優那と露那
イベント終わりに秋ノ瀬とお化け屋敷に行ってから帰ってきて俺は、すでに配信が開始されていた優那ちゃんの配信を途中から視聴している。
配信開始を見逃してしまったのは痛手だが、後で見るので問題なしだ。
「でね〜、あっ!そうだみんなみんなー!聞いてっ!今日はね、ちょっと喧嘩中だった彼からようやく仲直りしようとしてくれる兆候が見えたの!ていうかちょっとした邪魔さえなかったら仲直りできてたから実質仲直りできたみたいなもんなんだー!やった〜!」
「おぉ…!」
俺は自分のことのように嬉しく思う。
それはめでたいことだ。
「だから、これでようやく止まってた時が動き出して、あんなことやこんなこともできちゃうの〜!あぁ、どうしよ、せっかくだし今デートする日程でも決めるメール送ろっかな〜!」
配信中に彼氏にそんなことを送っているとこんな大きく公言できるVtuberは優那ちゃんぐらいだろうな。
優那ちゃんは配信にフリック音を奏ている。
『♪』
「ん…?」
優那ちゃんの配信中に、露那からメッセージが届いたようだ。
「送った〜!返信来るかな〜、すぐ来る時と起きてから来る時があっていつも返信来なかったらそわそわしちゃうんだよね〜」
恋人にメールを送って返信が少し来ないだけでもそわそわする…なんていうものが世にはあるらしいが、俺はそれを一度も経験したことがない。
露那と付き合ってる時も、俺は露那のメッセージを1日見れないことがあったが、俺が送ったメールは本当にずっと張り付いているのかと疑えるほどに早く既読がついて返信が来ていたな。
「…付き合ってた時、か」
…今日、もし秋ノ瀬が来てなかったら俺と露那は復縁してたんだろうか。
そんなことを思いながら俺は露那からのメッセージを開く。
『奏く〜ん!次いつお出かけしたい〜?』
それは奇しくも今優那ちゃんが話している内容と同じだった。
…露那も涙を伝わせるほど俺に対して想いがあるようだったし、今は露那に対してそれほどマイナスな感情は無い。
「出かける…」
してもいいかもしれないな。
改めて露那のことを見ることができる。
『いつでも良い』
今の所忙しくなる理由はないため、俺はいつでも良いと言う。
因みに今まで何度か俺は予定したいたデートを前日に断りを入れたこともあったが、露那は理由さえちゃんと伝えれば特に怒ったりしなかった。
それと同時に優那ちゃんの配信。
「返信きた〜!いつでもだって〜!え、どうしよ!いつが良いかな、明日!?なんなら今すぐ配信切って今からとかでもアリ!?あ、でもそれだとまた重く感じられちゃうのかな…あぁ〜!どうしよ〜!」
優那ちゃんはかなり悩んでいるようだ。
…露那からもまだ珍しく返信がない、優那ちゃんのように何か悩んでいるんだろうか。
「わかった〜!とにかく、明後日以降になると私が無理だから明日にしよっと!」
優那ちゃんは明日にすることに決めたらしく、またも配信からフリック音が聞こえてきた。
そして…
『♪』
「……」
それとほぼ時を同じくして露那からメッセージが飛んできた。
…さっきから少し思っていたが。
「こんなことがあるのか?」
優那ちゃんの言っている内容と俺と露那がやり取りしている内容は寸分違わず同じで、配信だから多少ラグはあるだろうが、それを込みで考えてもほとんどタイミングが同じなのも本当に紙一重のタイミングだ。
俺は何かが引っかかって入るが、露那からのメッセージを開く。
『明日とかどうかな〜?奏くんと話したいこともあるし!』
『わかった』
俺はそれにすぐ返事を入れる。
明日…優那ちゃんも明日と言っていたな。
「…いや」
俺は何かが思いつきそうになったところで、その思考を放棄することにした。
それ以上先は、俺の何かが壊れてしまうかもしれないと思ったからだ。
『やったぁ〜!明日が楽しみすぎて今日寝れないかも〜!』
こうして嬉しそうにしている天使のような優那ちゃんを見ているだけで、頭が柔らかくなって変な考えも頭から消えていくな。
本当に優那ちゃんを見つけられてよかったな。
優那ちゃんの配信を最後まで見終えた俺は、下に降りて飲み物を飲みに行く。
その途中で姉さんが話しかけてきた。
「奏方!本日のイベントはいかがでしたか!」
生徒会主導で行った今日のイベントの感想を聞きたいようだ。
「最高だった!」
俺は胸の内にある感情を込めて言う。
これには本当に感謝しかない。
「まさか優那ちゃんが来るなんてサプライズがあるなんて…」
「はい!奏方が好きな方だと言っていたので、姉少し頑張っちゃいました!」
姉さんは両手をグーにして言う。
俺が姉さんと血縁関係になかったら恋に落ちてしまっていただろうな。
「あぁ、ありがとう」
「奏方のお礼が疲れに染み込みます…これが保養というやつなのですね」
姉さんはよく分からないことを言っている。
「分からないと言った顔をしていますね?姉は奏方のことならなんでもわかるのです」
当たってる…
「私は奏方を養分として生きているのです、言うなれば奏方は私にとって必要不可欠なんです…それを肝に銘じてくださいね」
姉さんは意味深なことを言い残して、お風呂を沸かしに行った。
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