第29話 様々な視線を感じました
「・・・あれ。」
「うん・・・でも・・・」
「・・・流石に、今更なぁ・・・」
「だよな・・・俺たちがいけないんだし・・・」
「・・・城島達さえいなかったら・・・」
「・・・そんな風に考えちゃうから、こうなっちゃったんでしょ・・・」
「・・・そうよね・・・」
僕達を遠目に見ている生徒達。
それは廊下にまでいた。
どの人も、悔しそうな、それでいて落ち込むような表情だ。
「・・・ふん!今更遅いってのよ。」
「そうだね。シューくんを傷つけたのは絶対に許さないよ。」
「私も、それを知って驚いたもの。あなた達二人と同じ想いだわ。」
そしてこの3人。
どうも、僕のこれまでの環境がどうしても許せないらしい。
僕はそこまで気にしていないんだけど、僕以上に怒っているみたいだね。
・・・正直、嬉しいとは思っている。
こんな風に考えちゃうのは、性格悪いのかもしれないけどね。
「シュン?」
そんな風に考えてたからか、ボーっとしていた僕の顔を覗き込む美嘉。
「・・・いや、なんでも無いよ?それより・・・これ、いつまでするの?」
「勿論、いつまでも、よ?」
「・・・うう・・・恥ずかしい・・・」
そう、今は昼放課。
みんなで食事を取っているんだ。
でも、僕は恥ずかしくて仕方がない。
そんな僕の状況はというと・・・
「シュンくん?手が止まってるわよ?食べさせてあげた方が良いかしら?」
「い、いや!そんな事無いよ!?自分で食べられるから!!」
「なんなら、口移しでも・・・」
「だ、大丈夫!大丈夫だから!!」
右隣で密着しているジェミニ。
「どしたのシューくん?なんかそわそわしてるよ??」
「な、なんでも無い・・・よ?」
「本当に〜?でも、なんだかドキドキしてるような・・・」
「ク、クォン!気にしないで!だから触って確認しなくても良いから!」
左側で密着しているクォン。
「ねぇ美嘉!なんで机一つでみんなで食べるのさ!くっつければ良いじゃないか!」
「え?だからくっついてるでしょ?」
「机をだよ!みんなが僕にくっついてどうするの!?」
「・・・え?なんだって?」
「雑ぅ!!?絶対聞こえてるよね!?」
僕の前に椅子を寄せている美嘉。
そう、僕の机一つだけを使用し、所狭しと並べられた弁当箱。
そして、三人は椅子だけを近づけて、一緒に食べているんだ。
当然、そんな状態だから密着しちゃう。
周囲からは、嫉妬の視線が凄い。
まぁ、その中には、諦めなんかの視線もあるけれどね。
諦めの視線や落ち込んだ視線の理由は冒頭の通り。
城島達の脅しに屈し、僕を無視していた為、今更仲良くなれないから。
これに尽きる。
まぁ、以前にもあった通り、これまでにそれを気にせず、僕・・・というか、主に美嘉達に話しかけて来る人も、少なからずいたけれど、
「桜咲さん、たまには一緒に食事でも・・・」
「え?なんであたしのシュンを無視していた人と一緒にご飯を食べないといけないの?」
「ぐっ・・・」
「異世さん。この間話した歓迎会なんだけど・・・」
「行かな〜い。だって、シューくんにイジワルしてたんでしょ?クラス委員なのに?だからアタシも仲良くしな〜い。」
「・・・でも!・・・いや、そうだね・・・そうだよね・・・」
美嘉とクォンはこれまでこんな感じだった。
ちなみにジェミニはというと・・・
これはつい先程のこと。
何人かのクラスメイトがジェミニに近づいている。
「い、異世さん、異世久遠さんの従姉妹なんだよね?」
「ええ。そうよ。」
「こっちで話しをしながらみんなで食事でも・・・」
「何故?」
「何故って・・・そりゃ仲良くなるために・・・」
「何故?シュンくんとは出来なかったのに、私にはできるの?」
「う・・・」
「この際だからはっきりと言っておくけれど、私もあなた達がシュンくんにしてきた事は全て知っているわ。それが脅されていた事も含めてね。でも、脅されたからと排斥した人間を、どうやって信用しろと言うの?」
「・・・」
「私は、いえ、私もミカも、クォンも、そんな状況でもシュンくんから離れるような事は無いわ。事実、ミカの記憶・・・いえミカは離れなかったでしょう?私も色々あって、人を信用出来ないのよ。私が信用するのは、どんな状況でも裏切らない人だけ。だから・・・」
ジェミニは、クラスメイト・・・いや、廊下にまでいる他の生徒に聞こえるように大きめな声を出した。
『私は、あなた達と仲良くするつもりは無い。排斥したければすれば良い。でも、敵になると言うのであれば、それ相応の
・・・うわぁ。
魔力を載せて、『言霊』にまでしてる。
聞いていた人は凄い圧力を感じているだろうなぁ・・・
事実、それを間近で聞いていた話しかけて来ていた人達は、男女問わず、後ずさっているね。
ジェミニも美嘉から聞いたのかな?
・・・記憶とか言いかけてたけど、美嘉は本当にどうやったんだろ?
でも・・・
「ジェミニ。」
僕はジェミニを見る。
「ありがとう。僕の為にそこまでしてくれて。怒ってくれて。でも、そこまでしてくれなくても良いんだ。君は優しいから、誰かを脅すなんて似合わないよ?」
僕も、誰かを傷つけるようなジェミニは見たくない。
僕がそう言うと、ジェミニは一瞬呆けて、その後満面の笑みになって・・・
「シュンくん!好き!!」
ジェミニが両手を広げて僕に飛びつき・・・
「「あっ!!」
美嘉とクォンの叫び声。
「うわぁ!?むごっ!?・・・ぷはっ!?ジェ、ジェミニ離れて!!離れてぇ!!」
ジェミニが僕に抱きついてきて、その大きな胸に僕の顔を抱え込んだんだ。
「こら〜!ジェミニ!離れなさい!」
「ジェミ姉!ちょっと!アタシもする!!」
「みんなも離れてぇ!!」
これが、食事前の事。
これ以降、ジェミニにも僕達にも話しかけてくる人はいなくなった。
で、それを聞いていた人達が、ああなっちゃったんだ。
まぁ、これからは失敗しないと良いね。
・・・僕達には無理だと思うけど。
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