第18話 【パッキング】

そんなこんなで買い物は終わった。宿の借り部屋に沢山の品々が積まれている。

三人は買い忘れが無いかどうか一つ一つチェックしていく。

「火薬」

「あるよ。ダイナマイトが二本。足りる?」

「大丈夫だ。別にそれを使って戦争しようってわけじゃない」

アンナはダイナマイトを皮袋に入れ、ティアは紙にチェックマークをつける。

「槍も買ったし…」

結局それはアンナに買いに行かせた。彼女はたらたら文句を言っていたが、実はショッピングを楽しんでいたみたいだ。戻ってくるまで二時間ほど掛かったし、三本の槍には彼女のイニシャルが彫ってあった。きっと気に入ったのが見つかったのだろう。

「食料も買った。それにジロールも」

アンナはキノコが入った紙袋を開け、何個かをシューくんに投げて寄越した。彼は大喜びで、バクバクとあっという間に食べてしまった。

「変異歹って本当にそのキノコが好きなんだね」

「美味いし、体にいいんだ」

アンナは残りのキノコが入った袋をコートのポケットにしまった。ティアはまたチェックマークを書き込む。

「そういえばアンナ、お洋服も買ったんだねぇ。似合ってるよぉ」

似合ってるというより、以前とまるっきり同じだ。綺麗になっているので違うものだとは分かるが、言われなければクリーニングに出したのだと勘違いしてしまう。

「そうか? 似合うか?」

なのに彼女はなぜか赤面している。

(えっ、もしかしてどこか違うの?)

少年は凝視するが、違いなんてさっぱりわからない。きっとこういうのは女の子にしかわからないのだろう。乙女達の反感を食いたくなかったので何も言わないことにしておいた。


チェックも終わり、就寝までは自由時間となった。アンナは先にシャワーを浴び、今はティアが浴室を使っている。

自分の番まで暇なレイはシューくんとボールで遊んでいる。ベッドの方を見ると、アンナはタオルでその長い髪を乾かしながら本を読んでいた。

「それ何の本?」

「くだらない本さ。さっきフロントの婆さんに勧められたから借りた」

「何が書いてあるの?」

「街とかつくって環境破壊ばかりしていたら森羅万象を代表して龍が怒るぞ、みたいな内容だ。まぁよくある教訓的御伽噺だ。何一つ面白くもない」

「龍って?」

「なんか伝説上の生き物だと。爬虫類の親玉みたいな見た目をしていて人の言葉を話すらしい」

「ふ〜ん…」

「何のお話?」

ティアがあがってきた。シューくんは嬉しそうに彼女に駆け寄って頭を擦り付ける。

「別に。人間の想像力は豊かだねって話」

「そうなんだ」

「ほらレイもさっさと浴びてこい。私はぼちぼち寝るぞ。明日は早いからな」

「うん」

少年はタオルを持って浴室に入っていった。

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