第110話 無人島5日目 のんびりしました

「ああ〜・・・つ、疲れた・・・朝なのに・・・」


 僕は、眠い目を擦って身体を起こす。

 そこかしこに、みんなが寝転がっている。

 全裸で。

 

 まぁ、昨日は頑張ったからなぁ・・・


「う・・・ん・・・?朝・・・?」

「あ、美嘉、おはよ。」


 美嘉が目を覚ました。

 僕の挨拶を聞き、美嘉も身体を起こした。


「うう・・・酷い目に遭ったわ・・・」

「お、お疲れ様。」


 僕がそういうと、美嘉はジロッと半眼で僕を見る。


「な、何?」

「・・・昨夜、散々あたしをみんなでいじめ倒しといて・・・」

「あ、あれは・・・ごめん。」


 みんなで一緒になって美嘉をいじめた昨夜。

 珍しく美嘉が半泣きになって感じまくって痙攣・・・


「こら!思い出すなぁ!!」

「ばふっ!?」


 思いっきり枕で顔を殴られる。


「・・・ふあぁぁぁ・・・なんの騒ぎ?」

「あ。ジェミニおはよう。」

「むぅぅ!ジェミニ・・・覚えてなさいよ・・・」

「あら?ミカおはよう。良い朝ね。昨日は・・・可愛かったわよ?(ニヤニヤ)」

「くぅっ!!(ギリギリ)」


 みんなも、僕達の騒ぐ声で起きてきた。

 美嘉は歯軋りしながらニヤニヤしているジェミニを見てる。

 

 こうして、今日の朝も始まる。


 



 朝食を食べて、みんなで訓練。

 内容は、この間の延長なんだけど・・・なんとなく、美嘉の攻撃に力が入ってる。


「・・・絶対やり返してやる・・・ジェミニめ・・・」


 ・・・どうやら、根は深いようだね。

 巻き込まれないようにしよっと。


 結構ハードな訓練になりました。


 そして、お昼ごはんを食べた後は、美玖ちゃんと美咲はまた仕事なので、簡単に温泉に入ってから、身支度をして、それぞれ仕事へ送る。

 疲労については、疲労軽減の魔法をリリィがかけてたから大丈夫だと思う。


 美咲と美玲、美玖ちゃん、翠叔母さんの四人が無人島から離れたので、僕達はリリィが昨日見つけた洞窟を探索。

 

 何かあるかな?


 結構、洞窟の中は広かったんだけど、面白い物が見つかったんだ。

 最初は、何もないかと思ったんだけど、クォンが隠し部屋を見つけたので、土魔法で壁を壊すと、そこには・・・


「「「「「「「おお〜!」」」」」」」


 なんと、財宝がありました。

 主に、古い金貨とか、装飾品、後は、武器だね。


「大昔の海賊かなんかのなのかな?」

「どうなんだろ?というか、これ、どうする?」

「ミサキが帰って来たら相談しましょう。とりあえず、アイテムボックスに入れておいたら?」


 というジェミニの言葉で、僕はアイテムボックスに財宝を入れ、洞窟を出る。

 洞窟を出た後、思いがけない事があった。


「トラ?」

「「「「あ、可愛い!!」」」」

「おお・・・これがトラか。知識では知っておったが・・・ふむ。これがモフりたいというヤツか。」


 なんと、僕が出会ったトラが居た。

 怖い!よりも先に可愛いが来るのが流石はみんなだね。

 かなり大きなトラなんだけど。

 

「がうっ!」


 トラは、一直線に僕の所に来てじゃれる。


「あはは、こらこら。」

「がう!がうっ!!」


 猫の様に、一心不乱に顔をこすりつけてくる。

 

「へぇ。なついてるのねぇ。可愛いじゃない。」


 みんなもトラを触ろうと一歩近づく。

 トラは一瞬ビクッとしたけど、僕の顔をちらりと見た。


「うん。みんなは僕の大事な人達だよ?それに、君よりも強いから、喧嘩売ったら駄目だからね?」

「・・・がう。」


 言葉が通じたわけじゃなさそうだけど、トラは一唸りした後、ごろんとお腹を見せた。

 本能的に、敵わないって思ったのかもね。


「あら?可愛いわね。」

「ええ、それに賢いですわね。」

「うむ。それに手触りもなかなかだ。洗ったらもっと良くなりそうだが。」

「良い子良い子〜?可愛いねぇ。」

「おお・・・良いなコレ・・・やっぱり、一度体験すると違うな・・・」


 ジェミニ、リリィ、ラピス、クォン、それにフォーティは目尻を下げながら撫でまくる。

 トラはされるがままだ。


「・・・もしかして、シュンを追って来たのかもね。会ったのってもっと北なんでしょ?」

「うん。そっかぁ・・・どうしよう?」

「そうだね。いつもいるわけじゃないからなぁ・・・あ、そうだ!」


 美嘉が悩んだ後、パチンと指を鳴らした。


「テイムしよう。そうすれば、ある程度意思疎通も可能だしさ。拠点を守って貰わない?召喚も組み込めば、喚び出せるしさ?」

「え?そんな事出来るの?」

「うん。みんなもそれで良い?」


 美嘉の言葉にみんな頷く。


「じゃ、主はシュンって事で。そこに立って。」


 美嘉に言われた通り、トラの前に立つ。

 トラも、何かあるのかと起き上がった。


「・・・契約魔法『コントラクト』・・・シュン、良いわよ?了承を得たら、シュンも同じ様に魔力を乗せてコントラクトって唱えて。」

「わかった。ねぇ、君?僕達と一緒に居たい?」


 僕がトラにそう話しかけると、トラは驚いた顔をした後、


『・・・なんで、言葉、わかるの?』


 と、女の人の声で脳裏に響いた。

 これ、トラの声かな?


「あのね?魔法で君の心と繋いでるんだ。でね?僕達はいつもこの島にいるわけじゃなくて、たまにしか来れないんだけど、それでも君が良ければ、僕と契約しない?」

『・・・けいやくって、なに?』

「う〜ん・・・約束ってわかる?僕と君で守る事なんだけど・・・」

『なんとなく、わかる。』

「契約は約束の事だよ?で、この契約をすると、こうやって君と話す事が出来る。後は、君を喚び出す事が出来る・・・んだよね?」

「うん、出来るよ。」


 美嘉に確認すると、美嘉は頷いた。


「だから、たまにこうやって会うことが出来るんだ。」

『・・・なら、けいやく、する。あたし、あなた、好き。強いし、優しいから。』

「本当?なら、契約しよう。で、お願いがあるんだ。この島の僕の拠点・・・住処を守って欲しいんだけど・・・出来る?」

『うん。ここで、あたしより強いの、そんな、いない・・・と、思う。同族も、あたしより、弱い、ばっかり。』

「そっか。それと、この人達みたいに、僕には大事な人がいっぱいいるんだ。その中には、君よりも弱い人もいるんだけど、仲良く出来る?」

『・・・あたしも大事?』

「あはは。うん。君も大事にするよ?契約したら、今よりもずっとね。」

『なら、仲良く、する。あたしが守る。けいやく、しよ?』

「うん、ありがとう。じゃあ・・・『コントラクト』」


 僕とトラを光が包む。

 光が治まると、トラの腕に文様が現れた。


「これで契約は終わったよ。」

『よろしく、主。』

「うん、よろしく。」


 こうして、この島で僕達は更に仲間を増やしたんだ。








「卜、トラァ!?おっきい!?」

「だ、大丈夫なのですか!?」

「お嬢様!私の後ろに!!」

「しゅ、瞬ちゃん!?どういう事!?」

「あはは。実はね?」


 帰って来た美咲達に経緯を説明する。

 みんなぽかんと口を開けていた。


「なんというか・・・驚きですね。」

「美玲の言う通りです。これほど大きなトラを手懐けるなんて・・・」

「さ、触っても、大丈夫よね?食べられないよね?」

「さ、流石に、ちょっと怖いわね・・・」

「大丈夫だよ?メリー、この人達が僕の大事な人だよ?仲良くしてね?」

「がう。」


 メリーっていうのは、このトラにつけた名前。

 女の子だったみたいだから、可愛い名前にしようと思ったんだ。


 メリーは四人の前に行って、伏せた。

 恐る恐るメリーに近づく四人。


「め、メリーちゃんって言うんだね?触っても良い?」

「メリー。触っても良い?」

『主の大事な人なら、良い。』

「美玖ちゃん達なら良いってさ。」

「じゃ、じゃあ・・・」


 みんながこわごわとメリーを触る。


「あ、凄い毛並みが良い・・・」

「本当ですね・・・」


 実は、拠点に連れて来てから、一回温泉で洗ったんだよ。

 メリーは嫌がったけど、綺麗にしないとこの中では自由にさせないよって言ったら、大人しく洗われたんだ。


「こうして見ると、可愛いわね。メリーちゃん?よろしくね?」

「メリーちゃん、よろしく。」


 翠叔母さんや美玖ちゃん、美咲や美玲が撫でながら挨拶をしていく。

 メリーは気持ちよさそうにしている。

 だって、時たま気持ち良さそうに唸ってるもん。


 メリーが受け入れられるのに、時間はかからなかった。


 その後は、みんなでまったり。

 メリーも拠点の中でまったり。

 

 今は、フォーティと美玖ちゃんがメリーにもたれかかっている。


 仲良くなれそうで良かった。

 はぁ、のんびり。


 あ、財宝の事言うの忘れてた。

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