第4話 1番目の仲間:サラ 2/2

「ぎゃーっ!」


叫び声をあげて、女の子がのたうち回る。


「大丈夫っ?!」


慌てて駆け寄ると、女の子は顔をしかめて舌打ちし、左手の人差し指を睨んでいた。

そこにはめられていたのは、大きくて綺麗な石のついた指輪。


「こんな機能まで持たせやがって」

「機能?この指輪に?」

「そ。これ、うちのクソバ・・・・いや、お母さんがあたしにくれた唯一の装備品。てっきり、位置情報の把握だけだと思ってたんだけど・・・・」

「なんか、怖いお母さんだね?」

「うん。あんたもう会ってるでしょ、あたしのお母さんに」

「え?会ってる訳無い・・・・」

「いや、会ってるし。あんたにこのゲーム渡した人。あれ、あたしのお母さん」


何秒間か、僕は女の子と見つめ合った。


なに、どういうこと?

あの、見た事も無いような綺麗な女の人が、この子のお母さん?

言われてみれば、確かにあの女の人とこの子、似てるような気もするけど。

そのお母さんが、この子に装備を・・・・くれた??

え?・・・・え?

もう、僕の頭では情報が処理し切れないっ!


「えーーーーっ!」

「うるさい。声でかい」

「あっ、ごめん・・・・」


はぁっ、と溜め息を吐いて女の子は言った。


「あたしの名前は、サラ。一応、このゲームの中では、あんたのナビゲーターみたいなポジションね。だから、特に使える能力なんて無いわよ。戦闘パーティにも入らないし。でも、あんたがこのゲームをクリアしないと、あたし一生、このゲームから出られないの。あのクソバ・・・・お母さんのせいで。だから悪いけど、死んでもクリアしてね。ナビだけはちゃんとするから」

「えっ・・・・と、僕はいったい・・・・」

「あんたは、ユーキ。このゲームの主人公。これから他の4人の仲間と合流して、この世界を苦しめているラスボスを倒しに行くっていう設定。一応、『勇者』ってとこね。・・・・こんなヘタレが勇者のゲームなんて、あたし、プレイしたことないけど」


なんか。

少しだけ、状況が分かってきた。

僕はきっと、あの【勇気が出せるようになるかもしれないゲーム】をプレイし始めたとたんに、ゲームの中に取り込まれてしまったんだ。

というか、【勇気が出せるようになるかもしれないゲーム】はもともと、そういう設定だったのかもしれない。

そして、ゲームの中での僕は、ユーキ。一応、『勇者』。

この子は、ゲームナビのサラ。ただのナビ。でも、このゲームをくれたの女の人の娘だから、もしかしたら何か重要な情報を知っているかもしれない。

サラは僕がこのゲームをクリアしないと、一生このゲームから出られないって言ってたけど・・・・ラスボスなんて、僕、倒せるのかなぁ?

とりあえずは頑張って強い仲間を見つけるしか、ないのかな。


「他になんか知りたいこと、ある?」


サラの言葉に、僕は言った。


「あの、さ。この服、なんとかならないかな・・・・さっきからちょっと、寒くて」

「どうぐ屋で買うしか無いでしょ」

「えっと、お金は・・・・」

「モンスター倒して稼ぐしか無いでしょ」

「え?誰が?」

「あんたに決まってるでしょっ!」


イライラしたようにサラは言うけど。


僕、あんまりゲームとか、したこと無いんだってばっ!

それにっ!

武器も何にも無いのに、モンスターなんて倒せる訳ないじゃないっ!

どうしようっ、どうしたらいいのっ?!


「あ、とりあえずそこらへんのツボとか割って見たら?それから、タンスの引き出し開けてみるとか」

「え?ここ、僕の家なの?」

「いや、通りすがりの空き家」

「ええっ?!ダメじゃん、そんな勝手に・・・・」

「いいからやれって。それともなに?文無し丸腰のままゲームクリアできるとか思ってる訳?」


・・・・サラのお母さんは、あの綺麗な女の人は、すごく優しそうだったのに。

サラはちょっと、怖い。

ゲームに出て来る女の子って、みんなこんなに怖い子なの?


ビビッて泣きそうになりながら、僕はサラに言われた通り、すぐ近くにあったツボを割ってみた。

すると。

そこから、このゲームの世界のお金らしきものが出て来た。


「はい、お金ゲット」


サラが満足したように笑う。

続いて、タンスの引き出しを開けてみると。

鍋やら鍋の蓋やらこん棒やら古びた剣やら、一通りの装備(?)が出てきた。


「ね、だから言ったでしょ?」

「でもこれ、他の人の・・・・」

「いちいちうるさい。気にするな」


ギロリとサラに睨まれ、僕は体を小さくした。


サラ、怖いよ・・・・

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