閑話 とあるお嬢様の調査報告 side???
「・・・以上が報告です。」
「・・・そうですか。ご苦労さまでした。今後も調査をお願いします。」
「はっ。失礼します。」
私は、報告書に再度目を通します。
「・・・瀬尾、瞬・・・」
それは、彼に関する報告書。
あれから、私は電話番号と制服を元に、調査員に彼の事について調べさせました。
すると、驚くべき事がわかりました。
彼は若くして親を無くし、親族にたらい回しにされた経験がある。
その上で、彼は自分一人で生活をしているようだ。
しかし、そんな逆境にもめげず、それでも強い心と優しさを忘れていない。
それがどれほど難しく凄いことか、中々周囲は分かってくれないでしょう。
だからこそ、私は彼を尊敬します。
そして、
「・・・城島・・・」
この忌まわしい名前。
こいつは、人間のクズです。
そして、以前私は、危うくこのクズと婚約させられそうになりました。
お父様の仕事の関係で、歳の同じこのクズを紹介されたのです。
パワーバランス的には、私の家の方がずっと上ですが、私と釣り合う人間がおらず、そんな中、恥知らずにも自分の息子を推薦してきた城島グループの社長。
実際会ってみると、確かに見た目はそう悪い感じではありませんでした。
そう、見た目だけは。
ですが、その目に宿る隠しきれない欲望に、酷く嫌悪感を懐き、独自に調査をしたのです。
すると・・・出るわ出るわ・・・いじめ、恐喝、傷害、強姦・・・本当にクズね。
そして、親がそれを諌める事なく、隠蔽し手助けする・・・親子共々クズでした。
私の調査でそれが判明し、その結果をお父様に見せた事で、婚約の話はお流れになりました。
当時、ホッとしたのをよく覚えています。
そして、そんなクズの標的になっていたのが・・・瀬尾瞬くん・・・
報告書を読むと、そんなクズに迎合する生徒達から無視され、それでも自分を曲げず、彼らしく生きていたようです。
普通なら耐えられず、転校や退学、下手したら自殺をしてしまうところでしょうに。
それに、もともと、クズどもの槍玉に挙げられた切っ掛けも、彼らが絡んでいた他の生徒達を助けたところから始まったようだし、そんな助けた人達に裏切られた彼が、人間不信に陥ってもおかしくなかったと言うのに・・・彼は一切変わらなかったようです。
それでも助ける人が周りにおらず、辛い思いをしていたと思うと、彼の周りの生徒や教員の事も許せなくなります。
報告書を読む限り、彼は良く人助けをしていたりするみたい。
なんて優しいの。
自分が大変な状況にあっても、それでも周りに目を向ける余裕がある。
優しいだけじゃなくて、心も強いのね。
素敵・・・
最終的には、クズの親の汚職が明らかになり、その流れでクズの悪事も明らかになって、取り巻きともども学校を辞めたようです。
その事自体は喜ばしい。
ですが今は・・・
私は報告書を読み、眉を顰めます。
「桜咲美嘉・・・異世久遠・・・異世ジェミニ・・・それと留学生のリリアーヌ・グランファミリア、ラピス・グランファミリア・・・ですか・・・」
彼には、どうも親しくしている女性がいるようです。
それも、距離が近いなんてものでは無く、ほぼゼロ距離。
腹ただしいことに、写真付きの報告書となっています!ムカつく!!・・・っと、はしたない言葉になってしまいましたね。
ですが・・・
ムカムカと来ます。
初めての経験です!
彼の表情が、デレデレとしておらず、あわあわとしているのが幸いです・・・が、その顔は是非私がして差し上げたいものです。
こうなると、近くにいられないこの身が恨めしい。
・・・どうしましょうか・・・
おそらく、彼女達は強敵です。
見る限り、凄まじい美しさ、可愛さ、それにスタイルもとても同じ歳と思えない人もいます。
・・・本当に同じ高校生かしら?
私も美貌では負けているとは思っていませんが・・・
・・・もう少し調査が必要ですね。
彼女達の調査も進めましょう。
それに、気になる事もあります。
「桜咲美嘉・・・確か・・・」
見た事がある名前・・・どこで見たのか・・・あれは確か・・・
そうだ!昨年の全国実力テスト!
確か、彼女はその試験で、全国一位を取っているはず!
それで一度調べたのでした!
県内の高校に在校する彼女であれば、私の将来の為に補佐として手助けして貰えないか、と。
結局、まだ接触していませんでしたが・・・こんな所でまた名前を見るとは。
でも、この学校では無かった筈・・・転校したってことかしら?
・・・もしかして、彼の為に?
事実、彼女が転校してきてから、他の面々も転校してきています。
どうやってか、皆同じクラスになっているようですし・・・
彼女の親は、普通の人だった筈ですが、一体どうやって・・・ですが、
「・・・負けられません。彼は私のモノにします。」
メラメラと闘志が湧いて来ました。
人柄、見た目、彼は申し分ありません。
何より、私は彼を好きになってしまいました。
携帯電話を取り出します。
コールするのは、先程の調査員です。
「・・・私です。報告書にあった女性の名前も調査対象として下さい。」
電話を切る。
「彼を知り己を知れば・・・ね。まずは、丸裸にしましょう。」
敵はおそらく強大・・・普通にやっては負ける可能性が高いでしょう。
私は、自分を過大評価しません。
冷静に考えても、昔なじみの彼女達の方が有利・・・どころか、こちらはかなり厳しいと思います。
「ですが・・・勝つのは私です。」
正々堂々と、優雅に・・・などと言いません。
泥臭くても、勝ちは勝ち。
違法な事をするつもりもありません。
それではあのクズと同じですから。
しかし、彼のような清廉な人を手に入れるには、真正面から行くべきでしょう。
絡め手や籠絡は、途中までは有効だと思いますが、最終的には逆効果です。
「・・・必ずあなたの心を手に入れて見せる。瀬尾瞬くん・・・」
私は改めてそう決意しました。
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