第三話
こうしてあっという間に時間は流れ──。
「それではこちらでお待ち下さい」
「は、はい。ありがとうございます……」
「……」
神妙な面持ちでアリアはメイドのリアと共に王宮を訪れ、そして通された部屋でキュリオス王子を待っていた。
チラッと横に視線を向けると、そこには机があるのだが、なぜか豪華な装飾が施されている。
机一つをとって見てもとんでもない価値なのは分かるし、他にも机だけでなくアリアが座っているイスにも装飾が施されていて……正直とても肩身が狭い。
まぁ、当然「くつろぐ」なんて出来るはずもなく……。
ここに案内してくれた使用人の人も「ここでお待ちください」と優しく言ってくれたものの、あまりにも醸し出している雰囲気が上位貴族のそれで……。
そんな人が男爵家のアリア優しく声をかけてくれている事に感激しつつも……アリア自身。自分がこの場とにかくあまりにも場違いな気がして……全く落ち着かない様子だ。
「――お嬢様。少し落ち着かれてはどうですか」
「う、わっ。分かってはいるけど……」
そわそわと落ち着かずに辺りをキョロキョロと見渡すアリアに対し、リアは「どうしてそこまで落ち着いていられるの?」と聞きたくなるくらい落ち着いている。
「こういう場は『なるようになる』と思うしかありません。要するに慣れです。慣れ」
「……それって、慣れられなかったら諦めろって事?」
そう尋ねると、リアは「今の言葉を諦めか覚悟を決めたかを決めるのはあくまで自分自身ですので、ご自身で判断して頂けると……」といつもの口調で淡々と答える。
「……」
多分、彼女はここに来るまで相当な苦労をしてきたのだろう……そう思わせるほど、今の言葉には重い何かを感じる。
「でも、覚悟……か」
確かに、今の言葉はそのままアリアは当てはまるかも知れない。
そもそも今回のお茶会は前回の様に大規模なモノではなく、どうやらキュリオス王子がひそかに準備したモノだったらしい。
だからなのか、アリアがここにいる事を知っているのは王宮の中でもほんの一部の人間だけの様だ。
そりゃあ、王族の人間が男爵の令嬢と二人きりで会う……なんて話が広まれば色々なところから非難が出るのも仕方がないだろうとは思うが。
「てっきり他にも参加者がいると思っておりました」
「……そうね。私もそう思っていたわ」
最初に手紙を受け取った時はそう思っていたのだが、どうやらそれが「違う」という事をアリアは二回目の手紙で既に何となく察していた。
なぜなら、前回届いた手紙に「アリア本人」ではなく「アリアが貴族たちに取り囲まれていたけど、大丈夫だった?」といった内容が書かれていたからだ。
「はぁ。でも――まさか、見られていたなんてね」
多分「全て」をキュリオス王子に見られていたワケではないだろう。
大方考えられるのは「氷の様に固まった彼らや彼女たちを見た」という事と、その場から立ち去るアリアの姿を見たというところ……だろうか――。
確かに、その二つを見ていればアリアが何かを知っていると思われても仕方がない。
「はぁ」
アリアとしては「誰もいないと思っていたのに」と言いたいところだが、それ以上に周囲の確認を怠った自分に、ものすごく呆れた。
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