第14話 免許制

 それから約2週間後、総理はマスコミを集め記者会見を開いた。

 内容はダンジョンの一般開放について。


 そしてダンジョンに入るには免許、保険への加入が必要となり、年齢制限は下は16歳から、上はなし。

 さらに免許は1種類ではなく複数あり、免許の種類によって入れるダンジョンが制限される。



 免許の概要はこうだ。


 特殊指定区域開拓士

 特殊指定区域(総称ダンジョン)への入場及び、区域内に出現する敵対的な存在(総称モンスター)との戦闘、物資の回収を許可する資格


 AAクラス

 全てのダンジョン、及びその階層への入場が許可される


 Aクラス

 政府が開拓制限ランクA、B、C、D、ビギナーに分類しているダンジョン、及びその階層への入場が許可される


 Bクラス

 政府が開拓制限ランクB、C、D、ビギナーに分類しているダンジョン、及びその階層への入場が許可される


 Cクラス

 政府が開拓制限ランクC、D、ビギナーに分類しているダンジョン、及びその階層への入場が許可される


 Dクラス

 政府が開拓制限ランクD、ビギナーに分類しているダンジョン、及びその階層への入場が許可される


 ビギナークラス

 政府が開拓制限ランクビギナーに分類しているダンジョン及び、その階層へのみ入場が許可される



 注意

 ・政府が入場を禁止している場合は免許のクラスに関係なく、入場を禁ずる


 ・開拓制限ランクは1つのダンジョンに1つというわけではなく、階層毎に分かれている


 ・未踏の階層に踏み入れる際は、前の階層の開拓制限ランクより1つ以上クラスが高い者、もしくは同じクラスの者3人以上でなければ入場できない

(例

 1階層目の開拓制限ランクがD、2階層目がC、3階層目が未踏だった場合は3階層目に踏み入れるにはクラスBの者、もしくはクラスCの者が3人以上でなければならない)


 ・16歳以上20歳未満の開拓士は例外なくビギナークラスとなり、20歳になるまでDランクへの昇格は出来ず、未踏の階層への踏み入りも禁じられる



 免許取得まで


[1]

 政府が設けた特設会場で、ペーパーテストと健康チェックを受け、合格し、ビギナークラスの免許を取得


[2]

 ビギナークラスのダンジョンでモンスターを倒し、Dクラス試験に受かるため、モンスターを倒した際にドロップする、魔力が増える透明な水晶を割れるだけ割る

(必ずドロップする訳ではない)

 自分のスキルが判明し、戦闘に応用出来るなら、それの訓練も行うと良い


[3]

 上記の特設会場へ行き、身体検査を行い、Dクラスでも死亡のリスクが少ないと判断されればDクラス免許交付、不合格なら[2]へ戻る



 Cクラス以降への昇格条件

 Dクラス以上の免許を持っている者は、専用の特設会場で試験を行い、スキルを考慮した上で、上のランクでも問題ないと判断されれば昇格となる



 ダンジョン内での収集物に関して


 ダンジョン内で収集した物の所有権は国にあり、入り口に設立された窓口に提出、窓口が設立されていない場所だった場合は、専用の施設に3日以内に持ち込まなければならず、収集品は以下4つの判断に分かれる


 ・報酬制

 国が収集品の価値に応じて、紙幣、または専用のマネーカードによって報酬を与える。持ち帰りは不可


 ・持ち帰りに許可が必要

 基本的には上記と同じ報酬制になるが、特別な理由がある場合のみ、許可証を発行して持ち帰ることができる


 ・持ち帰り可

 報酬制にしてもよいが、本人の希望次第で、許可証を発行せずとも持ち帰ることが出来る


 ・保留

 現時点ではそのアイテムの価値や危険性が分からず、国の調査を待つ


 尚、本人が持ち帰った物の所有権は本人に譲渡される




 違法行為について

 ・この免許の所持者が傷害、暴行、脅迫、器物損壊等の行為をした場合は、状況次第で、刑法に上乗せして処罰を受ける

 正当防衛の判断基準は通常と変わらず




 武器の所持について

 ・ダンジョンを開拓する際に武器を使用する場合は国に申請が必要であり、持ち歩く際はケースに国が定めた基準を満たすシールを貼る



 会見で一通り説明し終えた総理は会見終了後、ダンジョン説を唱え、今回の免許制度の概要を考案した、経済産業大臣に尋ねる。


「AAクラスなんて作って大丈夫でしょうか」


 この制度に当てはめると、現在一番魔力量が多いであろう一国でさえ、Dクラス相当の実力になってしまうのだ。


 AAクラスが誕生するまで、どれ程の時間を必要とするのか。

 そもそも全てのダンジョンに入れる権利を与えるなど、やりすぎではないのか。

 総理は疑問に感じていた。


「私もAAクラスが誕生することは、今のところ想定しておりません。あくまで将来、そのクラスに相応しい者が現れた時の為の席を予め用意しているだけです。それに上のクラスがあればある程、向上心というのは刺激されるものですよ。それよりも」


 彼は自分の考えを述べた後、ある話題を振る。

 以前、ゴブリンのダンジョンで遭遇した巨大なゴブリンの話だ。

 戦車の砲撃で倒すことに成功したが、問題はそのドロップ品である。


 ドロップしたアイテムは2つ。

 1つはそれまでのゴブリンよりも少し大きめな透明の水晶。

 だが、体が大きければ、水晶が大きくても不思議ではないと判断され、そちらは問題視されていない。


 しかし、もう1つのドロップ品が、だったのだ。

 肉質は赤身だが、周りの皮は体色と同じ緑色。

 その肉が巨大なゴブリンに関係していることは言うまでもなかった。


 しかし、得たいの知れないモンスターの肉を食べるわけにもいかず、政府の研究施設に回され、現在、成分を解析中である。


「確かに水晶や武器以外のドロップ品が出たのは驚きましたが、どんな性質を持っているのか分からない以上、今は施設の職員に任せるしかないでしょう。それに、そういうものが分かる知識スキルや、もっと精密に解析が出来るようなスキル持ちが現れる可能性もありますし」


 何はともあれ、今は出来るだけトラブルが起こらず、有益なスキル持ちが現れることを祈るしかない。

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