第4話
休憩室に向かわず、俺は屋上へと足を運んだ。
うちの会社は社長の意向でリラックスできるようにと屋上に庭園を造ってある。
広い屋上には色とりどりの花や木々が植えられていて、ぱっと見は綺麗な公園のようにも見える。
中央に設置されているベンチに腰をかけ、ふーっと息を吐いた。
睡眠が取れていないせいで、うまく思考が回せていない。
後輩にもきつく当たってしまった。
俺は一体何をしているのだろうか。
再度ため息をつく。
目を閉じると思いだす、夢の中の人の影。
俺は誰かに恨まれているのだろうか。
恨まれるようなことなんてした覚えはないのに。
なぜ俺は、何度も同じ夢を見なきゃならないんだ。
「クソっ」
ダン!と自分の中の抑えられない怒りを、ベンチを思いっきり叩くことによって発散させた。
「おー、おー、調子悪そうだな」
「……三根山」
そこに現れたのは俺の同期の三根山だった。
「お前がオフィスで大声をあげたって聞いてな。何かあったのか?」
「べ、別に大したことじゃない」
「大したことだろう。佐藤は優しいって社内では有名なのに、そんな奴が怒ったように大声をあげたんだぜ?何かあったに決まってるだろう」
こいつはお節介なところが昔からあった。
もしかしたら何かオフィスで聞いて、すぐに俺を探してくれていたのかもしれない。
これ以上会社には迷惑はかけられない。どうにかこれを解決しなければ。
俺は三根山に今の現状の話をすることに決めた。
「すまない。三根山、相談してもいいか?」
「おう!どんとこいよ!」
今の俺の現状を話すと、三根山はどんどんと難しそうな顔をしていった。
「それは、なかなかだな」
「眠れないのが一番辛い」
「精神的にも異常が出ているなら早急にどうにかしたいのはわかるんだが、俺がどうにかできる問題でもないし」
「安眠効果的なのは片っ端から試したつもりなんだ。それでも、眠れない」
「もうここはお祓いとかそう言うのになるんじゃないか?」
眼中にはなかったが、そう言うパターンも世の中にはあるってテレビでも見たことはあったな。
「気休めでもそう言うのに一度頼るのもいいんじゃないか、と俺は思うがな」
「ちょっとそっちのことも考えてみる。ありがとうな、三根山」
「おう」
話をするだけでも、少しは気持ちが楽になったような気がした。
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