高校を卒業
『だから俺は羅美を許す。羅美の尻拭いの手伝いをする。『こうするんだ』ってのを実際の行動で示す。仮にも羅美の倍以上の人生経験を積んでるからな』
そうきっぱりと告げた俺を見て、栗原はわずかに唇の端を釣り上げた。間違いなく笑ったのを俺は確かに見た。すると栗原も、
「それは大変に素晴らしい心掛けです。古隈さんに羅美さんの保護をお願いした前任者の判断は正しかったようですね。では、こちらとしても可能な限りのサポートを再度お約束します」
と告げた後、改めて姿勢を正し、俺を真っ直ぐに見詰めてくる。
「差し当たって、羅美さんの今後の学業についてですが、生徒が妊娠し、そのまま通うことを学校側はいい顔をしないでしょう。そのようなことで生徒を差別することはもちろん許されないものの、正直なところそれは<建前>でしかないというのも事実ではあります。私の立場でこれを申し上げるのは本来なら憚られることですが、古隈さんならご理解いただけると思いますので率直に申し上げますが、おそらく、学校側は十分なサポートを行ってはくれないでしょうね。元よりそれができる体制が整っていないのは事実です。学校にとっては自分達の言いなりになる生徒だけを相手したいのであって、自分達の思う基準に外れた生徒には出て行ってもらいたいというのが本音でしょう。
古隈さんはこの点について、どうお考えでしょうか?」
そんなシビアな問い掛けにも、俺は、
「そのくらいのことは俺も想定済みだ。自分が通ってた学校のことを思っても簡単に想像はつく。だから羅美には、通信制の高校に転入してもらおうと思ってる。学費は高くつくだろうが、別に構わない。俺が負担する」
きっぱりと答えさせてもらった。
『そんなことできるわけない!』
とか、
『そんなのでまともな人生が歩めるわけない!』
とか言う奴もいるだろうが、自分の狭い料簡で他所様の人生にケチをつける奴の戯言なぞいちいち気にしてられるか。
「……」
唖然とした様子で俺を見詰める羅美に、
「せっかくだから高校だけは卒業しとけ。でも、『学校に通う』ことだけが高校生活じゃない。自宅で学習する通信制の高校というのもあるんだよ。それだってしっかり高校を卒業したことにできる。<高卒>になるんだ。
なるほど偏差値の高いお利口な高校を卒業したことに比べりゃ鼻で笑われることもあるだろうが、それは今お前が通ってる高校も同じだ。地元企業には、『あの高校の卒業生は採用するな』ってえ裏マニュアルを作ってるところもあるらしいからな」
はっきり言ってやったのだっら。
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