第68話 コカトリアン

~ コカトリアン ~


 コカトリアンは、鶏の頭に蛇の鱗を纏った身体を持っている魔族である。コカトリアンと視線を合わせた獲物は硬直して動けなくなってしまう。その後、コカトリアンは身体から発する毒気によって獲物に止めを刺すのだ。


 その性質はゴブリンと並ぶ残忍さを持つことで知られている。個体数としてはゴブリンと比較すると少ないため、偶然に出くわす確率は低い。


 だが出くわしたものには、まず間違いなく死が待っていることから、冒険者たちからはゴブリン以上に恐れられている。


 コカトリアンのリーダーであるバシリコックはあの憎いドラゴンの魔力拘束が解かれたとき歓喜の声を上げた。


 他の仲間たちもバシリコックと同じ気持ちを共有していたらしく、彼らも歓声を挙げてドラゴンの隷属から解放されたことを喜んでいた。


 二十年前、その身から発する毒によって暗き森の半分を枯らし、そこに生きる命を奪い続けていたコカトリアンたちの前にドラゴンは現れた。


 忌々しいことに、このドラゴンにはコカトリアンたちの毒は一切効果がなく、それどころかコカトリアンたちはドラゴンの魔力に依って隷属させられてしまった。 


 そこからコカトリアンたちはただひたすらに面従腹背の日々を送ってきた。ドラゴンは眷属に対してあまりとやかく口出しをすることはなかったが、それでもコカトリアンたちが森を毒沼に変えていくことについては制限を設けた。


 ある日、ドラゴンはバシリコックを呼び出してコカトリアンたちが住みたい場所を尋ねた。ドラゴンはバシリコックの希望を叶え、コカトリアンたちは森の深い谷間の地に住むことができた。


 しかし、忌々しいドラゴンはコカトリアンがその地を離れることを許さなかったのだ。森の谷間にある全ての生命は、すぐにコカトリアンの毒に侵されて死に絶えてしまった。


 コカトリアンたちは、外に出たくてもドラゴンの命令に逆らうことはできない。彼らは森の深い谷間に留まるしかできなかった。外から獲物がのこのこと谷間に来るのを待つしかできなくなってしまった。

 

 しかし、谷間にコカトリアンの毒と瘴気が溜まるようになると、何物もそこに訪れることはなくなった。


 獲物を得ることができなくなったコカトリアンたちは動くことを止め、自らの身体を硬直化して生命活動を最小限に切り替えた。


 毒気が減った谷間には、道に迷った旅人が入り込んでしまうことがある。旅人は森を彷徨っているうちにコカトリスの石像を見つけることになるだろう。そして、旅人が谷間から出ることは二度とない。


 バシリコックの下にドラゴンの眷属である風の精霊がやってきて、ドラゴンがその力のすべてを失ってしまったことを伝える。


 バシリコックは鶏の頭に邪悪な表情を浮かべた。これでまた自由にやりたい放題毒を撒き散らし、あらゆるものに死をくれてやることができる。


 バシリコックからドラゴンの状況を聞いたコカトリアンたちの歓声が溢れる。


「まずは、あのクソトカゲに復讐だぁぁぁ!」

「「「「ごけぇぇぇぇぇぇえ」」」」


 深き森の谷間にコカトリアンたちの鬨の声が響いた。




 ~ 幼女化ビーム ~


(ぴろろん! 『 幼女化ビームの強化 』を達成しました)


 ココロチンのメッセージが聞こえる。


(報酬 EON1万ポイントを受け取りました。また【幼女化】に効果音プラグインが導入されました)


 このクエストは受注しただけで達成となった。というのも、これは【幼女化ビーム】が使えるようになるスキルレベル5から6にアップするだけで完了するものだ。


 既に俺の【幼女化】スキルレベルは6になっていたので、受注した時点で達成となった。


(効果音プラグインって?)


(【幼女化】や【幼女化ビーム】を発動した際に効果音を付けることができるようになります)


(へぇ……それだけ?)


(それだけですね)


(なんというか……俺のスキルって微妙だよね)


 俺はがっくりと肩を落とした。


 肩を落としてから1時間後 ――


「やふぅぅぅぅぅぅぅ!」


 びぃぃぃぃぃぃぃぃ!


 俺は村から離れた森の中で、両手を交差させて【幼女化ビーム】を放っていた。


「おぉぉ、超人の光線っぽい! 音が入るとこんなにテンションがあがるとは! 効果音プラグインさいこー!」


 しかもスキル開発部の皆さんによってアップグレードされた【幼女化ビーム】はかなりいい感じに「光線」していた。


 強くイメージすることで、光はギザギザではなくまっすぐ直進するようになっていた。さらに意識を集中し続けると5秒くらいは光線を維持することができるのだ。


 スキル開発部の皆さんは【幼女化ビーム】の仕様から逸脱することのない範囲で、最高のカスタマイズを施してくれたのだ。


「ジョワッ!」


 びぃぃぃぃぃぃぃぃ!


「これって、光線出したまま一回転すれば【幼女化】の範囲攻撃できるな!」


「ワハハハハ!」


 びぃぃぃぃぃぃぃぃ!


「楽しぃぃぃぃ!」


 びぃぃぃぃぃぃぃぃ!


 俺は誰かに【幼女化ビーム】を試したくてウズウズが抑えきれなくなり始めていた。


 ゲームで強い武器とか入手したら試したくてウズウズするだろ? あの興奮状態が今の俺を支配している。

 

 【幼女化】を嫌う連中にとって、今の俺は超危険な存在になっていた。



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