閑話 虎視眈々と狙う者達

「あ〜だりぃ・・・」

「しゃーねぇだろ?仕事なんだしよぉ?」


 楽屋に集まっている男たち6人。

 全員顔が整っている。

 それもその筈、彼らは・・・


「『デイライト』の皆様!お時間です!!」

「はぁ、行くか〜。」


 彼らの部屋に飛び込んできた女性の言葉に、彼らは重い腰をあげる。


 ぞろぞろと部屋を出ていく男たち。


「きゃ!?や、やめて下さい!」

「まぁまぁ、良いじゃん良いじゃん!それにしてもいいモノもってんねぇ?後で一緒に汗でも流さない?」


 すれ違いざまにその女性の胸を鷲掴みにしたのは、男たちのうちの一人。


「おい、遊んでないで行くぞ〜?」

「ちぇ。おねーさん考えといてね〜?」


 ぞろぞろと通路を歩いていく。


 周りに人がいるにも関わらず、誰もその行為を咎めない。

 それもその筈、彼らは・・・


「はい、それでは今をときめくアイドルグループ!『デイライト』の皆さんです!!」


 そう、彼らは人気アイドルグループだったのだ。







「はぁ〜疲れた〜。」


 出演を終え、今は楽屋に戻ってきている彼ら。

 その傍らには、裸でしくしくと泣いている女性がいる。

 そう、行きに彼らを呼びに来たスタッフである。


「まぁまぁだったなぁ。」

「良いじゃねぇか。タダだったんだから。」

「違いねぇ。」


 ケタケタ笑う6人。

 

「にしても、今日一緒にでてたあの子・・・なんつったか・・・」

「ああ、モデルのMikuだろ?最近、特に旨そうになったよなぁ?」

「わかる!なぁ、そろそろ食っちまわねぇ?」

「確か、あそこの事務所は・・・うちの事務所の言いなりだったなぁ。」

「お?マジで?んじゃ、専属のオナホに出来そうじゃね?」

「良いなぁそれ!よし!んじゃジャーマネにセッティング頼んどくか。」

「んじゃ、今のオナホは解放してやっか。」

「いやいや、無理だろそれ。あんだけ薬漬けにしちまったら、向こうから来るって!」


 ぎゃははははっと笑い声が響く。

 

「いや〜楽しみだなぁ!早くぶちこんでやりてぇ!」

「お前のでけーからな。案外、薬つかわなくても自分からオナホにしてくれって言ってくるかもよ?」

「ちげぇねぇ!」


 彼らは嗤う。

 そしてそのまま服を着て通路に出る。

 泣いている女性を放置して。


 彼らには誰も何も言えない。

 彼らの事務所にはそれだけの力があった。

 

 だが、彼らは知らない。

 なんでも思い通りにはならない事を。







「何?周防の娘に婚約者だと!?」


 ここは海外。

 とても高いビルの一番上の部屋だ。


「はい。どうも真報のようです。」

「・・・くそ!あの娘は俺が手に入れようとしていたのに!!」


 彼は足元にあった調度品を蹴飛ばした。

 とても高そうなそれも、彼にとっては大した価値は無い。


「まぁ、待て。この報告書の通りだと、庶民の男なのだろう?で、あればどうとでもなるだろう。」

「パパ・・・」

「資本で勝負するのは難しい。『周防』はそれだけ大きな財閥だ。だが、その小僧は所詮はただのガキだ。消すのは大して難しくない。その隙を狙え。出来るだろう?」

「勿論さ!見た目も資産も教養も最高峰なものを持つ俺が、女一人どうにか出来ないわけがないさ!パパ!見てて!あの娘も『周防』も俺が手に入れてみせるからさ!」

「期待しているぞ?息子よ。」


 彼らは海外でも有名な会社の社長とその息子だ。


 その国そのものとも言える『周防』を手に入れたい父親と、その『周防』の娘である美咲を手に入れた息子。

 

 利が一致している二人は高らかに嗤いあう。


 しかし、彼らは知らない。


 金銭ではどうにもならない存在がこの世にはいる事を。










「美嘉・・・一体どこへ・・・」

「ねぇ、もう桜咲さんの事は諦めたら?」

「・・・諦められないよ。僕には彼女しかいないんだ。」

「・・・」


 所変わって、ここは瞬達の住まう国。

 美嘉が転校する前に住んでいた所だ。


 整った顔立ちの男の子と可愛らしい見た目の女の子が歩いている。


「僕は幼馴染として、彼女と共にありたいんだ。」


 彼は美嘉と小学校、中学校と一緒だった者だ。

 高校は美嘉が女子校に行った為、同じ学校には通えなかった。


「でも、もう桜咲さんにフラれてるんでしょ?」

「・・・いや、違う。あれは美嘉の本心じゃなかった筈だ。きっと、親に無理矢理あてがわれた相手がいるんだ!きっとそうだ!!」


 美嘉は、幼い頃から容姿が優れていたため、よく告白されていたが、一度も浮ついた話は無かった。

 何故なら、子供の頃から「心に決めた相手がいる」と言い続けていたから。


 ここにいる彼は、それは自分の事だと思っていた。

 確かにこの男の子は、俗に言うイケメンで、勉強も運動も出来るし、資産家の息子でもある。


 しかし、それが違うのが分かったのは、彼が高校が別れる事に耐えきれなくなり、告白した時だった。


「ごめんなさい。私にはもう、相手がいるんだ。」


 それを聞いた彼は絶望した。

 しかし、それは今はこのように変わっている。

 親が美嘉に無理矢理相手を作ったというもの。


 納得いかず、一度、美嘉の母親に直談判した時に言われた事、


『娘の事は、全て娘自身に任せてありますので。』


 まったく聞く耳を持って貰えず、追い返された。

 それがまた彼の妄想に拍車をかけた。


「きっと助け出して見せる!」


 彼は気がついていない。 

 それは、全て彼の妄想であり、彼女はすでに幸せの中にあるという事を。

 しかし、暴走する彼は止まらない。


 





「で、例のブツは?」

「ここに。」


 薄暗い一室。

 ここでやり取りしているものは、そんじょそこらでは手に入らない特別なものだ。


「これがあれば・・・」

「ええ、これがあれば・・・」


 ごくりと唾を飲む受け取った方と、こくりと頷く渡した方。


 受け取った方は何か良からぬ事を考えているようで、その表情は緩んでいる。


「間に合ってよかった・・・これで・・・」


 その表情のまま・・・


「瞬ちゃんと青春出来る!!」


 翠だった。


「ええ、性春出来るわ!」


 そしてジェミニだった。


 それはジェミニが作った、年齢を偽る例の物。


「うふふ・・・瞬ちゃん・・・今度の旅行、楽しみにしててね・・・」

「ミドリ、その時は二人でシュンくんを・・・」

「ええ・・・」

「「ウフフフフフフフ・・・」」


 二人の欲望は止まらない。

 そして果てしない。



 様々な思惑が飛び交う瞬を取り巻く環境。


 どうなるのかは、誰にもわからない。




******************

これで今章は終わりです。

いかがだったでしょうか?


次章は、この閑話を一部(わかりますよね?)を除き無視し、タノシイタノシイ無人島編になる予定です(笑)


この閑話の内容は、その次の章でとなります。

あしからず(笑)

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