箸やすめエッセイ 3 お好み焼き屋の白人好青年

 他県から大阪に遊びに来た女の子の友だちを連れて、大阪を案内していた。


 心斎橋のアメリカ村にある、お好み焼き屋に入った。


 お好み焼きでも、焼きそば入りのモダン焼きというのがある。

 かなりボリューミーなので、ビールを飲みたかったのもあり、通常のお好み焼きを注文した。


 わたしは少しほろ酔いになっていた。

 すると、同じカウンターに座ってた、20代の白人青年が声をかけてきた。

 そこそこ日本語を話せた。


 お好み焼きをアテにビールを飲みつつ、連れの女の子の友だちも交え、雑談に花を咲かせた。

 オランダの留学生だと言っていた。

 楽しいひと時だったが、その3人での会話になにかと、お好み焼きを焼いてたおばちゃんも入りたがる。


「通はな、モダン焼きは注文せーへんねんで。あれは学生が食べるもんやね」

 などと言ってくる。自家製のソースの自慢なんかまで。


 ちなみに、わたしはお好み焼きにはマヨネーズはかけない派。

 生地の旨味がわからなくなってしまうからだ。たこ焼きも同様。

 本当に美味しいたこ焼きは、ソースすら要らないほど美味しいのである。


 たぶん、モダン焼きって大阪だけだと思います。兵庫はどうだろうね。

 兵庫でも、たこ焼きは明石焼きになるのかな。たこ焼きと、ちょっと違う。

 広島焼きは、モダン焼きと似ていて、焼きそばが入っている。広島焼きのほうが美味しいんじゃないかと思います。


 そこのお好み焼き屋には、広島焼きはなかった。大阪でもある店は少ないんじゃないかな。


 よっぽど腹ペコだったら、モダン焼きを食べてみるのもいいかと思います。高校生の頃はよく食べたものだ。


 同じ日本でも、地域によって食文化が違ったりするものですよね。

 例えば天津飯なら、こっち大阪の場合は、あんかけは醤油ベースだが、関東はケチャップの甘酢あんかけだったりね。


 わたしの母親も東側の人なので、作るたまご焼きはしょっぱくなくて甘かった。



 

 お好み焼き屋のおばちゃんには、聞こえないように、こそっと、オランダ人青年に、広島焼きを勧めておいた。



 〈完〉

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