親友
俺は一条に軽く現状を説明した。
二人から愛を向けられていることと、変に誤解させてしまったこと。
一条からの返答は…
「なるほど…何を悩むことがあるんだい?」
「…え?」
俺の予想とは全く異なる返答だった。
「二人から愛を向けられているのなら、二人とも幸せにすればいいし、誤解させてしまったなら謝れば良いじゃないか、謝る時のコツは何も言い訳をせず、自分を良く見せようとしないことだよ!」
「は…!?何言ってるんだ?二人ともって…普通に浮気だし、もし結婚するとなったら浮気どころか不倫になって紙にだってばつ印を書かないといけなくなる…謝れば良いと言うのは、確かにそうなんだが」
二つ目に関しては共感できるが一つ目に関しては理解が難しい。
「何を言っているんだい?一夫多妻制という言葉を聞いたことは?」
「いや…聞いたことはあるし意味もなんとなくは知ってるけど」
「それがこの現代に認められている国だってある、何もこの国のシステムだけに縛られる必要はない、合わないなら合うところを見つけるまで旅をすれば良い」
「そんな無茶苦茶な…」
思考が自由すぎる…だがそれを凄いと思っている自分もいる。
「無茶苦茶じゃないさ、世界の多様性を受け入れるために僕たちは必修科目として英語を勉強しているんだ、君だってレディ二人に好かれてしまった責任があるだろ?だからもしどちらかを選ぶことができないというのなら、責任を取るかいっそ二人ともを切ることだ、いっそのことあんなに素敵な淑女二人なら僕がお相手してあげてもいい」
「お相手って…一条は普段、女遊び的なことしてるのか?」
「いや?親友の君のためならというだけで、普段の僕はそんなことはしていないさ、ただ綺麗な方にはそれ相応の態度をしているというだけで」
確かに露那に対する態度は明らかに異常だったが…あれにはしっかりと一条なりの信念があったのか。
「別にその必要は無い」
「そうなんだね、じゃあそろそろ授業だし教室に戻ろうか!」
「あ、一条」
俺は少し一条に聞きたいことがあるため足を止めてもらった。
「ん?」
「一条なら俺と同じ状況になったらどうするんだ?」
「どうだろうねぇ、僕はその人が本当に僕のことを好きなのかを確かめるかな」
本当に僕のことを好きなのか確かめる…?
「告白までしてきてくれているんだから好きじゃ無いわけがない」
「確かにそうだけど、偶然近くにいる異性だったから、同じ教室でよく話す機会があるから、といった単純接触効果でただその限定的な条件下だけで自分のことを好きになっている可能性の方が高いと思うんだ、だから本当に僕でなきゃいけないのかを確かめる…それ次第だねっ!」
最後は元気良く言うと、今度こそ一条は屋上を後にした。
「…俺も戻るか」
一条に言われたことの意味を考えながら、俺は階段を降り教室に戻る。
「天海は悩み事とかにも優しく乗ってくれるところがかっこいいんだって!」
「ほんっと何にもわかってない!奏くんの良さは困った時とかにどうしようもなく私を求めてくれるのが良いの!」
「…なんだこれ」
教室に戻ると、露那と秋ノ瀬が他の女子を置いて二人だけの空間でバチバチに言い争いをしていた。
「奏くんのこと何にもわかってないくせに奏くんに告白なんてして奏くんのこと困らせないでくれる!?」
「そっちが天海のこと何もわかってないんじゃん!」
「2人ともそんくらいにしといたら?そろそろセンセくるよー」
「「外野は黙ってて!!」」
そんなところでシンクロすることは誰も求めてない。
「やぁ天海くん、君の愉快なレディたちが君のために言い争っているようだよ」
「勘弁してくれ…」
「まぁここは僕に任せてくれたまへ」
一条はそういうとなんの警戒もなしにその2人の空間に入っていった。
…一条、今までありがとうな。
「淑女の君たちがそのような態度……」
「うるさいよ一条くん、一条くんも天海の友達なんだったら天海の本当の良さ黒園さんに教えてあげて!」
「は?本当のってなに?私より奏くんについて詳しいつもりでいるの?たかだか数ヶ月しか奏くんといないくせに?」
「まぁまぁ黒園さん、ここは秋ノ瀬さんの代わりにこの僕が黒園さんのお相手をしてあげるから、本日デートでもどうだい?」
…え?
「は?私が奏くん以外の男とデートなんて行くわけないでしょ、ていうか一条も奏くんの友達なんだったら奏くんを私とのデートに誘導する手伝いくらいしなよ」
「…秋ノ瀬さん、君のような可憐な方と同じクラスになれて光栄だと思う、どうか僕と一生の思い出を作りに本日デートでもどうだろうか!」
「ごめんね、無理」
「……」
一条はことごとく振られ、渋々俺のところに戻ってきた。
「…大丈夫か?」
俺は一条のことを慰める。
「大丈夫?何がだい?」
「…え?」
「さっき言っただろう?本当に自分でなきゃいけないのかを確かめると、どうやら彼女たちは本当に君でなきゃいけないようだよ」
「あ…」
わざわざそのためにあんなことをしてくれたのか。
「僕ができることはここまでだよ、あとは君自身で決めると良い…大丈夫、きっとうまく行くさ!何せ君は僕の親友だからね!どんな結末になっても、応援しているよ」
「…ありがとう」
俺は一条に相談して、なんだか少しもやが晴れたような気がした。
親友…か、悪くないな。
俺は初めて、男同士の友情というものを感じていた。
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