第32話 癒しって

 半年ぶりに髪を切った。

 いつもの美容師。

 自由人な女性である。

「BGM、ヒーリング系にしたの?」

「はい、奥様方に好評なんです」

「へぇ~」

 確かにシャンプーして頭皮マッサージしてもらってデトックス…落ち着く。

「よく解らんけど、宇宙でスーパーゼウス的な人が両手を広げている…そんな風景が脳内再生された」

「寝ちゃう人もいるんですよ」

「なんか解るわ…僕も昔、ヒーリングミュージック凝ったことあるわ」


 そう…『エニグマ』とかいうCDを買ってハマったのだ。

 しかし…CDショップで必死にCDを漁る…そんな自分に疲れたのだ。

 当たり外れは博打なのだ、ストレスも感じる。


「癒しを求めて必死になるって…間違ってるんじゃないだろうか?」

 そしてマイブームは去ったのである。


 美容室に並ぶ『酒』の雑誌…

「酒ばっかだな…」

「…そういえばそうですね…毎日飲んでる、ワタシ…」


『癒し』ってなんだろう?

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