第38話 公介への初依頼
「インドのダンジョンに?」
エマのスキル発表会見を見終わった後、深夜にやっていたこともあり寝不足だった公介。
その朝、福地副会長に呼ばれ協会本部に来ると最初の依頼を頼まれる。
「あぁそうだ。さっき説明した通り、インドは今ダンジョン爆発の危機に瀕していてね。カナダのように主要都市ではないにしろ、無視は出来ない」
インドの状況は理解したが、何故Dクラス開拓者の自分が出向く必要があるのか尋ねる。
「心配はない。別に君に他の開拓者達と一緒に最深部を目指せと言っている訳じゃないんだ」
流石に未成年にそんな危ないことはさせられないと言われ、安心する公介。
では依頼とは何か、
「君にはモンスターのアイテムを取ってきて欲しいんだよ。こっそりね」
そこのダンジョンは近隣住民が隠していたこともあり、ドロップ品が出回っていない。
さらにモンスターが象に似ているということは、本物の象牙のように価値の高いものがドロップする可能性があるというのが福地の予想。
しかしそういったアイテムが存在したとしてもドロップ率が低いことはまず間違いなく、見つかった時の避難を浴びるリスクに合わない理由から、そんなことを考える国はまずいない。
だが公介のスキルなら、そのリスクを冒すメリットは充分にあると福地は確信している。
どんなモンスターがいるか不明だが、少なくとも1階層や2階層のモンスターがそれ程驚異でないことは緊急の調査で判明済。
「えっと...つまり最深部へ向かうチームの為に近隣住民もダンジョンを開放し避難するから、その隙に低階層のモンスターを倒して、ドロップ品を回収してくればいいんですね」
「全くもってその通りだ」
1人でこっそり行くなら、複数スキルを使用してもバレる心配はない。
つまり、公介に依頼を断る理由もないということだ。
「分かりました。その依頼受けさせてください」
爆発は気になるが、爆発を食い止める為に熟練の開拓者達が出向くのだから、そっちはその者らに任せておけばいい。
仮に爆発したとしても自分なら死ぬことはないだろうと判断した公介は依頼を受けることにした。
「おぉそうか!100%、いや120%そう言ってくれると信じていたよ!では明日、指定した空港へ来てくれ。君はサポートスタッフという体で行くことになる」
日本も国連を通じてインドから応援要請が来ている。
ダンジョンに関することなら事実上日本ナンバー2である福地にかかれば、サポートスタッフの中に1人紛れ込ませるぐらいなんてことはない。
「パスポートの心配もいらないから、君に持ってきて欲しいのは替えの下着ぐらいだ。あ、武器を使うなら、普段と同じ様に持ってきてもらって大丈夫だ。貨物室に入れてもらうことになるけどね」
(武器か...申請が面倒臭いし、そもも俺には必要ないから持ってなかったけど、確かに無いと不自然か)
武器を所持する際は国に申請し、基準を満たしたケースに入れ、同じく基準を満たした許可シールを貼ることで初めて携帯が許される。
さらに数年後、持ち歩く際には開拓士免許を所持していることを示すバッチを、着ている服の目立つ場所に付けなければならないという項目まで追加された。
しかもご丁寧に免許のクラス毎に※色分けされたバッチだ。
銃社会ではない日本だからこその規制の厳しさなのだろうが、面倒臭いという気持ちに変わりはない。
この場合の武器とは通常の武器、鍛冶スキルで製作された武器の両方が含まれているが、後者の方は武器自体に魔力が流れていたり、自分の魔力を流すことが出来る。
モンスターには魔力を伴った攻撃が有効であることから、ほぼ全ての開拓者が後者を使っていると言ってもいい。
(でもディジカを倒すのに武器を使ってないことはもうバレてるし、今更武器を使っても遅いか)
バッチを付けておらず、武器も持っていない姿を鹿嶋のダンジョンで、福地本人に見られているのだから、少なくとも武器を使わずにDランクモンスターを倒せる実力があることはバレている。
なら、今焦って武器を調達しても意味はない。
結局今回も武器は持たないことにした。
今回の作戦に選ばれた軍人や開拓者達がどのような心境で、どんな準備をしているのかは不明だが、少なくともお菓子は何を持っていこうかを考えているのは公介だけだろう。
※色分け
AAクラス 紫
Aクラス 青
Bクラス 赤
Cクラス 黄
Dクラス 白
因みにビギナークラスは武器の所持は認められておらず、バッチも存在しない。
ビギナーランクモンスターは素手でも倒せるモンスターに認定されるランクであり、武器は必要ないとの判断からだ。
つまり武器を所持出来る最年少は、特急券で合格した18歳のDクラス開拓者から。
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