加害者側に回ることは成功を担保してはくれない

 ちょっとエキサイトしちまったが、考えてみりゃそういうことなんだよな。世の中には、

『イジメ加害者の方が社会で成功する』

 的な印象はあるらしいとは言え、まあ確かに、他者の痛みや苦しみや悲しみみたいなものを考えない奴の方が思い切ったことをやれるだろうから当たればでかいかもしれないものの、

『成功者にはサイコパス気質な者が多い』

 的なことも言われたりしてるらしいものの、でもな、

『イジメ加害者の方が必ず成功する』

 とは限らないだろう? イジメ加害者だった奴がつまらない人生を送ってたりすることもあるしな。もしくは、ガチ反社になってたり怪しい商売してたりってこともある。

 結局はそういうことだ。

『加害者側に回ることは成功を担保してはくれない』

 ってことだよ。

 俺はまあ昔のことは思い出したくもないが、同級だった連中も、なんかすごい成功者になったのがいるって話は聞かないしな。それよりは、怪しい商売を始めて逮捕された奴と、傷害事件起こして逮捕された奴と、イキがってスピード出し過ぎて街路樹に突っ込んで車ごと体が真っ二つになった奴がいたとは聞いてる。

 特に街路樹に突っ込んだ奴は結構大きなニュースにもなったよ。同乗してた三人ももれなく死んだし。そいつとは一時期ツルんでたこともあった。ソリが合わなかったからすぐに縁遠くなったけどな。

 死んだ人間を悪く言いたくはないが、とにかく強い相手には遜るが弱い相手にはやたら強い、つまんねえ奴だった。

 しかもそいつの父親も、葬式の時に同じ車に乗ってて一緒に死んだ奴の遺族相手に、損害賠償の話でモメて殴り合いのケンカしたと、参列した奴から聞いた。

 どれも俺が三十になる前の話だ。

 俺自身、イキがって社会のことを分かってるつもりなだけのバカなガキだった。斜に構えた態度を『カッコイイ』と思ってた。

 ……そういう部分が今もないわけじゃないのも否定はしないが……

 いずれにせよ、あの当時の俺に今の羅美を支えられる力なんかなかったよ。それだけは間違いない。

 だからこそ、他所様の<事情>をどうこうしようとか、ガキが考えることじゃないんだって今なら分かる。

『親が躾けないんなら自分が躾けてやる』

 とか、大人がやれないことを、なんでようやく毛が生え揃った程度のガキにできるとか思えるんだ? それが<余計なこと>だってんだよ。

 <親に躾けてもらえてないガキ>

 なんか放っておけ。そんなものの対処は大人にやらせればいい。とにかくガキがすることじゃないっての。


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