第113話 年を越しました

「あけましておめでとうございます。」

「「「「「「「「「「あけましておめでとうございます。」」」」」」」」」」


 僕はみんなにそう挨拶をする。


 今日は年が開けて新年。

 元旦だ。


 みんなは元気・・・ちょっと眠そうだけど。

 そういう僕も正直眠たい。

 理由は・・・わかるよね?

 ほとんど徹夜だから。


 でも、のんびりとはしていられない。


「今日は初詣に行って、最初は美咲の家だね。」

「はい、瞬さん、みなさん、お願いします。」


 そう、初詣と、挨拶まわりだ。


 特に、美咲の場合、美咲自身が挨拶を受け取る方だったりもする。

 だから、最初に僕達と実家に挨拶に行って、その後は今日から数日間、美咲と美玲は実家にいる事になったんだ。


 僕達は明日美嘉の実家に挨拶に行くことになってる。

 いよいよ美嘉のご両親と会う事になった。


 最初は僕だけで行こうとしたんだけど、


「みんなで行きましょ。その方が、話が早いから。」


 と、美嘉が譲らなかったから、みんなで・・・といっても、美咲と美玲はいないけど、行くことになったんだ。


 美嘉の両親か・・・どんな人達なんだろ?

 ていうか、そんな風に女の子をいっぱい連れて行って、怒られないかな?

 でも、美嘉は大丈夫って言って聞かないし。


 なんとかなる、そう思うしか無いか。





 その後は、みんなで着物に着替えて地元の神社へ。

 着物は、美咲が用意してくれていたんだ。

 色とりどりの着物を着たみんなはとても綺麗だった。

 思わず、見惚れちゃったよ。


 そして、徒歩で地元の神社へ。


 ここは、大きな神社では無いけれど、昔から僕や父さん達はここに初詣に来ていたんだ。


「うわ・・・なにあれ?撮影?」

「すっげぇ・・・めっちゃ可愛い子ばっかり・・・」

「ていうか、あれ、Mikuじゃない!?じゃあやっぱり撮影なんじゃ!?」


 神社が近づくにつれ、人が増える。

 この神社に参拝に来る人は大きな神社ほど多くないにしても、それでもそれなりにはいる。

 

 そして、注目を集めるみんな。

 やっぱり、みんな綺麗だもんね。


 流石に今日は絡まれること無く神社に着いた。

 順番を待つ僕達。


「・・・そういえば、神様って・・・彼よね?祈るのは彼で良いの?」


 ぽつりと美嘉がそう言う。

 そう言えばそうだったね。

 でも、なんかあの管理者さんはそういうの喜ばなさそうなんだけど・・・


「別に、あらたまって祈る必要はない。管理者はあくまで管理者なのだから。今年も一年、頑張るという表明でもすれば、彼も喜ぶのでは無いか?」


 フォーティの言葉に、みんな納得した。

 確かに、あの人は、その方が喜びそうだね。

 

 順番が来て、僕達は賽銭箱にお金を入れる。

 二礼二拍手一礼。


 手を合わせて脳裏にあの人の顔を思い浮かべる。


(昨年はありがとうございました。今年もみんなで幸せになれるように頑張ります)


 すると、不思議とあの人の苦笑いが見えた。


 ピロンッ!


 ん?メール?珍しいな・・・


 僕は、お参りを終え、賽銭箱の前から移動し、メールを確認して・・・吹いた。


「ん?どうしたのシューくん?」

「い、いや・・・管理者さんからメールが・・・」

「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」

「?」


 翠叔母さんを除くみんながそう言って、僕の携帯を覗き込む。

 翠叔母さんは面識ないからね。

 ピンと来ていないみたい。

 

 管理者さんからのメール。

 その内容は、


『あけましておめでとう瀬尾くん。ごめんね?見事に僕があげたスキルで、裏目にハマっちゃったね。申し訳ない。そうそう、『月』を通じて、君のお父さんとお母さんにも挨拶したよ。良いご両親だね。あなた達の顕現の為に、瀬尾くんが頑張ってるよって言ったら、喜んでたよ?頑張って『月』を覚醒させてね?多分、あとちょっとだと思うから。それじゃあ、今年一年、頑張ってね!』


 みんな、その内容に固まっている。

 

「・・・あの者、自由すぎるだろ・・・」

「「「「「「「「「「「こくり」」」」」」」」」」


 フォーティの呆れたような言葉に、みんなが頷く。


 ピロンッ!


 あれ?また?

 あ、でも、僕じゃないや。


「あたしだ・・・っ!?・・・本当に、自由ね・・・」


 美嘉がそう言って苦笑しながら携帯を見せる。

 そこには、管理者さんの奥さん?からのメールがあった。


『あけましておめでとう後輩さん。色々彼を支えて頑張っているわね。でも、油断しちゃ駄目よ?後輩くんみたいなタイプは、どんどん奥さん増やすから。私のように苦労しないように、しっかりと管理するのよ?後、少しだけアドバイス。あなたと五十嵐さん、それと周防さんに凶兆が感じられるわ。これは、私だけじゃなくて、勘の鋭い他の奥さんもそう感じてるみたい。命に関わるようなものではなさそうだけど、用心はしっかりとね?頑張って。』


 ・・・あの時の、綺麗な女の人・・・先輩さんだよね?

 しっかりと管理って・・・


「管理者のお墨付き、か。美嘉、美咲、美玖。そなた達は少し用心せねばな。」


 フォーティの言葉に気が引き締まる。

 それはみんなも同じだった。

 

「・・・新年早々不吉な事を・・・と言いたい所だけど、教えてくれて良かったわ。何か知らないけど、このあたし・・・あたし達ならきっと大丈夫。絶対踏み越えてやるわ!」


 不敵に笑う美嘉。

 みんなも真剣な顔をして頷く。

 

 そうだね。

 

 僕達は、家族だ。

 なら、協力して乗り越えないと。

 絶対に、みんなに手出しはさせない!


 僕はそう心に誓うのだった。







「「「「「「「「「「「あけましておめでとうございます」」」」」」」」」」」

「あけましておめでとう。」

「あけましておめでとうございます・・・そう、あなた方が・・・いつも美咲がお世話になっております。」


 今は美咲の家に来てる。

 目の前にいるのは美咲のお父さんとお母さんだ。


 美咲のお母さんに会うのは実はこれが初めてだったりする。

 

 美咲を大人にしたような感じの綺麗な人だけど・・・目つきは鋭い。

 

「どんな人たちかと思ったけど・・・うん、よくわかりました。美咲?良い人を見つけたわね?」

「ありがとうございます、お母様。」


 でも、厳しそうなのは雰囲気だけで、意外にも穏やかな対応だった。 

 もっと、ボロボロに言われるかもと思ってたんだけど。


「意外かしら?」


 そんな僕達の様子を見て、美咲のお母さんは微笑んだままそう言った。

 僕達はみんな頷く。


「私も、『周防』の頭首の妻です。何より、美咲の母です。あなた方は『周防』に利益もたらすと直感が言っていますし、母としても、美咲を助けて頂いた事に感謝しています。それに・・・」


 美咲のお母さんは美咲と美玲を見る。


「美咲も美玲も幸せそうだもの。なら、親として反対するつもりはありません。まぁ、夫から詳細も聞いていますし映像も見ています。どうあがいても勇者と魔王とその仲間をどうこうできるとは思えませんし。」


 そう言って、コロコロと笑う美咲のお母さん。

 

「・・・本心のようね。大したひとだわ。安心して。あたしやシュンの目の黒いうちは、絶対に美咲と美玲を守って見せるから。」

「・・・ええ、お願いしますね?正妻さん?」


 にっこりと笑う美嘉と、微笑む美咲のお母さん。

 その後は歓談をして美咲と美玲を残し、僕達は周防邸を後にしたんだ。


 良い人そうで良かった。






 翌日。

 みんなで美嘉の実家に向かう。


 転移で近くの山に行き、そこからは徒歩だ。

 格好は昨日と違って動きやすい格好。


 いよいよ美嘉の両親と会う。

 どんな人達なんだろうね?

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