第11話 発見しました

 放課後、僕達は裏山近辺を捜索する。

 目撃情報があった場所は全て行ってみたけど、残念ながら向こうの世界の人っぽい気配は無い。


 近辺を歩いていると、マスコミのような人たちと何度かとすれ違った。


「かなり噂になってるみたいね。」

「そうだね・・・もし、向こうの人なら、早く保護してあげないと。」

「・・・そうね。」


 くまなく探して、何度か魔力探知もしたけれど、反応は無い。

 僕達はぐるぐると探し、また学校まで戻ってきてしまった。


「今日、色々な人がしていた噂話、それに聞き耳を立てていたけれど、この学校近辺が一番目撃率が高いのよね・・・」

「それは僕も思った。時間は、夕暮れから夜にかけてみたいだね。そうすると、今からの時間がもっとも可能性が高い。」

「そうね・・・」

「もう少し、探してみよう。」


 僕達は、再度近辺を探る。

 

「・・・居ないわねぇ。気配も無い・・・」

「うん・・・」


 やっぱり、違うのかなぁ・・・

 でも、なんとなく気になるんだよね・・・

 

 その時だった。


「・・・ん?」

「・・・え?」


 僕と美嘉は同時に振り向く。

 そこは、山の頂上がある方向。

 視線を感じた。

 そして・・・


「今・・・見られてたわよね?」

「うん・・・それに、確かに魔力を感じた・・・」

「山頂からだったわ・・・行ってみましょう!」

「行こう!」


 僕達は山の方向に走り出した。

 今は既に視線も魔力も感じない。

 でも、あれは確かに魔力を使って視力を強化する『望遠』だと思う。

 そんな事は、こちらの世界の人には出来ない。

 おそらく、向こうの世界の人だ!

 走り出した僕達は、走る速度を上げた。




 現在は、山の中腹。

 このペースで行けば、後10分位走れば、頂上に着く。

 それくらいのハイペースだ。

 特に息は切れていない。

 そんなに軟じゃないし、美嘉も魔力で身体強化しているから、この位で息が切れる事は無い。

 

 ・・・そう言えば、結局なんで美嘉が魔力を持ったままこちらに来ているのか、聞いてなかったなぁ。

 この件が終わったら、しっかりと聞こうっと。


 ちなみに、僕達は人とはすれ違っていない。

 美嘉が山の周辺に人払いの魔法を使ったからね。

 だから、相手は僕達が山を登っているのには、気がついていると思う。

 多分ね。

 奇襲対策の為、常時気配と魔力の探査はしているけど、反応は無い。

 でも・・・


「気配はしないし魔力も感じない・・・けど、何かいる!」

「うん!確かに何かいる!!」


 今も気配も魔力も感じない。

 でも、何かがいるって勘が訴えている!


 僕達はペースを上げる。

 頂上が見えて来た!


 その瞬間だった。

 

「・・・!?」


 美嘉に向かって何かが高速で飛来する。

 美嘉は咄嗟に魔力障壁で防いだ。

 飛来した何かは障壁で弾かれ、美嘉の足元に落ちる。

 これは・・・ナイフ?


 僕達は足を止めて身構えた。

 周りを見回すも、誰もいない。 


「・・・気配が・・・無い・・・でも・・・居る!」


 またしても、美嘉に向かって、ナイフが飛んでくる。

 美嘉が、再度魔力障壁で防ぐ。 


「僕が何とかするから、美嘉は・・・」

「ええ!!」


 僕は、更に飛んでくるナイフを蹴り落とす。

 何本も飛んできたけど、狙いは全て美嘉だ。

 これを投擲して来た相手は、移動しながら投げているようで、ありとあらゆる方向から飛んできて、居場所を特定させない。

 かなりの手練だ!

 だけど・・・


「・・・っ!!そこ!!!」


 美嘉が落ちているナイフを念動力で浮かせ、側方に飛ばす。


 キィンッ!!


 甲高い音が鳴り、ナイフが弾き飛ばされる。

 そこには何も無い・・・

 でも、これは・・・


「いつまで隠れておるのだ。痴れ者め。」


 美嘉が、魔王モードとなり、腕を振る。

 魔力の波が放たれ・・・何も無かった場所に、一人の女の子が現れた。


「・・・なんでさ・・・なんでなのさ!シューくん!!」


 ショートの茶髪に狐耳。

 赤色のチャイナドレス風の衣装。

 その顔は憎々しげに僕達を見ている。


「・・・クォン・・・」


 それは、僕の仲間だった、斥候兼武道家のクォンだった。


「なんでシューくんが魔王と一緒にいるのさ!!!」


 クォンの叫びが木霊する。

 クォンから放たれる殺気が周囲に充満していた。

 戦いは避けられない。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る