通信制の高校
まあ、栗原の発言も録音させてもらってたし、きっちりサポートは引き出させてもらうさ。もちろん、児童相談所を叩きたいわけじゃない。マスコミに売ってネタにしたいわけでもない。ただただ、自治体が用意してある<制度>をきちんと利用させてもらいたいだけだ。
パパ活女を買ってたような連中が払った税金を原資にしてな。
無論、金に色は付いてねえから誰が払ったものか?なんてのは分からないし詭弁の類ではあるものの。そう考えるとまだ腑に落ちるものもあるんじゃないか?
自分が努力するために使えばいいはずの時間を、他所様の足を引っ張るために使うような奴らの理解なんかほしいとも思わないしな。
栗原が帰った後、羅美は、
「うち、転校すんの……?」
縋るような目を向けて訊いてきた。<通信制の高校>ってもんを理解してないんだろう。だから改めて説明する。
「そうだな。転校と言えば転校だ。今とは別の学校に転籍するわけだからな。ただし、通信制の高校ってのは、自宅で勉強できるんだよ」
「へ……? 家で勉強してていいの? じゃあなんで学校なんか通うんだよ?」
腑に落ちねえ表情をする羅美に、
「そりゃお前、勉強嫌いな奴が教師も見てねえところでまともに勉強なんかするわけないだろ? だから通信制の学校なんて、ちゃんと勉強する気がある奴が、学校通ったりする時間も惜しんで学校でやる勉強以外のことも勉強するために利用するところだからだよ」
と、軽く<ホラ>も込みで説明してやった。すると羅美は、
「あ、そうか! 通学時間とか体育の授業とか学活とかの時間も勉強したいってことか!!」
自分なりに解釈して納得したようだった。
「まあ、そういうことだ」
実際に通信制の高校を利用してる奴のどれだけがそんな理由でやってるのかは知らん。現実問題としてはそうじゃない奴の方が多いのかもしれん。けど、別にいいじゃないか。どんな理由だろうと。人にはそれぞれ事情ってもんがあるんだ。
他所様の事情を考慮しない奴は、自分の事情も考慮してもらえると思うな。
俺はただ、羅美のために行動するだけだ。
「羅美が妊娠してることを知ったら、今の学校の連中がどんな目でお前を見るか想像くらいつくんじゃないか? でも、家で勉強してる分には、そんなことを気にする必要もない。一応、学校に行かなきゃいけない時もあるが、まあそれも、羅美のことをそんなに気にする奴もいないと思うぞ。もしかしたら他にも妊娠中のもいたりするかもしれないしな」
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