殺貝機動班結成と貝類苦手な令嬢の悩み・中編
皆さん。
あたくしは大阪に核攻撃を仕掛けて焼き払った某どこぞ人民共和国を許せません。
大量の人命を奪ったとか、なかなか進まぬ除染問題ですとか、様々な被害を被ったのもありますが、今一番困っている事がですね。
最 寄 り の ス ー パ ー ま で 遠 い ん だ よ 。
ええ、日常的なお買い物に行くのにも難儀してるんです。だいたい、昔はええとこだったらしい京橋の更に先までとか、内環越えて高井田とか布施の辺りまで買い物に行かなあかん現状と言ったら解ってもらえますか。
会社では給食業者入れて解決しましたが、NBの領事館だと毒入りの食い物配達されたらかなわんので、買い出し専門の職員を使って調達に行かせてます。
クレーゼ検品役が就任してこの辺の事情はかなりカイゼンされましたが、スーパーまでの物理距離は遠いです。一番近い百貨店が布施の近○タ○シマヤというたら、めんどくささがわかってもらえますか。
で、天の声いわく、近未来では近○と南○電鉄が合併してるそうです。
話を戻して、くそめんどくさい買い物当番要員にはあたしも入ってまして、自動小銃やら短機関銃ぶら下げて奇異のマナコで一般のお客さんに見られながら、領事館ナンバーの公用ワゴンに週1〜2回ペースでアホほど食材詰め込んで警備補助スタッフと一緒に帰ってくるのが馴染みの光景だったりします。
うん、どっかのユダヤ系国の女性兵士じゃあるまいし、ショーパン姿で携帯火器をオープンキャリーでむき出しのままぶら下げてないと街中うろつけない領事館規則は何とかして欲しいんですが、連邦も日本政府もNBも合意した取り決めなので仕方ありません。邪魔ですが。重いんですが。それ以前にあたし、
とりあえず連邦仕様でもNB仕様でも、この手のブツは認証式安全装置がついてまして、身分証を携帯した者が握ってないとセイフティが外れないので奪われて使われる危険は少ないのですが、実弾や実効パワーカートリッジを複数弾倉含めて携行するだけで4kg越えるんでたいがい嫌です。あたしのTバック寸前なハイレグショーパン姿のケツ見てち○ぽ勃てかけて銃見てぎょっとする男衆が、お付きの護衛官や随行のSPに睨まれて慌てて逃げるのも風物詩ですが、なんか市民の皆様に無用な恐怖を与えているようで罪悪感にとらわれます。ええ、犯されたり写真撮られそうなら殴りますが、あたしごときのケツ見て和んで頂けるくらいなら見せ惜しみはいたしません。
脱線ついでに愚痴っときますが、あたくし、軍関係や領事館の典礼儀礼公務ですとか、パーチーの類でないとこの数年、スカート履いた記憶がありません。たまにはミニスカガーターベルトとか色々と、おなごらしい服装もしてみたいです。しかし、なるべく鉄火場で大立ち回りしやすい服装にしとけ、透明ボディスーツなTAPPS1を常時着てていいからと言われたり、はたまた沖縄の例の店時代にママから、うちの子らの通勤時にはスカート履かせてないね、ストーカーとか出てきて逃げる時に困るねとか言われた日にはどうしてくれようかと。
で、一方で
そしてここで天の声の魂の叫びですけどね「女張ってると自然とえげつない露出の格好したくなるんや、女とはそういう生き物なのや。如何に性犯罪を引き起こすと解っていても子宮で考えはるんや、あれは本能に忠実であればあるほど、あないなるんや」と切実に言うとりますが、その女たるあたしとしてはムカつくけど事実です。
ええ。世の喪男諸君、あいつらはああいう生物やと思ってください。
すんませんが賛同はともかく性質は理解したってください。世にあまたはびこるフェロモン撒き散らし雌豚に代わって、あたしが頭下げさしてもらいますからどうかよろしくです。
だからNBの支援を得てさっさと市内を除染して再開発してくれよ、スーパーまで歩いて行くとかしたいんだよ。
ええ、某人民共和国に心当たりがありそうな国の方には申し訳ないんですが、あたしの生活上、店が近い暮らしを切に望みたいのです。ほんま東京あたりに移住したいんですけど、今のあたしがそういうワガママ言い出すと「NB関係の軍やら何やらをそっくり一式一切合切引き連れて行く」ことになりますので、東京都や日本国はもとより連邦からも、大阪再開発に関してはNBかましまくっていいからそれだけは絶対やめてくれとキツく釘を刺されています。要は、お前が不便に思うならNBを動かして爆心地を使える土地にしてくれたら、ある程度は好きにさせてやると。おい。
で、買い出しの話をするからには冷蔵庫にも言及せねばなりません。
我が家の冷蔵庫は標準的な家庭用サイズを3台置いています。
正確には置かされています。
我が家の領土にですね、聖院はまだしも
領土侵犯です。
大日本帝国に犯されました。
謝罪と賠償を要求します。
で、大日本帝国に侵されて犯されるのは、かつて謝罪アル賠償アルとやっていた、とアル某国の反戦映画にありがちな展開らしいですが、菅野くんに自分の飯は自分で何とかせぇと作らせるのもかわいそうなので、とりあえず奴の飯だのクレーゼ親子が来た際の食材はこちらで預かろうという取り決めにしております。
そしてうちらの部屋とNB領事館付きのメイドさん2名とあたくしで家事を分担、クレーゼさんもマリアも「こちらの生活様式」を覚えてもらうために来た時は家事当番表に加わる事にしております。
更に菅野ちゃんのお部屋は汚部屋にならないよう「マグレガー台風」を寄越すから士官学校みたいにされたくないならちゃんとやれ、と。
まぁ菅野ちゃんに女子力を求めるべきでないのはわかってはいるのですが、やはりね、牝の巣に住まう以上は多少は配慮してもらわんとな。
共同風呂にしたら、絶対にこいつはフルチンで歩き回ると思ったからな。苦労して部屋にユニットバスとランドリーパン付けたってんから、掃除洗濯はちゃんとせぇよ。
で。
我々は機械文明を享受すること幾星霜、もはや電気なくては立ち行かぬ生活をしておりますが、一方であちらの地球…もう惑星ゾラと呼んでみようかとか思いましたが、やめてくれ頼むからと天の声の泣き声がした気がしますので、なんかいい呼び名あったら教えてください。
そして魚介冷凍技術があるという、驚愕のクレーゼさん爆弾発言に目を剥く男二人。
「簡単ですわ。滝で水車を回しましてですね、そちらでいう電気とやらを拵えておりますの。ただ…実験段階でして、現状では女官やわたくしどもの発する熱を使って冷やす方が効き目があると修学宮の研究者が申しております」
「高木取締役、現物を見ないと断定はできませんが、多分、かなり昔にあったガス冷蔵庫の原理ですわ。昔はガスを燃やして冷やすものがあって、今も原理的には同じ種類の製品、スウェーデンのメーカーで作ってますね。うちの本社と上町のチルド庫や冷凍庫が確か、それ使ってるはずですわ」
「ふむふむ。確かクレーゼさん、港から湖まで荷揚げするのにも電気使ってへんかったっけ」
「ああ、小船ごと運ぶあれですわね。曳舟機とわたくしどもでは称しております。お義姉様、しゃしんとやらはございますかしら」
「はいよ。これやて」
そこに写っているのは一種のケーブルカーです。
荷船を載せた台が縄で引っ張られて坂道を登っていく姿が。
「こ、これはインクラインやないですか」
「何ですの田中さん、そのイン何とかさんて」
武内さんの声に修道服姿の欠食児が浮かんだのですが、多分、気のせいやな。
「船を運ぶケーブルカーですわ。日本にも琵琶湖から京都に船を運ぶために山越えする目的で作ったのがありますわ。今でも遺構が保存されてますよ」
「はぁ…やはり考えは似通うものですわね。田中様のお話の通りのものです。今は鋼の縄を作る必要がない程度にとどめていますが、鋼の縄があればかなり重い舟も揚がるとか。あと、昔は水車で縄を巻き上げていたそうですが、あたくしの母…先代金位のデルフィリーゼの時に、修学宮で作られた電気車とやらを使ってみたいという話になりまして、今は水車の力を補う形で試してみております」
「クレーゼさんの力ならこんなん一発ちゃうの」
「おねーさま。あれは、こちらの方々のおっしゃる一発芸という類ですわよ。毎日致しますとおなかが空いて空いてたまりませんのよ?お・な・か」
「クレーゼ様、そういえば私の方で少しお伺いしたいことがございまして。ええ、本当に下らない事なのですが…」武内さんと顔を見合わせてから田中さん。
「ああ、その先はお声にされなくて結構でしてよ?実は、わたくしが直接殿方から吸いますと、本当に殿方がお亡くなりになる危険がございますの。この間ジーナ義姉様が散々念押ししておりましたでしょ?本来なら、上級女官までの間に溜まった精気をまとめて召し上がらせていただく事になっておりますのよ」どうやら、日に何人をいけにえ()に捧げる必要があるか聞いとけとか言われたらしいですね。
「身体の方は普通にお食事を頂けたら問題はございませんけど、やはり職務に必要な精気を頂くには…そうですわね、日に百から千は頂きませんと」
これを聞いて絶句する野郎共二人。だから直接やない言うてはるやん。話聞け話。
「まぁもちろん、滝の水のようにざばざば使うわけではございませんが、何かの時のための…いわゆる、ちょきん、ですわね。貯めておく分込みの話ですから。それに、本宮だけで一千を超す女官がそれを致しますから、あたくし自身が殿方を千も万も…まぁ、いくさを鎮める時とかは触れずに致しますけど。ほほ」ああ、ローマ軍7万7千人とヤるアレな。
まぁ何とか波さんと違って、直接触れずに吸い上げてしまえるのは、第二次大戦当時の東南アジア戦線だの太平洋だのアフリカだの欧州ソ連で散々エナジードレインしてもらった実績がありまして。
本人は満腹満腹とか言いながら「デザートとやらは別腹、お菓子は別口ですわ!」とあたしを食いに来るのやめて。お願いだから
ま、目下は歴代金位最強にして最凶の淫乱・ド・ビッチとの悪名高いクレーゼさんです。
なんせ時たま娼館の旦那や女将が「お願いですから金衣様が夜中、お忍びでウロチョロして吸いに来られないよう戒めて頂きとうございます。お気持ちはお察し致しますが、吸われた客が女の魅力と勘違いして、次に呼んだ時に失望してしまうから出来れば控えて下さいますと助かります」と
で、深夜の色街につまみ食いに来る銀蝿痴女。なんせ直接充電でなくとも半径数キロの生命体から根こそぎ吸い上げる高等技持ちです。ヤってる気配のある館どころか色街全体からチューチュー出来る訳で。
そして娼館からしてみれば、この世ならぬ快楽に是非また来ようとかなるからリピーター作りにはいいらしいんですよね。…ただ、この気まぐれ痴女が次回の来館時に、必ず夜食漁りの銀蝿行為を思い立って徘徊してくれるわけではないのが頭の痛いところでしてな。パネマジ詐欺ならぬサキュバス詐欺って言えとの天の声。
で、城下町の悩みを捨て置きたいけど、世界最大の売春街として名が売れてるからこそ水揚げもお布施も税収も上がる訳で、娼館側の頭痛のタネも理解している罪人頭や女官連中が鳩首協議した結果、
あ、女官連中の声ちょっと聞いたって下さい。
「ああ、マリア様のおかげで、このオリューレに安眠熟睡の日々が戻りました」
「夜中にいちいち起きて色街うろつくだけで大変だったんですよ。ほら、わたくし達、普通に服を着れないから正体丸わかりじゃないですか。おまけにクレーゼ様より近寄る必要がありますから不審者そのものだったんですよ。警護についてくれてる罪人衆だって、後で女官様にご褒美貰わなきゃ絶対やってられんくらい気を使う。女官様に何かあれば俺の首一つじゃ済まないんですよぉと毎回泣かれてましたし」…ああマジ頭いてぇ。
「高木取締役、あと日本円や連邦ドルを現地通貨に両替する件なのですが…」
「あ、田中様。その件でお悩み頂く必要はまーーったくございませんわ。確か総勢で20名くらいとか。それでしたらわたくしのぽけっとまねーで何とかいたしますわ。おごりというものでございましてよ」
うそつけ。あんた変なとこで変なもん買う癖あるから、しまいにオリューレとメルトリューレに睨まれて小遣い帳つけさせられたり、南洋王国中に金位様がなんぼ以上の買い物しに来たら必ずお付きがその場にいるか確認しろ、単独の場合ノロシでも伝書プテラノドンでも何でもええから聖院に確認取れと回状流されとるやろ。
(おねーさまぁ。ちょっと気に入った
(だからそれを浪費いうんじゃー!)
(あんなくらいでやいのやいの言われたら、昔のろーまとかいぎりすとかふらんすやちゅうごくの王族なんてどれだけムチャしてるんですの?)
いや、そいつらそれで国傾けたり滅んだりしてるから。
(とりあえずお客人に渡すおこづかいはオリューレに認めさせております。仮に全員殿方で、皆様が色街に二晩行かれても大丈夫なくらいは確保しておりますわ。単にオリューレに巾着袋の紐を握られているだけで、わたくしのおこづかいで南洋王国のねんかんよさんくらい賄えましてよ。ああ、わたくし金衣だというのにオリューレったらもう!)
「いやいや、ご配慮ありがとうございます。通貨兌換につきましては今後の検討課題と致しまして、とりあえず私どもも、そちらに赴くにあたりまして、何かお渡し出来るものがあればと聞いておけと、弊社社長より申しつかっておりましてね。クレーゼ様のご希望は、社の力及ぶ限り叶えよ、と」おっさん…ええ格好しいはやめーやと思うんですが。
(大丈夫ですわお義姉様。そちらの事情も心得ておりますれば、無理は申し上げません)
(ほんまやろな。頼むでマジ頼むで)
「では…小さいもので構いません。そちらでお使いの荷車、とらっくというのですか。あれのお古で構いませんので、何台か試しに使ってみたいことがございまして」
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