第31話 乱獲

 着いたのは昼過ぎ。

 現地で昼食を取り、向かう公介。

 貴重なアイテムが取れるだけのことはあり、この前のツアーで来たダンジョン同様設備は整っている。

 武器や防護服も貸し出しているが、素手で十分な公介にとっては、わざわざレンタルする必要はない。


 受付に行くと後ろが騒がしくなり、どこかに連絡をとっているようだが、気にせず免許を提示した。

 自分に関係ないことならどうでもいい。

 関係あったとしても、教えてくれそうな雰囲気ではなかったからだ。

 

 ここのダンジョンは1階層から10階層までが、ディジカの出現するDランク階層である。

 チイチュウに比べると出現するエリアが広いが、ドロップ率が低過ぎるせいで、ドロップ数はこちらの方が圧倒的に少ない。


 公介は、奥多摩のときと同じように隠密スキルを使い、一番人が少ないであろう、10階層目へ走る。


 魔力量や魔力制御が4桁の公介にとっては、直ぐに着く距離だ。


 10階層付近にもなると、途中で仲間と見張り交代をしながら、夜を過ごす開拓者が多い。

 魔力を体に流せば速く走ることが可能だが、モンスターと戦う為に魔力を節約しなければならない故、この手法を取る。

 魔力は使わなければ回復する。

 特に睡眠時は回復量が多いからだ。


 その分奥に行けば行く程、価値が高い物をドロップする確率が少しだけ高いと言われている。


 つまりこのダンジョンの10階層は来ることが難しく人が少ない為、ディジカを見つけやすい。

 かといってディジカの角は殆どドロップしないこともあり、角よりもドロップ率が現実的なディジカの肉をゲットしにくる者が過半数を占める。


 肉は普通の鹿肉より少し高価なぐらいだが、そもそもDクラスはあまり稼げないクラス。

 ダンジョンで稼ぎたいならCクラスから、と良く言われているぐらいだ。


 設備が整っているダンジョンでは武器や防護服だけでなく、アイテムもレンタル出来る。


 例えば収納袋という加工スキルで製作できるアイテムは、袋の大きさよりも明らかに大きい物でも入れることが可能なアイテムで、加工するときの素材次第で入れられる量が決まる。

 重さも感じなくなるが、残念ながら時間の進みは変わらない。


 Dランクダンジョンでは大体100キロ程の容量がある収納袋を1日5000円でレンタル出来るので、公介はレンタルしていた。


(さて、やるか)


 ドロップ率上昇スキルをオンにした公介は、体験ツアーでオガシロの魔力を感じ取ったように、ディジカの魔力を感じ取る。

 ディジカを見つけると魔力で強化した体で直ぐさま向かい、その勢いのままディジカへ蹴りを入れる。


 一撃でディジカを倒し、ドロップした角、肉、黒紫と透明の水晶。

 透明の水晶はその場で割り、残りの3つは収納袋に入れる。


(これスゲー便利じゃん)


 収納袋の有能っぷりに感服し、また直ぐに次のディジカを倒しに行く公介であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る