第33話 てんやわんやになりました

「おのれ魔王!生きていたのか!!シュン!クォン!ジェミニ!加勢する!!」

「それほどまでに接近して戦っているなんて・・・防御魔法は任せて下さい!」


 ラピスが剣と杖をマジックバックから取り出し、リリアーヌに杖を渡して剣を構える。

 リリアーヌは杖をかざした。


「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!美嘉はちがっ・・・」

「そのような格好でシュンを魅了しようなどと!!おのれ!この痴女魔王め!!シュンは誘惑させん!!はぁぁぁ!!」

「なにそれ!?ストップ!ラピス、ストッ〜プ!!」

「そうです!これみよがしに胸をあらわにしているだなんて!シュン様の目の毒です!この破廉恥魔王!!」

「リリアーヌまで変なこと言わないで!?美嘉は服着てるじゃないか!!」

「あんなの服じゃありません!」


 ちなみに、今の美嘉の格好は、就寝前ということで、キャミソールにホットパンツだ。

 ・・・それを言ったら、ジェミニのほうがヤバいと思うけど・・・


 ロングTシャツに、パンツだけだし。

 ・・・見てないよ?

 なんかTシャツに浮き上がってるのもね。

 決して、見てはいないのです。

 って、それどころじゃない!


 僕は、聖剣を取り出し、ラピスの剣を受け止める。

 周囲に放たれる衝撃破は、美嘉とジェミニが障壁で受けてくれた。


「ラピ!落ち着いて!!えいっ!!」

「ぐあっ!?クォン!何をする!?敵は向こうだぞ!?」

「良いから落ち着いてって!!ちゃんと周りを見て!!」

「えっ・・・?」


 クォンが一瞬でラピスの後ろに回り込んで、頭を小突いた。

 そして、ラピスはそこで初めて周囲をゆっくりと見回した。


「・・・狭い。戦いの痕跡も無い・・・」

「そうですね・・・これはいったい・・・」


 リリアーヌも落ち着いたみたいだ。


「あのね?ここは僕のいる世界で、ここは僕の部屋。で、今はみんなで住んでるんだ。美嘉・・・魔王も含めてね。」

「「魔王も!?」」


 二人が衝撃を受けている。


「シュン!何故ボク達を裏切っ・・・」

「あ、それアタシがもうやった。シューくんは裏切って無いよ?」

「はぁ!?」

「いや〜、そう思っちゃうよねぇやっぱり。アタシもそうだったもん。でも、違うよ?今は、三人で代わる代わるシューくんと寝るくらい仲良いし。」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ラピスにクォンがつっこんだ。

 ラピスはそれを聞いて、顎が外れるんじゃないかってくらい大口開いて叫んだ。

 確かに、クォンと再会した時はそうだったね。


 ていうかクォン、それじゃあ、僕が凄く悪い男みたいじゃないか・・・

 変なことは何もしてないのに・・・


 しかし、そんな僕に、すぐに矛先を向けた人がいた。


「シュン様!女性と同衾とは破廉恥です!!」


 リリアーヌだ。

 僕は大いに頷く。


「だよね!僕もそう思ってたんだ!!やっぱり一緒に寝るのはやめ・・・」

「・・・リリィ?あなた、旅の道中、たまにシュンくんの毛布で一緒にくるまって寝て無かったっけ?シュンくんが寝入ってから忍び込んでたわよね?」

「あれは・・・その・・・気のせいです!」

「ええ!?リリアーヌのあれ、わざとだったの!?だって僕には寝ぼけて間違えたって言って・・・」

「・・・気のせいです!良いですね!?」

「あ、はい・・・」


 僕の言葉は、ジェミニにインターセプトされちゃった・・・

 そして、リリアーヌに押し切られちゃった・・・ていうか・・・


 ・・・収集がつかない。

 どうしたものか・・・


「・・・やれやれ、悪い予感はこっちだったか。ふむ・・・聖女とその騎士よ。改めて名乗ろう。妾は魔王アルフェミニカと呼ばれていた者・・・その転生体だ。」


 呆れたようにため息をついたあと、美嘉はそう二人に切り出した。


「・・・転生体?」

「そうだ。魂こそ同一ではあるが、妾はこちらで一から生まれ直したのだ。グランファミリアの神に頼んでな。こちらでの名は、桜咲美嘉だ。よろしくの。」

「・・・詳しく、説明して下さい。」


 美嘉は、これまでの事を全て正直に話した。

 そして、その後、クォンとジェミニも、それぞれの転移の経緯を二人に説明したんだ。

 それを、二人は黙って聞いていた。


「聖女とその騎士よ。すまなかった。シュンとクォン、ジェミニにも謝罪したが、妾は本当に酷いことをした。申し訳なかった。」


 美嘉が、頭を下げた。

 それに二人は、目を丸くして驚いていた。

 そして、その後、二人で顔を合わせ、頷き合う。


「・・・魔王、あなたにお聞きします。あなたは、シュン様を愛しており、支えて生きる、これに間違いはありませんね?」

「ああ、妾の名に誓おう。」

「魔王。クォンとジェミニにも、危害は加えない無いと誓えるか?」

「勿論だ。そなた達二人にも危害は加えないと誓おう。」


 リリアーヌとラピスはお互いに頷いた。


「・・・魔王アルフェミニカ。わたくしは、あなたを許します。」

「ボクも許す。」


 良かった・・・って、ん?なんで二人はため息を?


「それにしても・・・こんな事になってしまっているとは、夢にも思いませんでしたわ・・・まさか、魔王までシュン様を愛してしまうだなんて・・・」

「まったくだ。それに・・・ジェミニはまだしも、クォン?どういう事だ?そんな危ない事をしていただなんて・・・ちゃんと言ってくれよ。」

「にしし。まぁまぁ、良いじゃん良いじゃん。」

「「良くない!!」」


 ケラケラと笑っているクォンに、ムスッとしたリリアーヌとラピスが噛み付いた。

 しかし、すぐに美嘉を見る。


「それで、魔王、あなたは・・・」

「待って。あたしはもう、魔王じゃないわ。桜咲美嘉、よ?ミカって呼んで?これがこっちでの話し方だよ。慣れてね?」

「・・・ミカ。あなたは、シュン様と共に暮らしているのですね?」

「うん。そこの奥があたしの家なの。壁を切り取って繋げたんだよ。」

「・・・うう。複雑です・・・まさか、敵であった魔王が、わたくしたちよりも先に進んでいるだなんて・・・」

「・・・本当ですね姫様・・・むぅ・・・」


 肩を落としてそう呟き合う二人。

 進んでいるってどういう・・・

 そんな二人に美嘉がニヤッと笑った。

 ・・・嫌な予感がする。


「二人共、ちょっとこっちに来て。あ、クォンとジェミニも。シュンは駄目。」

「・・・はいはい。」

「あっ!?ちょっと!?」

「クォン!?ジェミニ!?なんで引きずって行くんだ!?」


 リリアーヌは美嘉に、ラピスはクォンとジェミニに美嘉の部屋に連れ込まれた。

 僕は一人、寂しい感じ。


 ・・・酷いや。


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