絶対防御の力・ダークシールド

「ま、まてスコル」

「いえ、ラスティさん。これは彼を止める為です。苦しんでいる民を守るためなら、わたしは、相手が聖者であろうと聖なる力を振るいます。大丈夫です、止めるだけですから」


 そこまでの覚悟か……!

 けど、止めると言っているので、あくまで身を封じる程度のはず。スコルの言葉を信じよう。


 俺はうなずいてスコルに任せた。

 聖属性魔法のホーリークロスを放ち、それがトルクァートに衝突しようとした――が。

 見えない壁のようなものに、さえぎられてしまった。な、なんだありゃ……。

 まるでエドゥのソウルリフレクターのような防御魔法スキルだったぞ。


「言ったでしょう、私は“聖者”であると」

「……そ、そんな」

「そちらから攻撃した以上、これは国家への攻撃と同義。スコル、あなたを聖女として認めるわけにはいきません。聖女の位を剥奪し、貴女をボロディンから追放します」


 違う、スコルは民の為に、この国の為にトルクァートを止めようとしたんだ。なのに。


「この国がどうなってもいいのか!」

「何度言わせるのです。強者だけが生き残ればいい」

「よく分かった」

「それは理解があって助かります」

「そうじゃねぇ! トルクァート、お前が歪んでいるってことがな!」


 ゲイルチュールを手にし、俺はトルクァートに向けた。


「この私に歯向かう気ですか」

「そうだ! お前は聖者ではない」

「なら、どうします? この私を倒しますか!?」

「……ああ、お前をぶっ倒してやる!!」


 一気に加速して、俺はトルクァートの頭上にゲイルチュールの穂先を振り下ろす。

 しかし、見えない壁に阻まれた。

 また防御魔法か!


「ふふ……無駄ですよ。我が絶対防御の力は無敵。このダークシールドを破ることなど不可能なのです」


 ダークシールドだって?

 まるで闇の力みたいなネーミングだな。


「なら、閉じ込めるしかないよな! 無人島開発スキルで檻を作る!」


 以前、殺人ギルドたちを捕らえた時のように俺は鉄檻を生成していく。これなら逃げられない。


「……! な、なんですか、この妙なスキルは……!」


 さすがのトルクァートも俺の無人島開発スキルには驚いていた。そうだろうな、このスキルは俺だけのユニークスキル。


 鉄の棒がトルクァートを囲っていく。


 いくら防御が固いとはいえ、その上から檻を張られてしまっては逃げ場を失う。これなら……!



「これで最後だ!」

「さすがに驚きました、ラスティさん。ですがね、檻は所詮は鉄製。この程度なら破壊可能なんですよ」


「なに!?」



 トルクァートが邪悪な黒い光を解放した。

 それは周囲に広がり、鉄をバラバラに破壊した。……ウソだろ!


 俺はスコルを守りながらも後退していく。


 野郎、なにをしやがった。

 というか、あれが“聖者”だって?


 ふざけるな!


 あれはどう見たって聖者ではない。

 闇の力・・・を操る者・・・・だ。



「上手く避けたようですね」

「当たり前だ。それより、トルクァート、その力はなんだ!!」

「聖者の力ですよ。素晴らしいでしょう?」

「嘘つけ。お前は詐欺師ペテンだ。エルフたちを騙し、この国を乗っ取ろうとしているんだな!」



「今更気づいてももう遅い」



 なにかを放つトルクァート。

 その直後、セインが駆けつけてきた。


「どうしたんですか、ラスティ様!」

「セイン、来るな!!」

「え……」


 だが、遅かった。

 トルクァートがなにかを放ち、それが俺とスコル、そしてセインを包んだ。


 くそ、なんだこれは……!


 せめてスコルとセインだけでも逃がすしか……!

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