第59話 周防さんちのパーティに出席しました
「皆様、お約束どおりこちらで服を準備させて頂きました。是非お召しになってください。」
「周防さんありがとう!」
僕達は、事前に周防さんからパーティ用の服は準備すると言われていたので、それに甘えることにしてあったんだ。
昨日の夜は、周防さん達を交え、こちらの離れで夕飯を頂き、そのまま就寝。
・・・久しぶりに一人で寝れた!
けど・・・まったりできたんだけど、なんだか寂しい気持ちもある。
・・・だいぶ僕もみんなに依存しちゃってるのかも。
そして翌日、今日の夜に行われるパーティの為、周防さんに着る服を実際に着用するように言われたんだ。
僕はタキシード。
・・・なんだか、子供が背伸びしてるみたいになってないかな?
ちょっと心配。
みんなは似合ってるって言ってくれたけど。
美嘉は黒いドレス。
ロング丈のもので、身体の線がよく分かるなぁ・・・
すっごく似合ってる。
いつも以上に妖艶な感じになってるね。
クォンは、黄色いドレス。
少し丈は短めだけど、それがまた元気なクォンにはよく似合ってるね。
可愛いと思う。
リリィは、水色のドレス。
少し装飾が多くキラキラとした感じが、元お姫様で聖女なリリィには似合っているね。
綺麗だし、可愛いと思う。
ラピスは、緑色っぽいドレス。
前は丈が短めで、後ろは長い感じ。
ラピスの引き締まったスラリとした足と長身が、凄く綺麗に見えるね。
うん、似合っているや。
綺麗だねやっぱり。
ジェミニは、圧巻の一言。
大きく開いた胸元と、金色のロングドレスは、褐色の肌とスタイルの良さを最大限に発揮し、目を釘付けにする。
とても綺麗だと思う。
でも、大胆すぎて僕には目のやりどころに困るなぁ。
「皆さん、本当に良く似合ってるわ!素敵!」
周防さんが、自分の事のように喜んでくれている。
うん、やっぱりこの人はいい人だな。
みんなもかなり打ち解けてるから、称賛を嬉しそうに聞いているね。
これで準備は万端!
パーティか〜・・・向こうで、渋々出て以来だね。
勇者だって事で、出たくもないパーティに無理やり出されたんだっけ。
なんだか懐かしいかも。
向こうでは勇者だった事もあり、色々な権力者から、娘さんを紹介されたり、仕官を頼まれたりしたけれど・・・今日はそういうのは無いから気楽で良いや。
なんなら、ちょっと楽しみな位だよ。
どんな感じなのかな〜?
夜。
いよいよパーティの開始だ。
周防さんは主賓側という事で、僕達とは別行動。
一応、僕達には轟さんがドレスアップしてついていてくれている。
あ〜・・・でも、これがあったか〜・・・
「・・・どうです?よろしければ今度食事でも・・・」
「お断りするわ。」
美嘉が誘いを切って捨て、僕と腕を組む。
相手は、どこかのお金の持ちの息子さんかな?
僕を睨んでも仕方が無いですよ?
「君、可愛いね?この後って暇?」
「暇じゃな〜い。興味もな〜い。」
「なっ!?俺は・・・」
「知らな〜い。」
クォンも同じく、僕の側に来て、反対の腕にしがみつく。
「あなたのような美しい人に差し上げたいものがあります。どうぞ、この後・・・」
「申し訳ありませんが、わたくしは何もいりません。それに相手がおりますので。」
そう言って、僕の側に来て、前からもたれかかってくるリリィ。
「妖精の様な美しさ!透明感のあるその瞳!あなたの様な美しい人をこれまで見たことがありません!私は、〇〇〇〇会社の次期社長の立場にあります。一生苦労はさせません!どうか、私と結婚を前提にお付き合いを・・・」
「歯の浮くようなセリフどうも。すまないが、ボクはあなたに興味が無い。権力や金にも、ね。悪いが失礼する。」
僕の背後に立ち、僕の肩に手を置くラピス。
「・・・お前、いい女だな。気に入った。俺の女になれ。」
「・・・寝言は寝て言って貰える?」
「なんだと!?俺を誰だと・・・」
「知らないわ。興味もないし。」
「なっ!?」
そして、最後にジェミニが僕のところに来て、後ろから首に手を回してもたれかかった。
いたるところから視線が来る。
ほとんどが、嫉妬なんかで好意的じゃない視線だ。
「あ〜・・・浮かれてて忘れてた。みんなと来たらこうなるよねぇ・・・」
「あら?別に有象無象なんてどうでも良いんじゃない?」
「そうそう、ジェミニの言う通りだよ。シュンはあたし達といれば良いのよ。」
「ほら、シュン様?あ〜ん♡」
「シュン、これも旨いぞ?どれ、あ〜ん♡」
「シューく〜ん?こっちもこっちも!」
・・・みんな、意にも介さず、いつも通りだ。
「・・・流石瀬尾様方。これほどの権力者達の前でなんという胆力・・・」
轟さん?
それはみんなだけだからね?
「〜〜〜っ!てめぇ!舐めやがって!俺を誰だと思ってんだ!家ごとめちゃくちゃに・・・」
ジェミニに絡んでいたチャラそうな人が、そう言いながらズンズン歩いて来る。
・・・こんなパーティの時に、この人後先考えてるのかな?
すると、スッと僕達の前に、轟さんが割り込んだ。
「なんだてめぇは!」
「私は、周防美咲様の付き人です。本日は美咲様の直接のご友人であるこの方々の、護衛兼案内役として配置されております。」
「・・・何?周防の・・・ちっ!使用人風情が誰に口を聞いて・・・」
「なんの騒ぎです?」
そこに、周防さんが現れた。
赤いドレスがとても良く似合っていて、大人びて見える周防さんが更に大人に見える。
綺麗だね。
「・・・っち。周防・・・さん。もう少し友人は考えた方が良いんじゃないか?それとこの使用人もだ。ゲストに失礼だろう?」
そう言った男に対し、周防さんは冷ややかに見て、
「・・・ええ、そうですね。これからは、ゲストはもう少し審査しましょう。」
「・・・だろ?」
ニヤッと嗤って、こちらを見る男。
「これからは、ホストがお願いして来ていただいたゲストに絡むような恥知らずは呼ばない事としましょう。という訳で、お帰りくださいます?」
「なっ!?お、俺に帰れだと!?」
「ええ、そう言いました。あなたは、ここにふさわしくありません。そして、この事は貴方の父君に厳重に抗議し、今後はあなたを出席させないようにします。」
「っ!てめ・・・」
「お嬢様に近づくな。」
「・・・ひっ!?・・・クソ!!」
激昂して一歩前に出た男の人は、轟さんがすぐさま懐に入り込み、ナイフを首に当てた事で止まり、悪態をついて帰っていた。
「・・・皆様、申し訳ありません。あのような者が呼ばれているとは・・・彼の家は、ある程度権力がある家なのですが、まさかこのような場であんな事をするだなんて・・・」
申し訳なさそうにする周防さん。
「気にしないでよ。何かあったわけじゃないしさ。」
「そうそう。こんな機会でも無いと、パーティなんて出れないし。」
「そうですよ?そんなに気になさらないで?ホスト役のあなたがそれでは、皆さんが気にしてしまいますよ?」
僕や美嘉、それにリリィ、そしてみんなが口々にそう言うと、周防さんはホッとしたように「ありがとうございます。」と言って、離れていったんだ。
こうして、僕達は周防さんと直接の知り合いだって事がわかり、遠巻きにしていた人達も、これ以上手出しはできなくなった事で、ちゃんとパーティを楽しむ事ができたんだ。
でも、この後、まさかの出来事があって、僕はかなり驚く事になるんだけどね。
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