第41話 プロヴァンス商会 VS Fランク冒険者

 10分程度、当たり障りのない会話をプロスとして待っていると、複数の従業員がいくつか商品を持って後ろに待機、その中で何も手にしてない従業員がプロスに耳打ちし、用意ができた事を知らせている。


(直接取引相手と関わっていない従業員が覆面に徹している辺り教育が行き届いているのがわかる。ワンマン経営? に近いが慕われていそうな雰囲気も感じるな)


 プロスが何も言わずこちらを見て待機していると、さきほど案内してくれた女性従業員が紅茶のおかわりを注いで去っていく。機を見てプロスが説明を始めると同時に従業員が商品を持って一人ずつ前に出て商品を広げていく。




「お待たせ致しました。順番に説明致します。こちらがフライパンやまた板、金属串、金属挟みなどの詰め合わせのセットになります。フライパンとまな板をそのまま購入される金額と同じ値段となっておりますので、他の物はご購入の初回サービスとしてつけさせていただいております。使っている素材が全て水や錆や汚れに強く長持ちする素材なので、長期間使用する事ができますし、ある程度の火力までは耐える事ができますので実用性に優れており、当社独自のブランドで人気の商品です。」


(壊れたらまた買いにくればいいけど俺街にあんまいないから助かるな。サービスは特にいらないけど値段同じなら貰っててもいいか。いつまでもラビットの角に刺して料理できないしな。それにしてもこの人おもしろいなー)


「ふむふむ」


(表情の変化はなし・・・か)


「わかりました。」


(購入するかどうかも感想もなし、外したか? 興味はあるのか? 読みにくいなこの御仁は!)


「はい、では次が背負子ですね。冒険の際や遠征の際に起こる問題を幅広くカバーする為に作られたこの背負子は、載せる、引っかける、刺す。色々な用途でご使用いただけて大変リピート率の高い商品となっているモデルを採用し、それに更に改良を加え、強度が戦闘に耐えれるレベルにまで発展している物となっております。柔軟性に優れ、固く、変形しにくいので、重い物にも耐える事が可能です。休憩の際には下の部分のこの取っ手を引いていただければ椅子にもなり、お値段少々張りますが野営でも活躍する当店ブランドの中でも自慢の一品です。」


(長いから何言ってるかほとんど聞いてないんだが、やばい。でもこの人正直に商品の長所と短所を言ってるな。誠意を感じさせられる。ただ説明が長いな。)


「なるほど。いいですね」


(好感触? わかりづらいですね。一歩間違えれば首がなくなりそうな、そんな気配すら感じます。気を引き締めて参りましょう。)


「次は、手斧ですね。こちらは実用性重視で一般的な物をご用意いたしました。冒険者の方が全力で力を入れると壊れてしまう可能性もありますが、通常の木に対して牧割り程度でしたらこちらがおすすめです。戦闘には使えない耐久度になりますのでご注意ください。お値段もお手頃価格となっております。」


(正直にいうとなかなかの強敵だな。この人ほんと普通の定員か? レベル高くね)


「なるほど。」


「次に、テントですが、こちらはアマンダトードという大型の魔物の皮の素材で水を完全に弾くことができる素材をふんだんに使用し外装を作り、骨組みは嵐でも吹き飛ばない程度には頑丈なワイバーンの骨組みを使っております。希少なジェリースライムのスライムゼリーをふんだんに浸み込ませていますので、多少の汚れでしたら再生・復元して一年中綺麗な状態を保つ効果もあります。また同素材の効果で、中は保湿、保温の効果がついており、一年中室内が一定の温度で保たれ過ごしやすい環境になっている、当店でもトップクラスの一品物の商品になります。また同ご要望に対してもこちらのアマンダトードの皮にジェリースライムのゼリーを染み込ませたものをご用意できます。雨風を凌ぐ場合でしたらどちらでも対応可能かと愚行致します。」


(カエルか~スライムとカエル。オクラとメカブみたいだな)


「わかりました。」



「最後にネットですね。こちらは魔の森の奥に生息しているマザースパイダーの子供でその中でも小さい個体、スモールスパイダーが木々に定期的にマーキングに使用する糸を持ち帰り加工した物になります。こちらは比較的安価で取引されております。この糸で編んだ物で、収縮性に秀でていて、切れにくく強靭な糸の為、耐久性にも優れておりますが、火には弱く燃えやすいので焚き木周りに使用するのは注意が必要かと思います。こちらも人気の商品となります。」



「わかりました。」



「以上となります」




・・・・・・






(ごくり。)








 思考加速してじっくり5秒程度思考して、口を開く。


「それでは値段をお聞かせ願いますでしょうか? 他の商品は見るつもりがないので、こちらに用意されてる物で結構です。」


(飽きてきた・・・やっぱり誰もいない個室は落ち着くけど畏まられたら買う気失せるな。もっとフレンドリーに来てくれないかな。ようにいちゃん!へいぶらざー!!へいへいへいへい!)


「畏まりました。まず調理用具の詰め合わせですね。こちらが金貨が1枚と銀貨3枚になります。次に背負子、こちらは金貨が1枚と銀貨が5枚ですね。次に手斧、こちらは銅貨が9枚、次にテントこちらが金貨15枚ですね。雨が凌げるシートこちらが金貨1枚銀貨3枚になります。スモールスパイダーのネットこちらは銀貨1枚です。全てご購入されますと金貨19枚と銀貨2枚に銅貨9枚になります。」


(初見じゃ勉強してくれないか。どっちみち金足りないけど。)


(さてどうでしょう・・・この御仁は非常に読みづらく、終始何考えてるのかさっぱりわかりませんでしたね。テント以外が売れたら御の字ってとこですかね)


「なるほど、ではテント以外購入させてただきますのね。こちらで」


(テントがすごくいいのはわかったけど高いな。俺まだFランク冒険者だしな。)


「畏まりました。ありがとうございます。そのように手続きさせていただきます。金貨4枚と銀貨2枚、銅貨9枚。ちょうどお預かり致します。どちらにお泊りかお伺いできましたら配送致しますが、いかがされますか?」


(教えてあげないよ~ん、(天邪鬼))


「大丈夫ですよ。持って帰りますので。」


(さっき食ったけどお腹空いてきたな)


「畏まりました。それでしたらお帰りの際は入り口までお運びいたしますね。それと情報との事でしたが、少々休憩を挟みましょう。有名店のお菓子でして。紅茶と相性が良くて人気の物です。」


「そうですね、いただきます。」


(すげー小腹が空いてきた時に何も言わずお菓子と紅茶のお替りでてきた・・)


(凄腕だ。たぶん予想通りに買わされたな。前半は完全に俺の負けだろう。)


(勝負はこっからだけどな・・・)


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