#40.5 部長の焦りと失敗
時は少し遡り・・・
不味いことになりました。
スズちゃんに続き、ミカンちゃんとレモンちゃんの二人掛かりでも、ノリオくんに取り入りハーレムに入り込むことが出来なかった。
私たち文芸部は、顧問の火野先生がノリオくんによって堕とされた後、緊急の話し合いを行った。
「このまま行くと、更に被害が広がる可能性がありますね」
「う~ん、被害っていうかー、先生凄く嬉しそうじゃなかった? このままほおっておいても良い気がするけどー」
「でも水元先輩って、幼馴染さんとも付き合ってるんすよね?」
「3年にも付き合ってる人居るって話もありましたよね?」
「そうです。 火野先生ともこのままお付き合いするとなると、3股の可能性が高くなってきました。 そんなの許されないです!女の敵じゃないですか!」
「でもー、お互いそれで納得してるならー」
「スズちゃん!甘いです! そんな状況のままだと、もし私と・・・ハっ!?」
「どうしたんすか、部長?」
「顔が赤いっすよ?」
「な、なんでもないです!」
「それでー、フジコちゃんはどうするつもりなの~?」
「そ、それはね・・・・」
実際問題、危機感を感じていながらも、有効な手立てが無いのが実情だ。
彼にラブコメ症候群のことをストレートに話して、治療に専念してもらうか・・・いえ、ノリオくんがそう簡単に「はい、わかりました。治療受けます」と言うとは思えない。
ならどうすれば? わたしたちに何が出来る?
「・・・いっそのこと、私たちがノリオくんのハーレムのヒロインになって、内側からコントロール出来ないかな?」
「えー」
「それ、ちょっと面白そうっすね!」
「水元先輩、モテないだろうから誰でも良さそうだし?」
「あくまで彼女になったフリです! ホレさせてしまえば、私たちの言うことも聞くんじゃないかしら?」
「う~ん、そんなにチョロい人には見えないけどー」
「スズちゃんなら大丈夫! 男子生徒の人気も高いし、ノリオくんならきっとイチコロです!」
「そーっすよ!癒し系美少女の本領発揮っすよ!」
「そうそう!発揮っすよ!」
「じゃー、やるだけやってみるけどー」
そして結果は、惨敗。
「男子にあそこまで無碍に相手にされなかったの、初めてかも・・・」
スズちゃんにはスマホを通話状態のままにしてもらって、二人の会話を聞いていたけど、明らかに普段のノリオくんと様子が違っていた。 二言目には甘い言葉で女の子を口説いていたあの自称主人公が、一言も口説き文句を言わなかったのだ。
言い知れぬ不安を感じたが、このまま引き下がる訳には行かない。
「今度はミカンちゃん&レモンちゃんでリベンジですよ!」
「らじゃー!」
「らじゃー!」
そして、またしても結果は惨敗。
「いやアレは手強いっす」
「水元先輩、女の子興味ないじゃないっすか?」
「いやいやいや、そんなはず無いですよ! 火野先生とのやりとりだって間近に見たでしょ!?」
「そうっすけど・・・あそこまで男子に冷たくされたの、初めてっす」
「私ら二人に迫られたら、大抵の男子なら鼻の下伸ばして、デレデレになるんすけど・・・」
文芸部が誇る3人の美少女でも暖簾に腕押しとは・・・・
「こうなったら私が行きます! 少なくとも私はノリオくんからヒロインだと認定されていますからね!」
ところがどっこい、週が明けて月曜日の朝
いつも以上にノリオくんに愛想よく接しようと意気込んでいると
「おはようございます、フジコさん。 ・・・・・」
あれ?
いつもの口説き文句が無い???
どういうこと!?
ノリオくんは、もう私を口説く気が無い???
私から話しかければそれなりに答えてくれるけど、以前と違い、ノリオくんからは話しかけてこなくなっている。
試しに、今日の部活の話題を振ってみると
「他の3人がお休みなのでノリオくんと私の二人きりの予定なんです」
「あ、じゃあ僕も休みます。 今日は部活自体お休みにしましょう」
え!?
折角、メインヒロイン候補の私と二人きりになれるチャンスだと言うのに、自分から休むって!!!
どういうことなの!?
まさか、私にはもう興味を無くしてる???
言い知れぬ不安に苛まれながらも、何とか部活には来てもらう様に説得するも、先生が来てHRが始まってしまいタイムオーバー。
不安を抱えたままお昼休憩になると、ノリオくんはいつもの様に土田さんと木田先輩の3人で、楽しそうにはしゃぎながらお弁当を食べている。
あの二人とはいつもと同じように接しているのに、私にだけ冷たくなったの・・・?
なぜ?
私はメインヒロイン候補じゃなかったの?
その私と二人きりになるのを避けようとするだなんて、一体何が起きているの???
結局、何も進展しないまま放課後になり、私は藁にも縋る思いでノリオくんに声を掛けた。
「ノリオくん! 帰っちゃうん、ですか・・・?」
「いえ、文芸部の教室に向かおうと」
はぁ~~~よかったぁ
何とか引き留める事が出来た様だ。
でもココからが本番よ。
何としてでもノリオくんのヒロインとしてハーレムの一員になって、見事にコントロールしてみせるわ。
そして私は、いきなり強硬手段に出た。
ノリオくんの横に座り、切なげな表情で彼に抱き着く。
私だって、容姿には多少の自信がある。
ノリオくんがメインヒロイン候補と言うくらいだしね。
さぁ、コレでどう?
もうノリオくんは私にメロメロだよね。
ところが・・・
この作戦は見事に失敗。
しかも、ただ失敗しただけでなく、ノリオくんの怒りに触れてしまった。
ノリオくんは、ラブコメ症候群のことを知っていた。
しかも、それは私の妄想だと決めつけて。
何より、私のことを「ヒロインじゃなかった」と言い切ったこと。
そして、非常に不味いことに、ここ最近の私たちのアプローチを、面白がって揶揄っていると勘違いされてしまったこと。
面白がってなんていない。
揶揄ってなんていない。
でも、ノリオくんに拒絶され嫌われることが、こんなにも辛いだなんて・・・
1年の頃からずっとノリオくんを見続けて来たのに、今までこんなことは無かった。 1度の失敗で諦めるなんて・・・・だって私はノリオくんのことを、ずっとす・・・・ハッ!?
教室を出て行くノリオくんが最後に言った言葉。
「フジコさんほどメインヒロインに相応しい女性は居ないと思ったんだがな。 残念だぜ」
私に対する失望と拒絶。
一人教室に残された私はスズちゃんたちが駆け付けるまでの間、失意の中でノリオくんの言葉がずっとリフレインしていた。
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