第44話 Fランクのカード集め

 おはようございますタイシです。


 今日も俺のベッドにはレッドピンクグリーンの三人が潜り込んでいる。

 右手にポヨポヨ、左太ももにポヨポヨ、左手にゴツゴツ、うんうん、だがそれがどうした! 今日は良い天気だし狩り日和だね。


 本当に世界は平和だ。


 ……。


 朝起きて何故かピンクにマイナスポイントを貰いつつ、朝ご飯の準備をしていく俺。


「今日から二日間よろしくな皆!」


 そう元気にお願いをしておく。

 俺がダンジョンに入れないFランクなので、王都の外周より少し遠い森に泊まり掛けで遠征に行く事になっている。


 うちのクランに雇い入れたアネゴちゃんは、基本的には孤児院にいるのでお屋敷は空けても問題ない。


 アネゴちゃんのお給料は、部屋代も食費もかからないので、一月で八百エルになったようだ。


 皆からのクラン運営徴収額でギリギリ払える額だね。

 これ以上雇うのなら、もっとクランの資金を増やさないといけないかな。


 俺はもっとお給料が高い方が良いと思ったが、後に続く子らを常識的な額にするには高すぎても駄目らしい。

 ブルー君がそう言うのだからそうなのだろう。


 頼りになるなぁ、うちのクランの副リーダー。


 今回の遠征のために俺の持ち出しで、クランの持ち物としてのお泊まり用の道具セットを購入した。

 諸々で二千エル、うん、スキルオーブも買ったし、残りが一万八千エルになっちゃったな。


 おっかしいなぁ、一時期は四十七万エルあったのに……。

 ……金は天下の回りもの! タイシ気にしない。

 では出発!


 荷物をいっぱい持ったポーターの俺と、完全装備な『四色戦隊』の皆で、いざ遠征です。


「怪我しないように慎重に行きましょう」

「タイシにトドメを譲るのよね? 手加減具合を間違えないようにしないとね……手足を切り落とせばいいかも?」

「槍だと手加減が難しいです……手足を全部貫くとかどうでしょうか?」

「ブンッブンッ」


 グリーンはメイスを振らないの! ここはまだ壁の内側だからね?


 伝えたい事は分かるけども! 後レッドとピンクの言葉だけを聞くとすごく怖い。

 出来ればちゃんとセリフの中に『魔物の』という言葉を入れて欲しいタイシです。


 ……。


 レッドのお父さんである、おっちゃん兵士のいる第四城壁の門を超え、街道を順調に進む俺達。

 時折、街道ですれ違ったり追い抜かれる馬車を尻目にどんどん先へと進む。


 目指すは隣の農業都市への街道の途中にある、馬車が休憩するための広場だ。

 そこを宿泊地に定めているので、まずはそこに向かう。


 その広場のすぐ近くに、林と小さな川がいくつも流れている地点が有り。

 動物や虫や植物もたくさんいるそこは、エサが豊富で繁殖するタイプの魔物も増えやすいとか。


 ……。


 街道を歩いている時も、たまに出る魔物は俺がトドメを刺していく。

 ピンクの槍を借りて遠目からトドメを刺していると……角ウサギカードゲットだぜ!


 やっぱ確率おかしいなこれ……。

 もっとたくさん倒さないと詳しい数字は出せないが、日本とはドロップ確率が違うのは確定だろ。


 今は召喚した角ウサギに、魔物のトドメを刺して貰っているので、俺は只のポーターだ。

 呼び出した角ウサギの愛らしさに女性陣がちょっと興奮していた。


 カードで召喚した角ウサギは、普段見かける角ウサギみたいに目がギラついてないんだよなぁ……。

 こう、目がキュルンっとしているというか……うーむ、語彙力がなくて説明できねぇ……。


 とにかく可愛いんだ。

 まぁ手加減されて死にかけの魔物に、自身の角で容赦なくトドメを刺しているので、角や毛皮が返り血で真っ赤なんですけどね……。


 そして順調に増えていくカードで角ウサギを順次召喚していて、すでに三号まで増えている。


 倒した数は八匹だけなのにな……ドロップ確率が日本とは違いすぎる。


 だがスキル持ちがいねぇのが残念だなぁ、今の所才能限界が二か三の角ウサギしかいないし。

 ソシャゲで言うならノーマルの雑魚カードって所だな。


 ……。


 お昼前にやっと街道脇にある広場にたどり着いた。

 なので早速とばかりに林方面に入っていくと、皆さすがに緊張しているようだ。


 グリーンが盾を装備して先頭を歩き、その少し左右斜め後ろの位置にレッドとピンク、そして俺が真ん中で後方にブルー君。

 ……お姫様ポジだな俺、そして俺の側には角ウサギ一号から三号がいる。


 さて、では本番の狩りだし、そろそろ俺の新スキルをお披露目だ!


 ココに相談をしたが、人気の低めな〈斧術〉でさえ二十万エル以上軽くするのだとかで、〈剣術〉は五十万を下回る事がないそうだ。


 そう考えるとレッドのスキル構成ってすごいよね?

 〈生活魔法〉のスキルオーブは千エルくらいなのに、戦闘系スキルは高いよなぁ……。


 お屋敷を買って資金も減っていたし、仕方ないので五万エルで買ったのは……。

 〈音楽魔法〉さんだ! じゃじゃーん。


 ……この魔法は人気がない。


 何故かというと、音楽を奏でる事でそれを聞いている味方にバフを掛ける魔法なのだが、狩り中に演奏をするのは大変とかで敬遠されている。


 それに演奏が下手だとファンブルしてバフ効果が出ないうえに、このスキル自体には演奏が上手くなる効果がないというね……。


 元々演奏の上手い吟遊詩人だったら使えるかもだが、戦う必要のない彼らはには〈演奏〉スキルとかの方が人気が出ますよね。

 ……街道で魔物に襲われる可能性のある旅する吟遊詩人とか、後はスキルを覚えた事で上がる基礎能力値目当ての人に買われるくらいなんだってさ。


 一応戦闘系スキルだから、そこそこ基礎能力も上がるので五万エルという事だった。


 そうして俺には日本産の演奏系スキルが盛り盛りにある!

 しかも、なんとこれ〈鼻歌〉でも発動する事が判明した!


 いえーっす! じゃいくぞー。


「ふふんふんふ~ん、ふんふふ~ん、ははんはんは~ん、はんはは~ん」


 俺の鼻歌を聞け~!


 これで味方に全能力値UP数%くらいだとか?

 いやまぁ人気のないスキルだから内容とか検証されてないっぽいんだが、スキルの熟練値を上げればもっとUP率よくなるだろうし、タイシ頑張る!


 ブルー君達は俺の支援鼻歌に感動して……。


「あのタイシさん、魔物が音に反応して遠くから無差別に寄ってくるのでやめて欲しいんですけど……」

「気が散るって前に言ったでしょタイシ! しかも今は手加減して戦っているんだから余計に危ないからやめなさい!」

「タイシさん、鼻歌は料理の時だけにしましょうね? タイシさん良い子だから聞いてくれますよね?」

「ふっ」


 全員に駄目だしされた……いやグリーンお前、今鼻で笑っただろ。


 一応スキルだと説明したけども、能力値数%UPと気が散るを天秤に掛けると、気が散るが勝つようだった……。


 くそぅ……俺の五万エル……シクシクシク。


 しょうがないので魔石を取り出すマシーンになる。

 何かの役に立つかと呼び出していたスキル持ちスライム君が、魔物の残骸を食べたそうにしている。

 いいよ食べて、泊まりがけで来ているので、今日のお肉は王都に持ち帰れないしね。


 ……。


 そうこうしているうちに角ウサギは八号まで増えた。


 一匹だけ〈脱兎〉のスキルを持っていたが、どんな内容なのかが分からんのでスキルを使って貰ったら、数秒だけ移動速度が上がる感じ?


 あー、敵に向かっていく時は使えないが、避けるか逃げる時用の瞬間バフかぁ……。


 おっけー、お前は適当にスキルを使って熟練度を稼いでろ。

 って〈脱兎〉は魔力を消費するようで、数回でへばっていた……。

 ああ……うん、魔力が満タンに回復したら一回使っとけ……。


 魔物のスキルはさすがに日本でも出回ってない奴があるよな、まぁ面白いからいいんだけどよ。


 ……。


 そして狩りを続ける事で増えていくカード達。

 スライムが三枚、ビックラッドも七枚、これはまぁ呼び出していない。

 スキルもない個体だったしな。


 ……。


 そしてついに今回の目的であるゴブリンに遭遇した。


 グリーンが棍棒を持つゴブリンと戦闘に入る。


 へー、角ウサギとかを相手にしている時は分からんかったけど、棍棒を上手く盾で捌いているグリーンの動きから〈盾術〉を持っているっぽいのが推察出来る。


 棍棒を使った攻撃を盾で完璧に受け流してからのメイスの一撃もえぐい。

 そういやグリーンのスキルを聞いておくのを忘れてたな。


 腕を折られて倒れたゴブリンの足も追撃のメイスで折られ。

 後は角ウサギ達がめった刺しにしてトドメを刺している。


 ……。


「お疲れグリーン、なぁ、お前のスキル構成って聞いてもいいか?」


 グリーンは頷き。


「〈光魔法〉〈鈍器術〉〈身体強化〉〈悪意感知〉〈盾術〉」


 そう答えた。


 レッド達はそれを聞いてびっくりしている。


「すっごいわね……いくつかは見ていて分かったけど、感知系まで持っているのね」

「頼もしいです、私も〈身体強化〉欲しいなぁ」

「僕はまだスキル二個なんですよね……」


 がっちがちの戦闘型僧侶じゃんか、隙がなさ過ぎてびびるわ。

 革鎧や盾もメイスもそこそこ良さげな物を使っているし、頼りになるわぁ。


 角ウサギのトドメによって倒されたゴブリンはカードにならんかった、残念。

 魔石だけ抜いておくか。


 ……。


「よし、状況に注意をしながらどんどん狩っていくぞー」


「「「おー」」」

「ぉ」


 そうして林の中を移動して、次々と襲い掛かってくる魔物を倒していく俺達。


 ……。


 ――


 狩りをする事数時間、日が落ちて来たので街道の休憩広場へと戻ってきた。


 広場の隅っこにささっと小さいテントを設置し、簡易的な竈を作り火を起こす。


 ここは王都からの距離的に、休憩はすれども泊まるような場所ではないらしく、他には誰もいなかった。


 俺は林からの帰りがけに倒したリトルボアの肉を処理して串焼きを、ピンクやグリーンは簡単なスープを作っている。

 レッドとブルー君は、拠点から見える範囲内で薪の調達をしてくれている。


 俺の場合調理に火は必要ないんだけど、皆の野営練習でもあるから焚火は設置している。

 火の熱で周囲も暖かくなるし……野営にキャンプファイヤーは大事だろう?


 そして皆でご飯だ。


 俺はそうして油断をしそうな時も、常に〈生活魔法〉で小さな光を出している。

 皆にもスキルの特性を教えてあるので、その光が消えたら……まぁ感知系スキルの代わりだね。


 使用された魔力の揺らぎを目標にする魔物もいるらしいので、何処でも使える技って訳ではなさそうだが。

 そんな魔物はもっと人のいない辺境にいるそうだしな。


 串焼きを食いながらワイワイと狩りの話をしているブルー君達、俺はそれを聞きながらもカードを確かめている。


 スライム六枚

 角ウサギ十一枚

 ビックラット二枚

 リトルボア一枚

 ゴブリン五枚

 バトルウルフ一枚だ


 ふーむ……途中でファングボアという、鋭い牙を持つ大き目のボアに遭遇してしまい。

 そいつは結構強い魔物なので、手加減なしで戦う事になり、俺は手持ちのカードをすべて召喚して囮にした。


 おかげで皆は無傷だったが、カードはそれなりに減ってしまったんだよね。

 ファングボアの牙ですくい上げるような一撃を食らったビックラットが、一撃で消えていったっけか……。


 日本と同じで、カードの魔物がやられると消えちゃうんだな……。


 他にもバトルコウモリとか、バトルスネイクとか、バトルスパイダーや、バトルバタフライなんかも倒しているのだが、倒した数が少なかったのかカードは出なかった。


 そしてドロップ確率なのだが、日本のアイテム関係のドロップ率に近いかなーと思う。

 やっぱりアイテム枠全部がカードドロップになっている説が有効だなこれ。


 あれ? スライムカードの一枚だけ絵の感じが違う……。


 うほ! 只のスライムじゃなくてアクアスライムになっているなこれ。

 ……全部普通のスライムだったはずだし、スキルに〈消化促進〉があるから、最初にゲットした奴か?


 今の格が三で才能限界が六になっていて〈バブルショット〉ってスキルが生えてる……。

 進化って奴か? 条件はまだ分からんが、格が才能限界に達したらなる?


 えっと他のカードは……。


 むう……格二で才能限界に到達している角ウサギカードがあった。

 そいつはスキルなしだったので、つまりスキル持ちは進化の可能性を秘めている?


 いや、まだ決めつけるのは早いか。


 他にスキルを持っているのは角ウサギの〈脱兎〉と、ゴブリンの〈悪食〉だけだな。

 角ウサギ達はトドメを刺させまくったから格が上がったとして、スキル使用経験値のみで格を才能限界まで上げてみたいな。

 ……くぅ……スキル持ちカードが足りない。


 検証も色々試したいけども、今はカードを集めて戦力を上げる事に集中するか。


 てーかさ、今俺がやっているのって、ソシャゲの星一キャラを育てるような物だよなぁ……まぁしょうがねぇんだけどよ。


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