露那と奏方姉の邂逅2

「…どうしよっかなぁ」


 奏くんは順調に私に気持ちを戻してくれてるけど秋ノ瀬が私と明城優那と紐付けて私に脅しをかけてきてる。

 …最悪奏くんにバレても良いけどそうなると奏くんが私に対して恋愛感情じゃなくて羨望の感情を抱くなんてことになったら奏くん私と付き合うのやめようとするかもしれないし、どうにかないと。

 …そのためには。


「私もあの女の弱みを握るしかない、か…」


 はぁ…奏くんも女全員じゃなくて私限定で優しくしてくれたら良いのに、でもそれを伝えるとまた重いとかって言ってフられちゃうんだろうな…私は奏くんのためを思って言ってるのに。


「奏くんのバカ〜!」


 まぁとりあえず今日は奏くんとお出かけする約束してるし、それはあの女に脅されたとかどうでも良いくらい楽しみだからまずはそのことに集中しないと…むしろ今日中に奏くんに告白さえしてもらえれば万事解決。

 今なら多分私から告白しても良い返事が貰えるとは思うけど、私から告白するより奏くんから告白してもらった方が色々と効果ありそうだし、そっちの方がいいかな〜。


「私は奏くんとただずっと一緒に居たいだけなのになんでそれだけが難しいんだろ〜、なやっぱり奏くんがカッコよすぎるのが悪いよね〜」


 いっそのこと普段は仮面とかつけてもらって、私と2人きりの時だけ仮面外して貰って私だけが奏くんのかっこいい顔を見ることができる環境づくりも頑張っていきたいけど…それは難しいよね。


「よしっ!」


 私は私が着たい服を着て、すぐに奏くんの家に向かう。

 奏くんのありがたいところは反応が分かりやすいから私が着た服が好みなのかどうか無意識だと思うけど顔に出てくれちゃうから私は奏くんにどんな服を着ていけばいいかわかる。

 それで私の好みともほとんど一緒だから、本当にそこはありがたい。


「…奏くんの匂いはしない、今日は外出してないね」


 別に確認する意味はないけど一応奏くんの匂いはしない、今日はずっと家に居るみたい。

 まぁまだ朝9時だし出かけてる方が不自然なんだけどね。

 私がインターホンを押して奏くんが出てくるのを待っていると、そのドアが開いた。


「奏く…あっ」


 奏くんが出てきてくれたのかと思ったけど、出てきたのは奏くんのお姉さんだった。


「おはようございます、黒園さん」


「おはようございます!」


 …奏くんのお姉さん。

 別に嫌いってわけじゃないけど本当に奏くんと同じ生活環境に身を置いて育ったのか疑わしいくらい落ち着いてるし、それに生徒会長。

 奏くんとの対応の差にちょっと動揺しちゃう。


「はい…奏方なら今ご飯を食べているようで、遅れるということを伝えて欲しいと言伝を頼まれました」


「あ、分かりました…!」


 奏くん今ご飯食べてるんだぁ、かわいい〜!


「…あの、少しよろしいですか?」


「あ、はい…!」


 正直前初めて会った時は綺麗だから奏くんがこの人に浮気しちゃったらどうしよ〜、とかって思ってたけど、普通に仲の良い姉弟って感じで安心。

 …だけど、今後色々あって私と営んだりする時に近くにこんなにスタイル良い人が居たら私に対する反応が微妙だったりしたら嫌だなぁ。

 そうなったら薬でもなんでも使って奏くんには欲情してもらうけど。


「あなたは奏方のことが好いているのですよね?」


「え?はい」


「…でしたら何故、奏方が悪いなどという世迷言で奏方のことを悩ませるのでしょうか」


 あ〜…奏くんお姉さんに話したんだ。

 それだけ私のことで悩んでくれたっていうのは嬉しいけど、ちょっと困っちゃうなぁ。


「私は、奏くんが全部悪いって言ったんじゃなくて、悪い部分もあるよって言っただけで……」


「奏方に悪いところなんてありません、仮に悪く感じられたのであればあなたが奏方の魅力を悪く捉えてしまっているだけです、つまりあなたと奏方の適合性が低いということです、そのような方に奏方を預けるのは不安が募ります」


 わかってるし!

 それも含めて奏くんの魅力だってことくらい私だってわかってるし!

 それはあえて奏くんを責めることで私と復縁してもらうために言っただけだし〜!

 …なんて言えるわけないよね。


「あ、あはは、ごめんなさい、もう奏くんとも話し合って解決したので大丈夫だと思います、お姉さんにはご心配おかけして申し訳ないです」


「…羨ましいです」


「…え?」


「奏方に恋愛対象と見染められることができ、奏方との恋に悩むことができるなんて…ですが、羨んでばかりでも、居られないのかもしれません」


「どういうことですか…?」


「…いえ、なんでもありません、そろそろ奏方を呼んできますね」


 お姉さんは奏くんを呼びに家の中に戻った。

 …あのお姉さんとはいつか、ちゃんと話す機会があるような気がする。

 その後すぐに奏くんが来てくれて、私は奏くんと一緒に居られることの幸せさにさっきのこととかは一時的に全部どうでも良くなっていた。

 奏くんが好きすぎて困っちゃうなぁ〜。

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