第78話 従姉妹と不思議な子が仲良くなりました side美玖
『それは、そなたの父親が関係している。そなたの父親はかの者が嫌いだ。そなたがかの者への好意を示せば示す程、そなたの父親はそなたを叱責した。そなたの母がおらぬところで、な。それが繰り返され、そなたはかの者への好意を示すことはいけない事だと刷り込まれた。』
それが、この子から言われた事。
そして、それを聞いてから思い出した。
まだ、わたしが小さかった頃にパパに言われた事を。
『ぱぱ!みくね?しょうらいしゅんくんとけっこんする!』
『・・・駄目だよ美玖?パパは絶対に許さないよ?』
『・・・なんで?』
『なんでも、だよ?あの子だけは駄目だ。』
パパの憎々しげな顔。
『・・・う・・・う・・・な、なんでぇ・・・?』
『うるさい!駄目だと言ったら駄目だ!!』
そして、とても怖い顔で怒鳴るパパ。
『ひっ!?ふ、ふぇ〜ん・・・』
『おっと、ごめんね美玖。よいしょっと。』
パパに抱き上げられる小さなわたし。
パパは怒鳴った時とは違い、とても優しい笑顔になった。
『パパ、怖かったね?でも、美玖がパパにそんな事言うのがいけないんだよ?だから美玖、あの子の事はパパにはいわないでね?それと・・・そんな事を言う美玖は、パパは嫌いになっちゃうかも、ね。』
『・・・』
確か、この後から、わたしはパパやママに瞬を好きだって言わなくなったと思う。
あんまり思い出せないけど。
というか思い出そうとすると頭痛が・・・何これ?
それに、瞬にきつい事を言うようになったのも、この頃からだ。
パパの前で瞬と仲良くすると、パパが怒るから。
それまで、一度も怒鳴られた事が無かったパパに怒られた、それはわたしに少なくない傷をつけたんだろう。
でも、なんでなの?
なんでパパはここまで瞬の事を嫌うの?
それに・・・なんでそれをママには隠してるの?
「そなたは選ばねばならぬ。父親との関係か、かの者との未来を。」
「・・・ねぇ・・・なんでパパはあんなに瞬を嫌うのか、わかる?」
「今はわからぬ。本人に会えば或るいは・・・」
「・・・そう。」
でも、これで糸口は掴めた。
そして、これであの子達にわたしが勝てないって思った理由も分かった。
あの子達は、全てを捨てて今ここにいる。
瞬との未来の為に。
そんなわたしに、無意識とはいえ、パパとを天秤にかけたわたしの想いでは叶うわけがない。
だったら簡単だ。
後は、わたしの覚悟だけ。
その為には・・・聞かなきゃいけない。
どうしてそれほど瞬を憎むのか。
「ありがとう。スッキリしたわ。やるべき事がわかって。」
わたしは、その子にお礼を言う。
この子のおかげだ。
「構わない。元は私が助けたいと声を掛けたのだから。」
そう言って微笑むこの子・・・可愛いわね。
「さて、そうと決まれば、一度帰ろうかな!パパと話をしないとね。」
「・・・先に尋ねる。その問いを父親に発した場合、家族の関係性が崩れる可能性が高い。それでも、前に進む気か?」
・・・それはそうでしょうね。
パパは、何かを隠している。
ママに言わないって事は、そういう事でしょうね。
でも、わたしの未来はわたしのものよ。
だから、きちんと話をする!
「ええ、そうするわ。幸い、今日は家にいる筈だから。」
「そうか。ならば、しばし待て。・・・私です。今、よろしいですか?」
わたしの答えに、その子は頷いて、携帯電話を取り出し、どこかへ電話をし始めた。
「・・・一つ確認したいのですが、私はどれだけ力を使っても良いのか・・・え?は、はい?ですが・・・いや、それはそうですが・・・ま、まぁ、貴方がそう言うのであれば・・・わかりました。ありがとうございました。・・・う〜ん・・・」
そして、電話を追えてから首を捻って、「・・・管理者としての自覚が無いのか?」「やはりあの者は変わり者だ・・・」なんてブツブツと言っている。
何だろ?
「・・・まぁ、良いか。さて、それでは行こうか。」
「へ?どこへ?」
「無論、そなたの家に、だ。」
「え!?」
「・・・こちらの世界の管理者・・・神に了承を取った。私が使える範囲なら自由にして良いとの事だ。・・・信じられんが、まぁ、好都合とも言える。では、行くぞ?」
か、神様?今連絡してたの神様なの!?というか携帯電話で連絡が取れるの!?
混乱しているわたしの手を掴み、
「『転移』」
と言うと、景色が変わる。
って、ここ自宅!?
「さて、では対峙して来ると良い。外で待っておる・・・ん?どうした?」
「・・・色々、混乱してるけど、今のはあなたの力って事よね?」
「うむ。」
「・・・ねぇ?一つお願いがあるんだけど、良いかしら?」
「なんだ?」
「あのね?パパが素直に言うとは限らないでしょ?だから、暴いてくれない?パパの考えを。出来る?」
「造作もない、が、良いのか?」
「・・・うん。多分、ママも知っておいた方が良いと思うから。」
「・・・良かろう。ならば行こう。」
「お願い。・・・あなたはわたしの友達って事にするから。良い?」
「・・・良いだろう。但し、私は偽りは好かない。本当の友人という事でも良いか?」
「・・・良いの?確かに、色々助けて貰ってるし、あなたの事は嫌いじゃないけど・・・」
「美玖、これからよろしく頼む。」
「・・・うん!」
こうして、私は二人で家に入る。
「ただいま!」
「あら?お帰り。・・・って友達?すっごく綺麗な娘ね!?」
「うん!友達!え〜っと・・・」
「・・・フォーティと言います。お邪魔します。」
「は、はい。どうぞ?上がって?」
・・・名前聞き忘れてた。
フォーティって言うんだ。
「あ、パパいる?ちょっと聞きたい事があって。」
「居るわよ?あなた〜?なんか美玖が聞きたい事があるって!」
「は〜い?なんだい?」
さて、行くわよ!
居間で席に着く。
目の前にはパパとママ。
わたしの横にはフォーティちゃん。
「で、何かな?」
パパが笑顔でそう言う。
わたしはごくりと喉を鳴らす。
すると、フォーティちゃんが手を握ってくれた。
『案ずるな。私がいる。』
頭に声が聞こえて来た。
・・・これもフォーティちゃんの力なのね。
ありがとう!
「・・・パパ、なんでそんなに瞬を嫌うの?」
「・・・っ!?」
「え?嫌う?」
わたしの言葉にパパは固まり、ママは不思議そうにした。
「な、美玖?何を言って・・・」
「わたし、思い出したんだ。小さい頃?わたしがパパに瞬と結婚するって言った時、パパに怒鳴られた事を。」
「っ!!」
「・・・あなた?」
パパは、私の言葉に焦った表情をして、ママは代わりに視線がきつくなる。
「か、勘違いじゃないかな?」
「誤魔化さないで。わたしね?それ以降なのよ。瞬にきつい態度しか取れなくなったの。だって、パパの前で瞬と仲良くすると、パパが睨んでいるから。それに、ママも気がついてないでしょ?パパはずっと瞬の事が嫌いだったのよ?」
「・・・どういう、事?」
パパは明らかに表情を険しくし、ママもパパを睨み始めた。
「ねぇ?あなた。どういう事かしら?なんで瞬ちゃんを嫌うの?」
「・・・べ、別に嫌ってなんか、ないさ。」
「じゃあ、どうして私が瞬ちゃんを引き取るって行った時、反対したの?あの時は瞬ちゃん自身も反対したから、無理やり納得したけど、そう聞くと確かにあの時反対していたわよね?何故?」
「・・・」
ママが問い詰めているけど、パパは無言だ。
「あなた!!」
「・・・年頃の娘が、居たからだ。」
「あなたはあの時もそう言ったわね。でも、美玖は瞬ちゃんの事を好きだったでしょう!?なら・・・」
「だからだよ!何か間違いがあったらどうするつもりだったんだ!!」
ママにパパが被せて叫ぶ。
たしかに、それはそうね。
でも、そんな時、フォーティちゃんが口を開いた。
「嘘だな。」
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