第86話 Xデーまでの日々を過ごしました
最近、みんなが大人しい。
多分、僕がはっきりと言葉にして期限を区切ったからかな。
でも、みんなには言っていないけれど、実はまだ僕の心は晴れていないんだ。
僕は、家族を喉から手が出るくらいに渇望している自覚はあるんだけど、実はそれと同じくらいに怖くも思っているんだ。
また僕の前から家族が無くなっちゃうんじゃないかって。
みんながそう簡単にどうにかなるとは思わないし、いなくなるとも思わない。
これが、僕の弱さから来るのは分かってるんだ。
でも、どうしたら良いのかわからない。
克服する方法が思いつかないんだ。
多分、こういう気持ちが消えない限り、積極的にみんなとの関係を進めたいって気持ちが湧いてこない気がする。
前の宣言だって、みんなを待たせて申し訳ない、とか、ジェミニが可哀想、だとか、後ろ向きの気持ちが大きい気がするし。
性欲もあるから、自分としても嬉しい筈なのに・・・やっぱり引っかかる。
でも、どうしよう?
こんな事、みんなに相談出来ないし・・・いや、相談するのが正しいってのはわかってるんだ。
でも、どうしてもこんな風に思っている事を、みんなに知られるのは・・・
どうしょう・・・もう、時間が無い・・・こんな気持ちで行為をするのは、みんなも可哀想な気がするし・・・ああ、どうしたら良いんだ・・・
side美嘉
「・・・なんて考えてるみたいだよ。瞬は。」
「なるほど、それで瞬さんは・・・」
「最近様子おかしかったもんね〜。」
あたしと美咲、クォンの言葉に、みんなが暗い顔をする。
「・・・一体、どうしてシュン様はそのように思われてしまうのでしょうか?」
「ああ、ボク達はシュンを苦しめたいわけじゃないのに・・・」
「心の問題、ね・・・これはお薬じゃどうにもならないわ。」
「そうですね。ですが、このままでは私たちはともかく、瞬様の心にわだかまりができたままに・・・」
リリィ、ラピス、ジェミニ、そして美玲が悩んでいる。
確かに、これは難しい問題だね。
根源がどこにあるのかわからなければどうしようも無い。
美玖の時のように、心の奥底にでも眠っていれば読み取れるんだけど・・・
「・・・瞬は、おそらくまだ決着つけて無いんだよ。」
そんな中、美玖がポツリと言った。
全員が美玖を見る。
「多分だけど、瞬は瞬のパパやママが死んじゃった時の事がトラウマになってるんだ。そして、自分だけが生き残った事も。」
「「「「「!!」」」」」
その言葉に、あたしを含めた異世界組はハッとする。
確かに、それはあたし達では気がつけないかもしれない。
良くも悪くも、あちらの世界は命が軽い。
両親と突然死に別れるなんて珍しい話じゃない。
あたしも、ジェミニだって両親を早くに亡くしてるし、クォンは両親すら知らない。
リリィはこちらに来るまでは両親が健在だったけど、そもそも王族は普通の親子とは言い難いし、そういう教育を受けている。
ラピスは確か、クォンと同じく孤児だった筈。
こればかりは、瞬の心境に共感してあげられないわ。
「・・・これは、理屈では分かっていますが、共感は難しいですね・・・」
「はい、私も孤児でしたので・・・」
「わたしだってそうだよ。あんなんとは言え、パパもママもずっと一緒だったから、瞬の気持ちの底は分かってあげられない。」
・・・困ったわね。
どうしたら良いのかしら。
「皆の者、私も正直、人間の両親への気持ちというのは、知ってはいても、真に理解しているわけでは無い。だがな?瞬の事は分かっているつもりだ。」
フォーティの言葉。
みんながフォーティを見る。
「瞬は強い。身体だけでは無く、心もだ。信じようではないか。瞬を。きっと乗り越えられると。そう信じられる事も妻として必要な事だと私は思う。」
「「「「「「「「おお〜」」」」」」」」
ここ最近のポンコツっぷりが嘘のように良いことを言ったね。
「・・・酷い・・・」
「あ、ごめんごめん。」
いけないいけない。
フォーティだって心くらい読めるんだった。
涙ぐんだフォーティの頭を撫でる。
「・・・そうね。シュンくんもおそらく自分に向き合っているでしょうし、ここはそっと見守りましょう。」
「そうですね。それにシュン様ですから、きっと乗り越えてくれると思います!」
「そうだな!シュンならきっと!」
「うん!シューくんなら大丈夫!だってアタシ達の勇者だもん!!」
ジェミニとリリィ、ラピスとクォンが誇らしげにそう言う。
それだけの絆があるもんね。
「はい、私達に出来る事は、瞬さんを見守るだけです。」
「そうですね。少し考える時間を作って差し上げたらいかかでしょう?」
「そうだね美玲さん!それが良いと思う!」
「我々は、何かあった時、動けるようにだけしておこう。」
美咲と美玲、美玖、フォーティも納得したみたい。
そうね。
シュン・・・頑張って乗り越えて!
あたし達、みんなシュンを信じてるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます