第32話 大儲け
約2時間が経過し、50本もの角を手に入れた。
2、3本だけ持っていっただけでも大騒ぎになることは火を見るより明らかなのだから、50本でも変わらないだろうと思い、たくさん狩ったのだ。
10階層へ来たときにあった門を使い、1階層の出口付近へ戻る。
買い取り窓口に行くと係の人の顔が強張った表情でこちらを見ていたが、わざわざ顔が変だと指摘するのも失礼なので、そのまま買い取りをお願いする。
「買い取りお願いします」
「あ...はい...」
収納袋から出した大量の肉と黒紫水晶、そしてなにより角に呆気に取られる買い取りスタッフだが、あり得ない量に驚くというよりは、予想はしていたが思わず驚いてしまったというような驚き方に感じたのは公介の気のせいだろうか。
(奥多摩のダンジョンで目付けられてんのかな。やっぱりこのスキルも隠すべきだった...いや今更後戻りなんて出来ないだろ)
しばらく待っていると査定が終わったようで、こちらに走ってきた。
「大変お待たせいたしました。ではディジカの角が50本で5000万円、肉が50キロで25万円、Dランクモンスターの黒紫水晶が5キロで1万円、合計5026万円となりますがいかがいたしましょう」
公介は肉を10キロ持ち帰ることにし、残った5021万円から1%の手数料を引かれた4970万を口座に、7900円を現金で受け取った。
(5000万...とんでもない金額だ。でも手数料で約50万持ってかれんのか。向こうも儲かるように出来てんなぁ)
手数料を引かれるのは嫌だが、こんな簡単に5000万円稼げてしまうのだから、他の開拓者に比べれば自分は恵まれ過ぎていると感じた。
そんなことを思いつつ帰路に着こうとした公介だが、
「あ、お待ちください!主人様!」
買い取り所の女性に呼び止められる。
「主人 公介様は免許によると東京にお住まいなんですよね。今日はもうお帰りになるんですか」
そういえば免許には住所も載っていたなと、思い出す公介。
わざわざ嘘をつく意味も無いので今日は帰ることを伝えると
「あ、そうですか...で、ではダンジョン開拓で汗をかいたでしょうから、シャワーでも浴びたらどうでしょうか」
このダンジョンの周辺の施設にはシャワーも備え付けられているが、別に帰ってからでもいいと思っていたので断ると
「えぇっと...で、では...その、あー」
(時間稼ぎでもしてんのか?何で俺を帰らせたくないんだ?)
公介が不思議がっていると、女性は公介の後ろを見て何故か安堵した表情を浮かべた。
公介も後ろを振り向き確認すると、そこには黒塗りの大型セダンが止まっている。
後部座席から出てきたのはクリームがかった白のスーツの男。
その男は公介の前まで歩いてくると
「初めまして。日本ダンジョン及び開拓者管理協会副会長の
そう言いながら、彼は金色に輝く名刺を渡してきた。
公介がやってきた時、受付の女性は焦っていた。
なぜなら、来たら報告せよと言われていた存在が来てしまったからである。
公介がDクラスへの昇格試験に受かったことを把握した協会の職員達は、日本全国のドロップ率は低いが稀少なアイテムをドロップするダンジョンへ、彼が来た際は報告せよとの通告をした。
公介が受付で手続きを済ませ、ダンジョンの中へ入っていったことを確認し、直ぐ様協会本部へ連絡した。
例の開拓者が来たことを伝えると、なんと協会の副会長が電話を変わり、私自ら出向くと言い出した。
「さ、流石に福地副会長が出向く程では...」
「だが本当に稀少なアイテムをいくらでもドロップさせることが出来る能力を持っているのだとしたら、君だって協会と良い関係を築いて欲しいと思うだろう」
「え、えぇ...まぁ」
「だったら私自ら出向くべきだ。交渉は上の人間が来た方が向こうにも本気度が伝わるだろう。利益の為なら、例え上の人間でも最前線で汗を流す。これが私のモットーでね」
彼が何をどれだけ持ってきても買い取りして構わないと言われたが、私が着くまで引き止めて置くよう指示された彼女は、買い取り係の女性にこの事を伝える。
数時間後、買い取り係は公介がダンジョンから出てきた時、予想していたとはいえこんな短い時間でこれだけの量を取ってきたことに驚いたが、出来るだけ時間を稼ぎ、何とか彼を引き留めようと努力していた。
もう彼が帰ってしまうというギリギリの時に福地副会長が到着し、彼女らは安堵した。
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