7
隆二の大きな手が僕の頭を優しく包み込むようにぎゅっと抱きしめてくれた。
なんであんな奴のこと。
その夜はラブホテルにいるにも関わらず僕らは何もなかった。
ただ真っ暗にした部屋の上にまるでプラネタリウムみたいに星がキラキラ見えて、僕はそれをみながら彼の温もりに包まれているだけで幸せだった。
翌朝比較的早い時間に僕らはホテルを後にすると、近くの喫茶店で朝食を食べ、隆二の自宅へ戻った。
玄関に姉の靴がなかった。僕らは顔を見合わせると、部屋にそっと入る。電話が留守録になっている。
隆二が留守電を聞くと可憐からだった。
酔っ払った可憐の声が入っていた。昔の知り合いに会って彼女の部屋で飲み明かす。そのまま仕事に行くから帰りは今日の夜になるそうだ。
「ふーよかった……外泊したのバレなかったね」
僕が汗を拭うと隆二がふっと微笑んだ。
「ほんとこんな姉だよ? なんでこんな姉になりたいの?」
と僕は昨日の夜隆二が言っていた事を思い出して、尋ねた。
隆二はしばらく無言で上着を脱ぐと、僕に何か言いたげに少しだけ口を開く。
瞳を閉じ、しばらく考え事をしていると、そっと僕に囁いた。
「君のお姉さんは僕に託してくれたんだ。いついうべきか悩んでいたんだけど、お姉さんがもし昨夜から僕らに時間をくれたのなら、やはり早くに伝えたほうがいいと思った。聞いてくれるか?」
今日は僕らは予定がない。だから昨日芝居を見る予定を入れていた。
本来ならばみんながせっかく集まったのだから飲み会で思う存分飲めるかと思ったのだけど、それは僕らのちょっとしたトラブルでなくなってしまった。
置いてきたみんなに悪いことしちゃったなぁ。
それより僕は姉の事が気になった。
なんだか僕の中で心の準備みたいなのが必要な気がして。
そわそわしてしまう。
なんだか可憐も隆二もあのトランプの時に見せた可憐の背中の傷の事から様子が変で。
それを隆二ははっきりさせてくれるんだと思うと、たぶん軽い話ではないような気がした。
ふっかりとソファに腰掛ける。目の前にお茶とお菓子を何気なく置き、僕たちは向かい合って座った。
「話ってやっぱりこの間の可憐の背中の傷のこと?」
僕が恐る恐る尋ねると、隆二は頷いた。
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