開国まであと三日
早々にドムを回収し、ロープでぐるぐる巻きに。
城の地下に作った牢へ閉じ込めた。
その際、テオドールに乗り移ったという『ヤスツナ』と話が出来た。
「お前がヤスツナか。テオドールの体を返せ」
「断る。こいつは人質だからな」
「そうか、必ず追い出してやる。テオドールは、俺の大切な仲間だからな」
「ほう、やれるものなら……やってみな!」
いちいち嫌味な奴だ。
いつかぶん殴る。
「――で、お前は神聖王国ガブリエルの幹部なのか」
「そうだとも。ラスティ、お前に挨拶しに来たんだがな」
「なんだと? なんで俺を知っている」
「ニールセン様から聞いたのさ。お前が偽物の第三皇子だってな」
「だからどうした。俺に恨みでもあるのか」
「それもあるだろうな。まあ、どのみち周辺国はおしまいだ。ドヴォルザーク帝国もグラズノフ共和国も我々の占領下となるのだ」
そうか、支配地域を拡大する気だな。
とはいえ、帝国も共和国もかなりの戦力を持つし、そう簡単には落とせない。それは、俺が第三皇子だったときに感じていたことでもある。
「それじゃ、神聖王国ガブリエルは世界の敵ってわけだな」
「あぁ、まずはこの島を狙うかもな。ラスティ、お前はやりすぎた。帝国や共和国を掻き乱し、連合国を崩壊させた。その罪は大きいぞ!!」
「馬鹿。連合国を滅ぼしたのは元皇帝陛下だ。俺じゃねえ」
「関係ないさ。全ての罪はお前にあるのだから」
「話にならんな。もういい、お前と話すだけ無駄のようだ」
「ラスティ!! 貴様はきっと地獄を見る!! ニールセン様の恐ろしさを知らぬのだ!!」
「ああ、知らねえよ。知りたくもねえ」
俺はそう吐き捨て――牢を出た。
* * *
城の方へ出て今後のプランを練る。
テオドールの体はしばらく、ヤスツナに乗っ取られたままだろう。牢に閉じ込めておくしかない。
みんなが待っているであろう大広間へ向かう。
城の二階へ入ると、そこには既にみんなの姿があった。各々着席し、俺に注目する。
「みんな、よくぞ集まってくれた。改めて、ルドミラ、エドゥ、ハヴァマールにお礼を申し上げたい。島を守ってくれてありがとう」
感謝を述べると、三人とも照れくさそうにしていた。ルドミラまで、あんな顔を真っ赤にして照れるとは珍しいこともある。
そのルドミラが頬を掻きながら言った。
「ラスティくん、テオドールなんですが……」
「ああ、アイツはヤスツナに体を乗っ取られてしまっているし、神聖王国ガブリエルの特殊なスキルのせいとエドゥが言っていたな」
そのエドゥは、ちょっと悔しそうに
「そうなんです。見たことも聞いたこともないようなスキルですね」
「まあ、これから移住者も増えるし、もしかしたら特殊スキルについて詳しいヤツがいるかもしれない」
「そうでした。ところで、ラスティ様。その移住者ってどれくらい来るんです?」
「うん、実は三万人の予定がある」
「「「さ、三万人!?」」」
留守番組のルドミラ、エドゥ、ハヴァマールが驚いて声をあげる。そうだよな、いきなり三万人とかビビるよな。
「それほど国に不満を持つ者が多いのさ」
事の重大さにルドミラが
「……なるほどですね。ドヴォルザーク帝国の貴族は
「さすが元騎士団長ルドミラ、詳しいな」
「あちらこちら遠征していましたから。ああ、そういえば新騎士団長とお会いしましたか?」
「ああ……。アルフレッドの兄、ルーシャス・スナイダーが着任した」
「やはり、ルーシャス卿でありましたか」
「なんだ知っていたのか」
「ええ、秘密裏に――ですが。兄弟であることをひた隠しにしておりました。恐らく、こうなることを予期していたのではないかと」
予期って、そんなまさか。
アルフレッドが死ぬとでも思っていたのか? それとも――まさか、世界聖書に記されているとでも……。
そんなことを思っていると、ハヴァマールが驚いていた。
「アルフレッドに兄がいたのか!」
「ハヴァマールでも知らなかったのか」
「ああ、兄上。余はてっきり――ああ、いや……」
ん?
なんだか歯切れが悪いな。
「どうした」
「いや、なんでもないのだ。それより、三万人の移住者とは、さすが兄上なのだ」
「それほどもないさ。とはいえ、直ぐに全員を受け入れるわけではない。厳重な審査、面接をしてちょっとずつ迎え入れていく。そうしないと犯罪者とか紛れていたら治安の悪化に繋がるし」
「ついに『開国』だな?」
「そうだな。移住者と迎え入れると同時に“国”としてオープンにする。無人島開発スキルのレベルを『1000』にするぞ」
「おぉ! これでついに無人島ではなく、正式な国として動けるわけだな」
ハヴァマールの言う通り、ついに『国』となる。
その日は――三日後だ。
三日後には“島国ラルゴ”として世界の一部になるんだ。
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