第44話 みんなの不満を受け止めました

「会議をします。」

「ん?何シュン?どったの?」


 僕は、夕食後に、みんなを前にそう宣言した。

 だって、最近のみんなは目に余る!・・・とまでは言わないけれど、僕としても、ちょっと思うところがある。

 勿論、僕がはっきりと気持ちを口にしていないのが原因なのは分かっているんだ。

 分かっているけど・・・このまま気持ちを口にしたら、なんだかそのまま突っ走られそうで、躊躇しちゃうんだよね・・・


 でも、待たせている自覚はある。

 だから、一度きちんと話し合いをしようと思ったんだ。


 当然、僕も覚悟を決めている。

 覚悟を決めて気持ちを伝えれば、みんな落ち着いて分かってくれる・・・筈!


「みんなは、僕の為に色々とやってくれているのは、よく分かってる。でも、ちょっとやりすぎだと思うんだ。焦ってるように感じる時がある。」

「「「「「・・・」」」」」

「僕が自分の気持ちを口にしないのが悪いのも分かってる。だから、そこにみんなの不満があるのも自覚しているんだ。だから・・・ちゃんと、言おうと思ってる。」

「・・・何を?」


 僕の言葉に、みんなの表情が変わった。

 期待するような・・・それでいて、怖がっているような・・・そんな表情。

 

「・・・あのね?僕はみんなにとても感謝をしているんだ。そして、感謝だけじゃなく・・・ストレートに気持ちをぶつけてくれるのも、自分の世界を捨てて僕に会いに来てくれたのも嬉しく思っている。その上で、僕の気持ちをはっきりと言おうと思う。」


 ごくりっと、唾を飲む音。

 誰からかは分からない。

 それくらい、みんな緊張した面持ちだ。


「僕は・・・僕は!僕はみんなが好きだ!最初は友人として、仲間として好きだった。でも、みんながこっちに来てくれて、そして僕を恋愛として好きだって言ってくれて、僕なりに一生懸命考えた。その結論がこれなんだ。僕は、みんなの事が好きだよ?ずっと一緒に居たいんだ!!」


 ・・・みんなはホッとしてくれるかな?

 ちゃんと、信じてくれるかな?

 みんなが好きだなんて、凄く不真面目な感じもするけれど、みんなはこっちの倫理観じゃない。

 僕だって、みんなが好きだなんて最低かもしれないって自覚はある。

 でも、隠すことでみんなが不安になるのなら、嫌われてでも言うべきだと思った。

 それが、みんなへの誠意だと思うから。


 無言が続く。

 僕は、じっとして判決を待つ。

 

「・・・シュン、あり・・・がとう・・・」


 最初は、美嘉だった。

 涙を流しながら、ぽつりとそう言った。


「シューくん!」


 そして、クォンだ。

 泣きながら、飛び込んで来た。


「シュンくん!」

「シュン様!」

「シュン!」


 そのまま、ジェミニ、リリィ、ラピスも抱きついて来た。

 そして、同じように、そっと美嘉も近寄る。


「・・・妾は、お主の敵だった。そんな妾が、お主に受け入れられるかは、分かっていても実際に言葉として聞くまで・・・不安だった・・・ありがとう・・・シュン・・・愛している・・・」


 美嘉も同じように抱きしめてきた。


 ・・・良かった。

 ちゃんと分かってくれたんだ。


 少しの間、すすり泣く声が室内に響く。

 しかし、それも段々と弱まって来た。


 うん。

 これで、みんなも少しは落ち着いてくれるかな?

 

 僕もホッとする。


 ・・・してしまった。

 まだ、僕は分かっていなかったんだ。


 彼女たちの僕への愛情の深さを。


「・・・うん!良かった!これで、恋人同士だね!」

「・・・そうだね。うん、恋人同士だ。複数だから申し訳ないけど・・・」

「全然?みんなで付き合えて嬉しいよ?それに、もう遠慮しなくて良いね!」


 ・・・え?

 美嘉は何を言っているの?

 遠慮?遠慮がどこにあったの?


「そうね。気持ちが通じ合ったもの。これで思う存分・・・うふふふ・・・」


 ジェミニ?

 なんで、そんな捕食者のような目をしているの?

 思いが通じ合ったのに、認識に齟齬がありそうだよ?


「やっとシューくんと出来る!」


 クォン?

 何が?

 何をする気?


「シュン様・・・ああ、ようやく受け入れて貰えるのですね?この、わたくしの全てを・・・神様、感謝いたします。毎日祈っていた甲斐がありました。」


 リリィ?ねぇ、リリィ?

 君は、神様に何を祈っていたの?

 神様苦笑してない?


「・・・結ばれるという喜びと、初めてに対する恐怖もある・・・が、今はシュンを美味しく頂ける高揚感で満ち溢れて・・・じゃなかった、シュンと心から繋がれる事に感無量だ。どうかボクを美味しく頂いてくれ!」


 ラピス?

 美味しいって何?

 僕、食べられるの?

 何か色々隠しきれていないよ? 


 何故か、背筋に冷たいモノが走る。

 


 僕のスキル、『危機察知』に最大級の反応があった。

 けたたましく脳内にアラートが鳴り響く。

 向こうでの、魔王アルフェミニカの攻撃に匹敵する位の反応だ。

 

 逃げなきゃ!

 なんかヤバい気がする!!


 僕はとっさに逃げようと・・・ってみんなまったく離れない!?

 どんな力なんだよコレ!?

 ジェミニとリリィは後衛職でしょう!?

 すっこい力強いんだけど!?


「み、みんな・・・お、落ち着いて・・・」


 なんとか声を絞り出すけど、その声は震えてしまうのだった。

 ・・・どうなっちゃうんだろ・・・僕・・・逃げ切れるかなぁ・・・ 

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