決勝進出 3

 準決勝ではあるものの、俺たちの決勝の相手はあっさり決まってしまった。


 実況

・第3マッチの勝者! STRADA! これにより決勝戦のカードはODDS&ENDSvsSTRADAとなりました。なんと第1試合同様3連勝でのストレート勝ち! 両者ともこの日本一を争うトップレベルでの戦いで、己の強さを証明しました。いかがですか大柳さん


 解説

・なに一つ危なげなく、自分たちのフィールド上で戦い抜きましたよね。なんというか、ASPIRATION WARRIORSも対策はしてきたんでしょうが、一切通用しなかった、という印象です。第1試合の方は、接戦の末の3連勝でしたが、こちらは圧勝の必然的3連勝ででしたね


 モニター越しで聞く、解説実況の声は、会場で聞くよりも轟くような重厚感は無いものの、勢いを感じられるものだった。

 それにしても、勝ち上がって来たのは、あいつらのいるチームだった。


 実況

・それにしても、KARUMA選手とショーター選手の2名は凄いですね。命中率8割を誇るスナイパーは、憧れですよね


 解説

・そうですね。確かに彼らの腕は相当ですよ。だけど、前衛にいる二名が上手く射線へ誘導していますからね。相当なセットアップ練習をしていることが伺えますよね


「なんというか、盾と矛のようなチームだったけど、こんなにも差があるなんてな」


 横で対戦を見ていた、ニシが言う。ニシの言う通り、視聴していた多くの人がこの試合の結果がどうなるか気になっていただろう。

 近接戦で一気に決め切るのが、今のフォージの最強戦術である。その中で盾とスナイパーを積んでいる俺達も、かなり変わり種ではあった。しかし、それ以上にスナイパーを二枚積むことは、今までどのチームもしてこなかったことだ。

 理由は明白。近距離でほとんどなにも出来ないからだ。とはいうものの、上手いプレイヤーは近くても当てる。ニシのように、ヘッショを当てれれば、普通に勝負が出来るが、やはり連射武器の方が安定性に勝る。


「いや、見終われば力量が違ったとしか言いようが無いが、それでも……な」


 なんとも微妙な顔をしてテツが言う。テツ自身アタッカーとして前線に出るのが、仕事だから、今の試合で自分に重なる部分があったのだろう。

 まるで歩兵が走って固定砲台を攻略するような絶望感だ。


「なんか、また違うゲームを見させられたような気分だ」


「ヴィクターさんの件もあるから、あまり褒めるようなことはしたくないけど……強いね」


 俺以上に悔しそうにしている、タイガだが試合が終わるとすぐにパソコンの前に行き、AIMを始めていた。


「フォージの鉄則を完全に無視してるな」


 戦略も構成も自由度が高いからこそ、こういった戦いも出来る。ある意味では、フォージの楽しさを教えてくれたのかもしれない。

 もっともあいつらに、そんな気持ちは無いだろうが。


「あいつらはもともとセンスはあったからな。ただただやる気と根気が無かった」


 それが一番必要なものであるはずなのに。いや、そうでなければいけないのにも関わらずだ。


「なんで、あそこまでの射撃センスがありながら、あんなことばかり言うんだろう」


「多分なにも無ければ、あの時にゲームなんて辞めていたと思う。だけど、俺の一件があったから、続けてそれでここまで来ちゃったからな」


 甘い蜜を吸い続けられることが、分かれば、わざわざ別の場所に移ろうとなんて考えもしないだろうからな。上手い生き方ではあるのだろう。


「でも、要注意なのはあの二人だけっぽいですね」


 会議を前向きに進めるために、タイガがそう言う。タイガからすればあの二人目の仇の相手を倒せば試合が決まる。とてもシンプルな話だ。


「というか、あの二人で完結してて、チームメンバーの2人は関係ないみたいな感じですよね」


「それ、態度にも出てるよな。作戦なんだろうけどほぼ前衛にいる二人は囮扱いだもの」


 ニシの指摘にテツが反応するが、まさにその通りだ。


「でも、それこそヴィクターさんが盾を構えて突撃すれば、簡単に攻略出来るんじゃね?」


「いや、恐らく見方を囮にさせて射線を作ってくるだろうな」


 それを無視するのもそうは簡単じゃないだろう。相手もタダの人形じゃない。ちゃんと意思を持って弾を撃ってくる。無防備な状態をさらせば、簡単にダウンさせられる。それを避けようとすると、後方からスナイパーの弾が飛んでくる。こうやって文字にすれば単純な話かもしれないが、自分がそれをやられるとなると、これほど厄介なことは無い。


「前衛の二人も、信頼してるのか、もはやなにも考えていないのか分かんないですけど、本当に動きに雑念が無い」


 スナイパーが2人いるって思いのほか厄介なんだな。一人ならまだ何とかしようもあったのだけれども。


「大丈夫! 俺達にはチームワークがあるから!」


 テツが話の腰を折るかのように、大きな声で出してそう言った。


「ほらうちは全員が全員信頼し合ってるし、誰かがダメでも助け合うことが出来るから」


「「「え?」」」


 俺、タイガ、ニシの声が偶然揃った。


「俺泣いていいですか?」


 テツが、泣くのを必死に堪えるかのように、顔のシワを寄せる。

 別に3人で合わせらわけではないが、テツが何を言っているのか、理解できなかったのだ。


「まあ、冗談はさておき、どうあいつらの元にまでたどりつけるかが、ポイントだな」


「懐に入り込めば、後はこっちのもんだからな」


「ゆっくり時間をかけて待つ感じかな?」


「単純にその作戦だけだと、対策されているだろう。もう一個そこにプラスしないと」


「そうなると」


 みんなの意思と作戦が固まりつつある。




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