも沸いてくるな。少しは瞬の爪の垢でも飲ませたら治るのでは無いか?いや、死んでも治らんたぐいかもな。」

「ね〜?アタシ達にはシューくんがいるってのにさぁ?気持ちわる〜!」

「・・・な、なんだと!?」


 予想だにしていなかったみんなからの言葉で怒ったのか、顔を真っ赤にして一番近かった美嘉に詰め寄ろうとした。




 ・・・僕が許すはずないのに。


「・・・なんだ?庶民がボクの前に立ちふさがるな。だいたい、なんでハイスクールにジュニアハイスクールの奴が混ざってるんだ。さっさとど・・・は!?・・・ぬ〜!く〜!!な、なんだこいつは!!」


 殴りつけて来たので、手のひらで受け止める。

 必死に力で押し切ろうとしているみたいだけど、僕は当然微動だにしない。

 

「あの〜暴力は駄目ですよ?」

「うるさい!こいつ!!」

「だから駄目ですって。」

「うぉっ・・・アウチッ!!」

「ぼっちゃま!!おのれ!離せ轟!離せぇ!!」


 僕は逆の手で殴って来たのをつかみ、そのまま投げた。

 背中から床に落ちて痛そうにしている外国の男の人。


「キサマ!!国際問題にしてやる・・・」

「それを私が・・・『周防』が許すと思っているのですか?」

「ぐっ・・・」

「この件は、貴方の父親に厳重に抗議させて頂きます。」

「・・・くそっ!帰るぞ!!」

「・・・轟、覚えておけよ。次は必ず・・・」


 吐き捨てるようにそう言いながら教室を出ていく二人。


「・・・すみません、皆さん、ご迷惑をおかけしました。先生方も、クラスの方も、申し訳ございませんでした。」


 美咲がしゅんとして謝罪する。


「別に良いわ。それより、何かトラブルになりそうな気がするから、しっかりと教えてよ?」

「・・・はい。お昼休みにでも。」


 こうして、僕達は美咲の今の現状を詳しく知ることになった。


 あの人がどういう立場で、どういう関係性なのかも。

 

 みんなでため息をついてからは、対策。

 何せ、絶対これでは終わらなさそうだからね。

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