第30話 1本100万円
4月になり、仕送りもいらないと親へ伝えていた公介は本格的にダンジョン活動を始めることにした。
高校を卒業してからも住む場所は変えていないが、ダンジョンで稼いだらもう少し良い所に引っ越そうと考えている。
朝のニュースを付けると、丁度現場からの中継を放送していたようだ。
内容は[無害なモンスターを守ろうの会]の会員達がダンジョン内の入り口を塞ぎ、ダンジョンに入らせないようボイコットしている。
[無害なモンスターを守ろうの会]とは、ダンジョンにいるモンスターだからと一括りにせず、我々にとって驚異にならないモンスターは倒すべきではないと主張する者達が結成した会だ。
「言いたいことは分からんでもないんだよなぁ」
公介は正直彼らもあながち出鱈目を言っているとは思えなかった。
ダンジョン外でも農作物を荒らす動物や虫は駆除するが、犬や猫はペットとして可愛がり、殺さないからだ。
だが政府はそもそも、ダンジョンに出現するモンスターは生命体ではない、との見解が最新の主張である。
主な理由として挙げられるのは、
・必ずではないが倒すとアイテムをドロップするという謎の現象
・現実ではあり得ない質量を持ったモンスターが存在すること
・倒しても、時間が経過すると元の数に戻ること
・倒しても死体が残らず、地面に吸収されるように消えること
などがある。
しかし彼らは、人間や動物が食料を、植物が日光をエネルギー源としているように、彼らも魔力をエネルギー源としている。
種族やエネルギー源が違えば生物的特徴が違うのも当然だと主張し、これを否定した。
「俺は生物だとは思いたくないけどね」
政府が生命体ではないと発表しているからこそ、あまり罪悪感無くモンスターを倒せるのだ。
今回公介は少し遠出をして、茨城県鹿嶋市のDランクダンジョンへ行く。
目的は鹿型モンスター、ディジカの角。
この角は加工スキル持ちが加工して出来る栄養剤に必要な材料の1つであり、これを飲むと滋養強壮効果が凄まじく、自然治癒力の高さで治る病気はほとんど完治してしまうのだとか。
当然ドロップ率の低さも凄まじく、チイチュウの羽よりもさらに低いらしい。
その確率は、ダンジョンから1ヶ月に1個か2個ドロップすればいい方。
買い取り金額は角1本でなんと100万円。
Dランクモンスターから取れるアイテムの中ではトップクラスの価値がある。
当然それを元に作った栄養剤はもっと高価であり、保険も効かず、医者にかかった方が良いと考える人かほとんどだが、医者にかかる時間と手間を省けるならいくつでも買おうという大金持ちが世の中には少なからずいるのだ。
流石に難病に指定されるような深刻な病気までは治せないが、それを差し引いてもお釣りが来るほど貴重なものであることには違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます