第112話 帰って来ました
『むぅ〜。』
「ごめんごめん。機嫌直してよ、ね?」
翌朝、僕はすっかりいじけちゃったメリーのご機嫌取りをしていた。
でもこればっかりはなぁ。
いくら可愛くても、流石に動物はちょっと。
「あら〜?メリーも女の子ねぇ。」
「そうだね。まさにメスの顔ね。」
ジェミニと美嘉がそんな事を話しながらもぐもぐと朝ごはんをほうばってる。
・・・君たち、昨夜のあれは良いの?
全然気にしてないみたいだけど。
美嘉のメス顔ってのは意味が違う気がするし、ジェミニは・・・みんなの前であんな風にされてもまるで動じてないし。
「え?何か気にする事あったかしら?」
・・・サキュバス、凄い・・・
「さて、簡単に掃除と片付けも終わったし、そろそろ一度戻ろうか。」
僕達は、拠点を整理し、帰宅準備をした。
『あるじぃ・・・』
「メリー、ごめんね?でも、また会いに来るからさ。」
僕は悲しそうな鳴き声をあげながら、僕にすり寄ってくるメリーを撫でる。
『絶対、だよ?』
「うん。拠点を頼むね?」
「メリー、頼むね?」
「メリーちゃん、またね?」
僕の言葉の後に、美嘉、美玖ちゃん、みんなも声をかけながら、メリーを撫でる。
ひとしきり撫でられると、メリーはスッと離れた。
『・・・任せて。あたし、ここ、守る。絶対!』
キリッとしてそういうメリー。
僕達は微笑んだ。
(『メリー?聞こえる?』)
ん?
魔力の流れ・・・ジェミニ?
何か魔法を使ってる?
『この声・・・?』
声?
念話?
念話って動物とも話せるの?
(『し〜。声に出さなくても、ちゃんと思い浮かべれば聞こえるから。シュンくんには内緒ね?あなたが、向こうでも過ごせるようにちゃんと考えてるから大丈夫よ。それと・・・ちゃんとあなたの希望が叶うように考えるから。』)
(『!?それって・・・』)
(『うふ。だから、頑張って拠点を守ってね?』)
(『わかった!えっと・・・』)
(『ジェミニよ。』)
(『わかった!じぇみに!お願い!』)
(『任せて。』)
メリーが嬉しそうに尻尾を揺らしながら、ジェミニの手を舐めている。
ジェミニも何か楽しそうだ。
・・・なんだろう?
この、そこはかとない不安は。
なんか、僕に都合が悪いことのような・・・
「さ、それじゃ行きましょう?メリー?頼んだわね?まぁ、冬休み中はできるだけ午前中は訓練に来ると思うし、そんなに寂しがる必要は無いよ。」
僕の思考を遮るように美嘉がそう言った。
あ、そうか!
フォーティのおかげで、いつでも好きな時に来れるようになったんだもんね!
僕がそれをメリーに伝えると、嬉しそうにみんなにすり寄って行く。
良かった。
メリーも嬉しそうで。
ちなみに、拠点出入口の魔力登録はメリーもされている。
どうも、動物にも魔力があるらしい。
メリーは今後、寝る時は居間で寝るらしい。
メリーに懇願されて、何か僕の匂いがするものが欲しいって言うから、僕の昔使っていた毛布をあげたから、そこで丸まって寝るらしい。
一応、汚れたら困るから、拠点の出入口脇に、メリーが入れるくらいの空洞を作って、そこの奥にある石を踏むと『クリーン』で浄化出来るようにした。
これで、どんなにメリーが汚れて帰って来ても、拠点の中が汚れることは無い。
『主〜!みんな!いってらっしゃい。』
メリーの遠吠えにみんなが手を振る。
こうして、僕達はフォーティの作ったドアから向こうに戻るのだった。
「・・・帰って来たね。はぁ〜楽しかった!」
「そうですね。わたくしも楽しかったです。それに、目的も達成出来て大満足です。」
「ああ、そうだな。色々な経験が出来た。外も良いものだな。」
・・・これは、深く突っ込めない。
みんな、リリィとラピスの言葉に頷いてるのなんて見えない。
・・・そっかぁ・・・それが目的だったんだぁ・・・
こうして僕達は、年末まではそれぞれ訓練、仕事、勉強、宿題をしながら、大晦日まで過ごした。
勿論、行く度にメリーとも遊んだよ。
大晦日には、みんなで年越しそばを食べる。
今年は、本当に色々あったなぁ。
でも、凄く楽しかった。
みんなが来てくれて、本当に良かった。
僕がこうして今笑っていられるのはみんなのおかげだ。
美嘉、クォン、ジェミニ、リリィ、ラピス、美咲、美玲、美玖ちゃん、フォーティ、翠叔母さん、それとメリーもかな。
どうもありがとう。
僕は、幸せだ。
これからも僕はこの幸せを守るために、みんなを守ろう。
勇者と・・・家族として!
「シュン?まだ早寝ちゃうのは早いよ?年越しからの姫初めなんだから♡」
・・・年の最後は締まらなかったけどね。
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