後悔するよ
露那はお手洗いに行くと言って俺たちに手前で待っていてと言い残しそのままトイレに入っていった。
もし出てきた時に二人だけでどこかに行っていたら容赦しないとも言い残して。
「…秋ノ瀬」
「ん、何〜?」
「あの言葉の意味はどういう意味なんだ?」
「あの言葉…?」
「露那と付き合ったら後悔するっていう言葉だ」
あの言葉の真意が分からず俺の頭の中の端の方でその言葉がずっと突き刺さっている感覚がある。
「あー、気になる?」
「当たり前だ」
あんな不吉なことを言われれば当然その意味が気になってしまうというものだ、あの言葉のせいで眠る前少し考えたりもするほどだ。
「教えてあげよっかな〜、でもこれ使って天海と付き合っちゃってもなんか優しさと妥協で付き合ってもらっちゃってる感じして嫌なんだよね〜」
「でも、だからってそんな引っ掛かるようなことを言われてもそんな状態だと、露那と付き合おうにも何かもやが残って付き合い難い」
「じゃあ教えないでよっかな〜」
「え…?」
「私なら頼めば教えてくれると思った?もちろん私も他のことだとしたら教えてあげてたけど、恋愛になると女の子は意地悪になるんだよ?」
「なんだそれ…」
「なぁ〜んてね、それで天海に嫌われちゃったんじゃ本末転倒だし、うん、どうして黒園さんと付き合ったら天海が後悔するのか教えてあげる」
俺が悩んでいることの解が教えてもらえる。
「あのね、心して聞いてね、実は黒園さんって……」
「私がどうかした?」
間が悪く露那がトイレから出てきてしまった…悪いが本当に間が悪い、どうして今なんだ、なんて言っても仕方ないのはわかってるし露那は悪くないんだが。
…このもやが晴れることはないのか。
…いや、推理することはできるかもしれない。
そもそも俺の方が露那との関係は長いのに、秋ノ瀬はどうしてそんなに露那のことを知っているんだ?
露那と付き合ったら後悔する…それだけ聞くと重く聞こえてしまうが、あくまでもそれは露那との関係値が低い秋ノ瀬の言葉。
もしかすると「黒園さんって…実はものすごく強いんだよ、だから女の子らしさっていう意味では後悔しちゃうかもね」なんていうのかもしれない。
そのレベルのことであれば、俺は当然露那と付き合っている頃には知っているため、俺からすると後悔でもなんでもない。
となると…秋ノ瀬が知っているその後悔することというのは俺がもう既に知っている、あるいは知っていなかったとしても秋ノ瀬と露那の関係値で知れるものだということだ。
露那が秋ノ瀬に何か秘密とかを言うとは思えないし…となると。
「やっぱり大したことないのかもしれないな」
そう考えることが妥当だろう。
これで少しは頭の中のもやが晴れたよな気がする。
「大したことないって何?奏くん、今私の話してたみたいだけど、その後で大したことないって私のことだよね?私の何が大したことないのか、言ってみてよ」
「え…」
しまった…妙な誤解を生んでしまった。
「違う、今のは露那のことじゃない」
「へぇ、じゃあ誰の話?」
「誰の話でもない…考えてることが出ただけだ」
「考えてることなんて濁すのが怪しいよね、やっぱり私の大したことないところ考えてたんでしょ?私の何が大したことないの?」
「いや…本当に露那のことじゃないんだ、さっき秋ノ瀬と話してたことで、別に露那のことを大したことないって言ったんじゃない」
「ふ〜ん、じゃあなんの話してたの?」
「それは…」
露那と付き合ったら後悔するなんていう話をしていたなんて露那本人に伝えるのは少なくとも良い気分になることは無い。
どうするか…
「あぁ〜、大したことないって前行ったお化け屋敷の怖さの話のこと〜?」
秋ノ瀬が俺のことをフォローしてくれたようだ。
…ん?フォロー?
「へぇ、二人でそんなところ行ってたんだ、いつ行ったの?」
「え〜?前〜、天海とは縁が遠そうなVtuberさんが来た時の後に〜、黒園さんとちょっと揉めた後にかな〜?」
「あ〜、あのスマホを秋ノ瀬が盗んだって話の後でそんなことしてたんだ〜、よくそんなこと罪悪感も無しにできるよね〜」
「だからあれは人混みで落ちたのをただ届けただけって言ったじゃん」
フォローされたのかと思ったが全くもってフォローになってなかった。
秋ノ瀬は露那に笑顔を振り撒いてから俺の耳元で囁いた。
「私が知ってる天海と黒園さんが付き合ったら天海が後悔する理由が大したことないって思ってるんだったら、それは間違いだよ」
「え…」
秋ノ瀬は意味深なこといさらに意味深なことを重ねると、俺から離れて学校の時の秋ノ瀬と変わらない秋ノ瀬になった。
「このショッピングモールの上って確か観覧車あるんじゃなかったっけ〜?」
「そうだけど…それが何」
「え、天海と乗りたいな〜って思って」
「私が奏くんと乗るから、秋ノ瀬は待機…なんなら帰宅してて良いよ」
「黒園さんこそ何か活動とかで忙しいと思うし、それのためにも早く帰ってた方がいいんじゃない?」
「余計なお世話」
結局3人で乗ることになったが、ゴンドラの中でもこの雰囲気は全く変わらず、俺たちはそのまま解散し帰宅することになった。
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