こんなこと言われて嬉しいか?

 この世には、他所様の生き方にひたすら難癖をつける奴らがいる。羅美のことが世間に知れればそれこそ袋叩きになるだろう。ましてや行政の支援を受けるとなったら、

『なんでそんな奴に税金を使うんだ!』

『こんな奴が税金で助けられて自分達には何の支援もない! 不公平だ!』

 とか言う奴がな。

 はあ? <行政の支援が必要ない生き方>を選んだのはお前だろう? 支援が欲しいならそういう生き方をすればいい。てか、生活が苦しいならなんだかんだと支援はあるはずだぞ? 自分じゃ調べもしないで、

『なにも助けてもらえない!』

 とか言ってるならそれはお前が努力してないからだろ? ちゃんと調べないからだろ? 自分じゃ何もせずに行政から支援してもらおうとか、どんだけ甘やかされたいんだ?

 行政の支援を受けられてる奴は、どんな支援が受けられるか、相談しに行くから受けられてるだけだよ。行政ってのは、こっちから聞きに行かないと教えてくれないしな。

 本当に何も支援がもらえないほどの収入があってそれで『生活が苦しい』なんてのは、それこそただの<やりくり下手>じゃないのかよ? それとも<浪費癖>か?

 って、こんなこと言われて嬉しいか? 嬉しくないんだろ? だったら他所様に対しても言うんじゃない。そんなだから敬遠されるんだ。身の回りに力になってくれる人間がいないんだ。力になってくれるタイプを自分から遠ざけてるんだって気付くんだな。

 言っとくが俺も、金銭的な支援は何も受けられてないぞ? 羅美自身は今後受けられるだろうけどな。と言うか、<妊産婦健康診査受診券>てのを、<保健福祉センター子ども福祉室>というところに妊娠したことを届け出て母子手帳を交付してもらった時に一緒にもらったらしい。これは、妊婦健診の自己負担が免除されるものだそうだ。

 うん、もうすでに金銭面での支援を受けられてるな。もっともこれは、ここの自治体の管轄内に居住してる妊婦なら誰でも受けられるヤツだから、別に羅美が特別ってわけでもない。

 んん? と言うことは、妊娠したら支援受けてたってことだよなあ? しかも、子供がいる世帯には<児童手当>もあるはずだよなあ? 離婚前はうちも受給してたぞ? 前妻と俺の収入を合わせると所得制限に引っ掛かってくるから減額されてたらしいが。

 ふむ。そうすると離婚したことで俺の収入分だけ減ってるから、今は前妻のところに満額支払われてるってことだな。

 いやはや、愉快だな。これも叩く奴がいそうだな。

『離婚してそれでもらえる額が増えるとかふざけんな!!』

 とかな。

 だから、支援を受けられない生き方を選んだのはお前だろ? 自分がそれを選んでおいて他所様を妬むんじゃないっての。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る