第2話 勇者が現れた?

前回、平凡な毎日を送るだけだった私の前に現れた魔王ちゃん。


姿は幼いけど、とてもかわいく、不思議な力を持った魔王ちゃんの配下にしてもらえた私。


これは、その続きからになります。




「魔王ちゃんの力ってどうしたら戻るのかな?」


「うーむ。それが、わからぬのじゃ…。先ほどは、ゆうりにご飯を食べさせてもらったら僅かに戻ったのじゃが。」


「んー。ご飯食べたら戻っていくのかなぁ。」


「そうかもしれないのじゃ!」


「それじゃあ、これから魔王ちゃんのために毎日頑張って作っちゃうね!」


「それはまことか!ゆうりのご飯は美味じゃから嬉しいのじゃ!」


「私も喜んでもらえたら、作りがいがあるよ!」


「ゆうり、ありがとなのじゃ!」


「どういたしまして!」


毎日自分の分だけだから、わからなかったけど。


誰かに喜んで食べてもらえるのは嬉しいんだなぁって、魔王ちゃんのおかげで実感できた。


明日も、魔王ちゃんの笑顔が見れたらいいなぁ。


「あ、そうだ。私これからお風呂に入ってくるから、魔王ちゃんはゆっくりしてて。」


「おふろ?」


「え?魔王ちゃんお風呂って知らない?」


「昔、人間達の文化だとは聞いたことがあるのじゃ。ただ魔族である我には関係ないことじゃったから詳しくは知らないのじゃ。」


「そっかぁ。それじゃあ、私と一緒にお風呂に入ってみようか!」


「うむ?しかし、我は…」


「いいからいいから!何事も体験してみるものだよ!」


「うーむ。ゆうりがそう言うのなら行ってみるのじゃ!」


二人で脱衣場で着くと、軽く説明をして、着ていた物を脱ぐ。


魔王ちゃんのフード付きの布を脱がせてあげる。


フードを被っていたからわかりにくかったけど、髪は銀色で長め。身体はやっぱり子供と同じだった。


「な、なんじゃ?なぜ我をそんなに見ているのじゃ?」


「魔王ちゃんの姿。人間と変わらないなぁって思って。」


「うむ。そうじゃのぉ。だが…」


今度は魔王ちゃんが私の身体を見ている。


「魔王ちゃんどうしたの?」


「我と比べて、ゆうりはいろいろと大きいのじゃ…。元の姿なら多少構造は違えど大きさは互角なんじゃが…。負けた気分なのじゃ。」


大人の私と違って、まだ子供の姿の魔王ちゃんだとそうだよね。


でも、魔王ちゃんはかわいいからこのままでも良いと思うけど…。


こんなこと言ったら怒られそうなのでやめておく。


「今の魔王ちゃんも成長すればきっと大きくなるよ!」


「うむ。その前に元の姿に戻りたいものじゃが…。」


「頑張って戻り方探そうね!それじゃあ、お風呂入ろ!」


「うむ!」


私は説明しながら、魔王ちゃんの身体と髪を洗ってあげる。


自分の分も済ませると二人で湯船に浸かる。


「魔王ちゃん、初めてのお風呂はどうだった?」


「うむ!驚いたのじゃ!ゆうりも魔法が使えたのじゃな!」


「魔法?」


「うむ!水魔法や泡魔法。それに、この中に入ると身体が癒されるのじゃ!お風呂とは魔法を組み合わせた癒しの魔法なのじゃな!我は気に入ったぞ!」


「うーん。魔法じゃないんだけど…。」


そこまで説明するのは難しいし後々。


「魔王ちゃんが気に入ってくれてよかった!」



それから、お風呂から上がると大変なことに気づく。


魔王ちゃんの服…どうしよう。


子供用の服はないし。


「ん?ゆうりどうしたのじゃ?」


「魔王ちゃん…」


「うむ?」


「明日、魔王ちゃん用の服を買いに行こっか!」


幸い、明日は仕事が休みなのである。


「服?我はこの黒衣で…」


「だめだよ!買いに行くの!」


「じゃが…」


「行くの!せっかく魔王ちゃんかわいいんだから!」


…あっ。


言ってから気づく。


魔王ちゃんにかわいいと言ってしまったことに。


また、怒らせちゃったかと、恐る恐る確認すると…。


「うーむ。ゆうりが、そこまで言うならそうするのじゃ!」


あ、あれ?


魔王ちゃん怒ってない…?


「ゆうり?どうしたのじゃ?」


「魔王ちゃん…かわいいって言われたのに怒らないの…?」


「うむ。怒らないのじゃ。最初は敵である人間に言われたから怒ったが…。配下である、ゆうりなら特別いいのじゃ!」


「そ、そうなの?」


「うむ。それに、ゆうりに言われるとなんだか嬉しいのじゃ!」


「ま、魔王ちゃん!」


私は両手で顔を抑えると、感動で泣きそうになる。


魔王ちゃん…かわいすぎるよ…。


「ゆ、ゆうり…?どうしたのじゃ!?どこか痛いのか!?」


「う、ううん!大丈夫!元気だよ!」


「な、ならいいのじゃが…。」


「さて、湯冷めしない内に戻ろっか!」



部屋へと戻ると、魔王ちゃんの髪を乾かしてあげると、魔王ちゃんの銀髪はキラキラと輝いている。


「魔王ちゃんの髪って、元の姿でも同じだったの?」


「そうなのじゃ!元の姿」


「魔王ちゃんの髪すごくキレイだよねぇ。この色すごく好きだなぁ。」


「母様譲りで、我もお気に入りなのじゃ!褒めてもらえてすごく嬉しいのじゃ!エヘヘ」


満面の笑みで私に話してくれる。


ずっと眺めていたくなるくらい、私は惹かれていた。


それからなんやかんやで、今日は休もうとした時だった。


事件が起きる。


私が、最近寝るときに抱き枕の代わりにしていた人形をベッドの上に置いた時だった。


「ゆ、ゆうり…!そ、そやつは…」


「え?」


なぜか、魔王ちゃんが震えている。


「き、貴様もこっちの世界に来ておったのかぁぁぁぁ!勇者ぁぁぁぁ!」


魔王ちゃんがすごい勢いで人形に掴みかかる。


ゲームの特典で付いてきた、勇者人形に。


「ま、魔王ちゃん!?」


「勇者ぁぁぁぁ!よくも我にぃぃぃ!」


今にも千切れそうな勇者人形。


「ま、待って…」


私の制止も間に合わず…。


「これでもくらうのじゃぁぁぁ!」


魔王ちゃんが魔法を唱えると勇者人形が…。


私の抱き枕代わりの人形が…。


千切れるどころか弾けた…。


「フハハ!我は勇者に勝ったのじゃ!ゆうり!我の勇姿を見ておったか!」


抱き心地が絶妙で、お気に入りだったのに…。


私は両手を付いて落ち込んでいた。


そんな私の様子に気づく魔王ちゃん。


「ゆ、ゆうり…?どうしたのじゃ…?」


側に寄ると、私を心配してくれる。


「魔王ちゃん…。あれ、勇者だけど勇者じゃないよ…。勇者に似せた人形だよ…。」


「に、人形…?どうりでなんの抵抗もしないと思ったのじゃ…。」


「私のお気に入りだったのに…。うぅ…。あれを抱かないと寝れないのに…。」


「ゆ、ゆうり…。すまないのじゃ…。はやとちりしたのじゃ…。」


オロオロとする魔王ちゃん。


「そ、そうじゃ!ゆうり!」


「どうしたの…。」


「勇者人形なんかより、我を抱いて寝れば良いのじゃ!」


なぬ?


今なんて…


「わ、我の方が抱き心地良いと思うぞ!幸い、今はこの姿じゃ!」


「魔王ちゃんを…抱いて寝て…いいの…?」


「う、うむ!良いのじゃ!」


「魔王ちゃん抱いて寝るぅ!」


「ゆ、ゆうり!少し苦しいのじゃ!あと、顔を擦り付けるのはやめるのじゃ!」


「えー?やだ~!」


こうして、私は勇者人形を犠牲に、魔王ちゃんという抱き枕代わりを手にいれたのだった。


ちなみに、魔王ちゃんはぷにぷにしていて、大変素晴らしい抱き心地でした。


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