第112話 理解に苦しみますね
「…………何なんだ、あの一年生は?」
「これは完全に想像以上ですね……シリウスたちを退けたのも頷けます。シャルティア姉様が彼一人を最終競技に残したのも当然でしょう」
会場に来ていた生徒会メンバーたちが、エデルの規格外な実力を目の当たりにして唖然としていた。
「しかも全然本気じゃない件。実力未知数」
「ええ、そうですね。かなり手を抜いているように見えました。一体どれだけの力を秘めているのでしょうか……」
「……よし、決めたぞ!」
「? 何をですか?」
「ふっふっふ、それはお楽しみだ!」
「……何かすごく嫌な予感が」
「とりあえず今度、あの少年を生徒会室に呼んでくれないか? 先日の謝罪、
彼らがそんなやり取りをしている間に、最後の競技が終了した。
ざわつく会場の中、ようやく調子を取り戻してきた実況――兼司会進行の教員が、一年生の対抗戦を総括する。
「最終競技、一位になったのは、なんと十八体ものトロルを撃破したF組! この記録は一年生としては歴代最高! 学年の縛りを解いても、歴代五位以内に入る凄まじい結果です! それをたった一人で成し遂げてしまうなんて、我々はとんでもない偉業を目撃してしまいました! そして二位は二体を倒したA組! さあ、これですべての競技が終了し、総合成績が出ました! 三位から発表していきましょう! 第三位は、総合十五ポイントを獲得! A組! 続いて第二位は、惜しくも最後に逆転されてしまいましたが、素晴らしい競技を見せてくれました! 二十五ポイントのC組! そして栄えある第一位はっ……三十ポイントを獲得! 最後の三種目で怒涛の追い上げをみせた、このクラスっ! F組ですっっっ!」
最終競技の衝撃のせいで言葉を失っていた観客たちが、ようやく我に返りだして、歓声を響かせた。
「一年とは思えないハイレベルな戦いだったぞぉぉぉっ!」
「さすが英雄の卵たちだ! 上級生になるともっとすごい戦いを見れるってことだよな!」
「F組おめでとう~~っ!」
優勝したF組の生徒たちもまた、互いにハイタッチを交わしながら喜びあっていた。
「やったぜ、優勝だ!」
「最初はどうなることかと思ったけど、まさか本当に優勝できちゃうなんてっ!」
「さすがエデルだぜ! 俺たちはすでに散々驚かされまくって慣れてきてるが、初見の連中のあのぽかんとした顔!」
「いや、普通に何度でも驚くんだが……ここから見てても動きがまったく追えないとか、どうなってんだよ……」
一方、盛り上がる会場とは裏腹に、ラーナは怒りと落胆でわなわなと身体を震わせていた。
「ま、負けた……っ? あたしのクラスが、シャルティアのC組に……っ?」
「先ほど私の言った通りになりましたね」
「っ!?」
そこへ現れたのはシャルティアだ。
「っ……あ、あんな生徒がいるなんて、どう考えても卑怯よ……っ!」
「卑怯? 何が卑怯なのか、理解に苦しみますね」
「その前の二人だって……っ! どう考えても偏ってるでしょ! そ、そうだわ! あなた、校長先生と親しくしてるでしょうっ? それで、自分のクラスに優秀な生徒が集まるよう、贔屓してもらったに違いないわ!」
「とんだ濡れ衣ですね。言っておきますが、編入生のエデルくんはともかく、ガイザーくんもアリスさんも、入学時から大きく成長した結果、あそこまでの実力に至ったのです(ごく最近、それもごく短期間のことで、しかも私が何かをしたわけではないですが……)」
「っ……」
悔しげに顔を歪めるだけで、何も言い返せなくなったラーナに、シャルティアは普段あまり見せることのない嗜虐的な笑みを浮かべ、言った。
「それでは今週の週末にしましょうか。ええ、もちろん、罰ゲームのことですよ。……絶対に逃げないでくださいね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます