3.記憶喪失の女の子の部屋ですね
壁紙はピンクで、星やハートが描かれており可愛い雰囲気です。カーペットさえも可愛らしいです。
クッションやぬいぐるみが大量にあり、その他には色々な装飾が施された天蓋付きベットや大きな机がありました。
そして全員、その部屋に入りました。甘いお菓子に入っているバターのような香ばしい匂いがしてきますが、嫌な匂いではありません。
「すぅ…とてつもないメルヘンを感じます」
「子供部屋なのだ。もしかしてディスティニーランドのラブリーの部屋なのだ?!」
「違うぞ、それとお前は隣を絶対に見るな。目が腐るぞ」
蝦蛄エビ菜は深呼吸して、この空気を堪能しています。そして近くにあった可愛らしい刺繍が施されたクッションに頬ずりしています。
そして針口裕精は薫田あるじの目を手で抑えています。クッションを頬ずりでは足りないのか、ついには吸っている不審者を見させないためです。
「そういう事なら見ないのだ」
「クッションごちそうさまです」
彼女がクッション吸いをやめました。口をぺろぺろとしていますが、彼は顔に置いている手を下ろしました。
そして彼は砕かれた壁の残骸とこの部屋を見て考えました。何故ここが隠されていたのかだとか、さっきの部屋よりも内装が豪華なのは何故なのか等です。
「子供部屋が何故隠し扉の先に…いや、それよりもだな、この部屋にもし人がいたら今のタックルで死んでいたかもしれない」
独り言を言っていると前からヴェニアミンが来ました。彼の肩に手を置いて子供に言い聞かすように言いました。
目は殺気を孕んでいるのに、全体的な雰囲気は優しそうにみえます。
「居たとしても殺すから平気」
「は?」
針口裕精は一瞬キレましたが、すぐに冷静になりました。彼以外でまともな人間はアホでチビな女子高校生だけです。
何とも酷いラインナップでしょう。ラインナップといっても1人しか居ませんが。
「あれ、ベットの中に誰かいませんか」
「敵だったら奇襲をしかけて足を折るよ」
「平和的解決方法を知らないのか?」
蝦蛄エビ菜はベットの不自然な膨らみに気づきます。そして、その隣で拳の骨をポキポキと鳴らしている彼は
「お主は誰なのだー?」
「んん…」
しかし先に薫田あるじが天蓋付きベットのカーテンを開けて、ベットの真ん中に座りました。彼女は中に人がいる事が分かりましたがそこから一向に退こうとはしません。
そんな様子を見て、もし敵だったらと思うと、大人三人は危険だと判断しました。近くにゆっくりと歩いていきます。
「おい、あるじたん危険だ」
「あるじちゃま、それ足立区に住んでいるおじさんかもしれませんよ」
「そいつは敵兵だ、あるじちゃん」
各々が適当なことを言いますが、この可愛らしいベットで寝ている人が敵対心を持っているとは思えません。
「おじさんでも敵兵でもないのだ、小さい女の子なのだ」
「んん…あなた、だれ?」
8歳ぐらいの外国人の女の子です。少し濁った金髪で、緑色の目をしています。起きたばかりなのか眠たそうな顔をして彼女を見ています。
「この様子をリーチューブにアップロードすればロリコンの間でバズるんじゃないですか」
「さっきから何を言っているんだ。足立区といい、ロリコンといい。お前はちょっとは建前というものを入れたらどうだ」
彼女からしたらこれは冗談にしか過ぎませんが、笑えません。
しかしまだ懲りていないのか、それとも彼の事はどうでもいいのでしょう。また悪趣味なジョークを言います。
「こういった子供をダシにした動画は八割以上はロリコンが見ているんですよ」
「純粋な子供が見ているんだ、変な偏見はやめろ。話すとろくなことを言わないな」
そう2人が話している時に薫田あるじはベットで寝ていた少女を無理やり起こして、上半身だけは布団から出ています。
「あちきは薫田あるじなのだ。お主は誰なのだ?ここはどこなのだ?」
「わからないわ、わたしはだれなの」
少女は屈託のない綺麗な緑の目で、彼女やこの部屋を見渡しています。そして少女の発言で薫田あるじはある考えにたどり着きます。
「あちゃー記憶喪失なのだ、ここに居るから何か知っていると思っていたのだ」
「この状況で記憶喪失なんて不自然だ、本当に敵かもしれない。この状況は何があってもおかしくないからな」
彼女はがっかりしました。ここから早く抜け出してディスティニーランドへと帰りたいからです。
また、針口裕精もこの少女に対して不信感を抱いています。自分を陥れようとしているのかもしれないと考えているからです。
彼は少女の右隣に行き、ずっと睨んでいます。
「本当に何も分からなそうですけど。この子も私たちと一緒に集められたのでは?」
「殺意はなさそうだね」
ベットから少し遠い位置に蝦蛄エビ菜とヴェニアミンが居ます。彼らはベットにいる少女を観察していたようです。
そして近づいても害はないと判断し、ベット付近に行って彼は左隣、そして彼女はベットへとダイブしました。
「分かったのだ!この子はニアミン先生の親戚なのだ、同じ金髪が証拠なのだ」
「この子はどう見てもイギリス系、全く違うよ。ニアミンの血縁関係馬鹿にしているの?」
「落ち着け、いいから落ち着け」
薫田あるじがふふんと自信満々に言いました。色素の薄い髪が揺れて、首だけを動かして彼女の方向を見ました。頭に血が上っているようです。
今にも一髪即発の空気ですが、針口裕精が彼を落ち着かせました。
「この子というのもなんですし、あるじちゃまが命名してください」
「よし5人目だからお主は五郎なのだ。五郎、返事をするのだ!」
彼女は簡単に呼べる名前にしました。パッと思いついたのがそれしかなかったからですが、ある一人を除いて全員はその名前に納得しました。
「はい」
「そんな名前却下だ!大体5人目だからってそんな適当な名前をつけるな、もっと似合う名前があるだろ。例えばアリスとかメアリーが良いはずだ」
五郎が弱々しく返事をした後、被るように針口裕精が抗議しました。日本人の名前より西洋人の名前の方が彼女に合っていると判断したからです。
その凄まじい早口に薫田あるじは少したじろいてしまいました。
「ぶー文句があるなら五郎が直接言うのはずなのだ。な、五郎」
「五郎…わたしのなまえ、ありがとう」
五郎は微笑み、今まで無表情で不安そうな顔をしていた彼女がとても可愛らしく見えました。
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